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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1025「しずく120~隠れ里」

2021-02-04 18:05:53 | ブログ連載~しずく

「私、月島(つきしま)しずく。二人のことは心配(しんぱい)ないわ。眠(ねむ)ってるだけだから」
「そう…。私は、水木涼(みずきりょう)よ。あなたなの? 私の両親(りょうしん)を助(たす)けてくれたの」
「ええ。あなたに会えて嬉(うれ)しいわ。私と友だちになってくれる?」
「いいわよ。でも、あなたとは、どこかで会ったことあるような…」
 そこへ、柊(ひいらぎ)あずみがやって来た。あずみは涼を見るなり彼女をぎゅっと抱(だ)きしめて、
「無事(ぶじ)で良かったわ。心配したのよ。大変(たいへん)だったわね。もう大丈夫(だいじょうぶ)だから…」
 涼は思わず、「ちょっと、止(や)めてよ。先生…、苦(くる)しいんだけど…」
「先生…」しずくが声をかけた。「受(う)け入れの方は?」
 あずみは、涼を解放(かいほう)すると、「ええ、準備(じゅんび)はできてるわ。いつでも引き受けるって」
 涼はわけが分からず、「え、何のこと? 準備って…」
 あずみはそれに答(こた)えて、「あなたの両親に、隠(かく)れ里(ざと)へ移(うつ)ってもらうのよ。あいつらに狙(ねら)われないようにね。隠れ里は能力者(のうりょくしゃ)や、その家族(かぞく)を守(まも)るためにあるのよ」
「その前に…」しずくが言った。「ご両親から、襲撃(しゅうげき)の時の記憶(きおく)を消(け)してもいいかしら?」
「そ、そんなこと…できるの?」涼はしばらく考えて、「じゃあ、私の記憶も消してよ。私、本当の子供(こども)じゃないし…。私のせいでこんなことになっちゃったんだから…」
「ほんとに、それでいいの?」しずくは涼の決意(けつい)を感じて、「分かったわ。そうするね」
<つぶやき>もう会えなくなるわけじゃないよね。きっとまた会えるはずだと思います。
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1020「しずく119~再会」

2021-01-25 17:52:34 | ブログ連載~しずく

 長い通路(つうろ)を歩いて行く初音(はつね)と涼(りょう)。通路には照明器具(しょうめいきぐ)がないのに、天井(てんじょう)からまるで木漏(こも)れ日のような光が射(さ)し込んでいる。しばらく行くと、突然(とつぜん)、扉(とびら)が現れた。
 音も無(な)く扉が開くと、ハルとアキの姉妹(しまい)が飛(と)び出してきた。アキは初音の顔に傷(きず)があるのを見つけると、初音の腕(うで)を抱(だ)きかかえて言った。
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。あたしに任(まか)せて。これくらい何でもないわ。きれいに治(なお)してあげるね」
 アキは有無(うむ)も言わせず、初音を扉の中へ連れて行ってしまった。ハルは、
「ちょっと、待ちなさいってば…。もう、張(は)り切りすぎよ。あっ、お姉(ねえ)さんは大丈夫?」
 涼は、ちょっとまごつきながら、「ああ、大丈夫よ。これくらい、平気(へいき)だから…」
「じゃあ、行きましょ。食事(しょくじ)の準備(じゅんび)もできてるわ。それに…」
「私は…。いるんでしょ? 両親(りょうしん)に、会いたいんだけど…」
「分かったわ。じゃあ、ついて来て」
 ハルの案内(あんない)で涼は別の扉へ入って行った。その部屋(へや)はほのかな灯(あか)りに包(つつ)まれていた。そこに両親が寝(ね)かされていた。涼は二人に駆(か)け寄って、声をかけた。だが、二人とも眠(ねむ)っているのか、何の反応(はんのう)もしなかった。涼はハルに、
「ねぇ、大丈夫よね。死(し)んだりしないよね。……私のせいだ。私が…いたから…」
「それは違(ちが)うわよ」暗(くら)がりの中から声がした。暗がりから現れたのはしずくだった。
 涼は、彼女を見て言った。「あなた…、誰(だれ)なの?」
<つぶやき>涼はしずくの記憶(きおく)を消されたまま…。確(たし)か、そうだったと記憶してますが…。
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1015「しずく118~秘密基地」

