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みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1075「しずく130~下級生」

2021-06-02 17:42:41 | ブログ連載~しずく

 いつもの朝。烏杜高校(からすもりこうこう)の校門(こうもん)を通って、生徒(せいと)たちが登校(とうこう)してくる。その中に水木涼(みずきりょう)と川相初音(かわいはつね)の姿(すがた)もあった。教室(きょうしつ)では生徒たちが楽しげに雑談(ざつだん)したりしている。その様子(ようす)を、廊下(ろうか)から覗(のぞ)いている女の子がいた。そこへやって来た初音が声をかけた。
「何してるの?」初音は女の子を見て、「あなた下級生(かきゅうせい)ね。誰(だれ)かに会いに来たの?」
 女の子はもじもじしていたが、初音の後にいた涼が気づいて、
「お前、日野(ひの)じゃないか。何か用(よう)でもあるのか? 部活(ぶかつ)のことだったら…」
 女の子は右手(みぎて)の親指(おやゆび)と人差(ひとさ)し指だけを伸(の)ばして胸(むね)に当(あ)てると、涼の顔を