2021-01-15 17:57:34 | ブログ連載~しずく

 川相初音(かわいはつね)と水木涼(みずきりょう)は公園(こうえん)を出ると、住宅街(じゅうたくがい)を抜(ぬ)けて駅前(えきまえ)の方へ向かった。まだ早い時間なので、外を歩いている人は少なかった。初音は歩きながら、辺(あた)りをキョロキョロと見回(みまわ)していた。涼は、そんな彼女を見て言った。
「ねぇ、さっきから何してるのよ。まさか、道に迷(まよ)ったんじゃ――」
「違(ちが)うわよ。目印(めじるし)を探(さが)してるの。きっとどこかに…」
 初音が急(きゅう)に立ち止まった。ビルとビルの間(あいだ)の細(ほそ)い隙間(すきま)、その中に――。初音は、人の目がないことを確認(かくにん)すると、涼の腕(うで)をつかんでその隙間へ飛(と)び込んだ。涼はビルの壁(かべ)にぶつかりそうになるのを必死(ひっし)に回避(かいひ)した。初音が立ち止まると、涼は、
「もう、危(あぶ)ないでしょ。壁にぶつかるところだったじゃない」
 初音は下に置(お)かれていたピンクウサギの縫(ぬ)いぐるみを拾(ひろ)い上げると呟(つぶや)いた。
「もう、センスなさすぎ…。そう思わない?」
 涼はわけが分からないまま、相(あい)づちを打った。初音は、また涼の腕をつかんでビルの壁に向かって突(つ)き進(すす)んだ。涼は、思わず目を閉じた。
 涼が目を開けると、そこは真っ白な壁の通路(つうろ)になっていた。それがどこまでも続いていて、突き当(あ)たりがまったく見えない。涼が呆然(ぼうぜん)としていると、初音が言った。
「ようこそ。ここがあたしたちの秘密(ひみつ)の場所(ばしょ)よ。さぁ、行きましょ」
<つぶやき>いつの間にこんなものを…。きっと、いろんな人がサポートしているのかも?
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1010「しずく117~夜明け」

2021-01-05 17:52:08 | ブログ連載~しずく

 夜が開けようとしていた。川相初音(かわいはつね)と水木涼(みずきりょう)は公園(こうえん)のベンチに座(すわ)っていた。疲(つか)れからか、二人は黙(だま)ったままぼーっと日が昇(のぼ)るのを見つめていた。
 初音がぽつりと言った。「ねぇ、大丈夫(だいじょうぶ)?」
「あぁ、ぜんぜん、平気(へいき)よ。そっちは? 何か、知り合いなの? あの――」
「琴音(ことね)のこと? ちょっとね、昔(むかし)からの因縁(いんねん)っていうか……」
「別にいいよ。話したくなかったら…。あっ、顔…。怪我(けが)してるじゃない」
 初音は今ごろ気づいたのか、頬(ほお)に手をやり、「ほんとだ。でも、これくらい…」
「ダメよ。手当(てあ)てしないと、傷跡(きずあと)が残(のこ)ったらどうするのよ」
「ねぇ、その竹刀(しない)。どこから持ってきたの?」
「ああ、これ? これは、落(お)ちてたのよ。あそこに…。これさえあれば、私だって…」
「助(たす)かったわ。ほんとに助かった。ありがとね」
「ふん、なに言ってんのよ。そんなこと…。それより、お腹(なか)すかない? 何か食べないと」
「もう、やめてよ。こっちまでお腹(なか)すいてきたじゃない」
 二人は見つめ合い、どちらからともなく笑(わら)い出した。初音は立ち上がって言った。
「さあ、行きましょ。あなたのご両親(りょうしん)が待ってるわ」
「あっ! 忘(わす)れてた。ねぇ、ほんとに無事(ぶじ)なんでしょうね? 早く行こ、ね」
<つぶやき>公園に竹刀が落ちてるわけないでしょ。きっとこれは、彼女の仕業(しわざ)かもね。
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1005「しずく116~琴音」

2020-12-26 18:00:57 | ブログ連載~しずく

 川相初音(かわいはつね)は身構(みがま)えて言った。「あの人たちは、あたしたちを利用(りよう)しているだけよ。あなただって分かってるはずよ。もう、やめよ。琴音(ことね)…」
「うるさい。わたしは、あなたとは違(ちが)うわ」
 女は、手にした武器(ぶき)で初音に攻撃(こうげき)を仕掛(しか)けた。初音は何とかかわしていたが、刃(やいば)が初音の頬(ほお)を斬(き)りつけた。初音の頬からひとすじ血(ち)がにじみ出てきた。女は、
「忘(わす)れたの? あなた、わたしに勝(か)てたことなかったじゃない。死(し)ぬ覚悟(かくご)はできてる?」
 その時、突風(とっぷう)が砂塵(さじん)となって女を包(つつ)み込んだ。水木涼(みずきりょう)が能力(ちから)を使ったのだ。次(つぎ)の瞬間(しゅんかん)、涼の前に女が現れて、涼を突(つ)き飛ばした。涼は立ち木に激突(げきとつ)し動けなくなった。
「邪魔(じゃま)しないでくれる。まだあなたの出番(でばん)じゃないから」
 女の後ろに初音が現れた。そして女を組(く)み止めて涼から引き離(はな)す。女はそれを振(ふ)り払い、初音を攻(せ)め立てた。涼は何とか身体(からだ)を動かして…。何かが手に触(ふ)れた。見ると、それは竹刀(しない)だ。涼はそれを手にすると駆(か)け出していた。二人の戦(たたか)いに涼が加(くわ)わった。
 女は不利(ふり)と考えたのか手を止めると初音に言った。
「まあ、いいわ。あなたの仲間(なかま)のところに連(つ)れて行ってもらおうと思ったけど、諦(あきら)めるわ。でも、次はないわよ。裏切(うらぎ)り者として、わたしがとどめを刺(さ)してあげる」
 女は、忽然(こつぜん)と姿(すがた)を消(け)した。初音は、その場にへたり込んでしまった。
<つぶやき>初音と琴音の関係は? もういろんな人が出てくると、分かんなくなりそう。
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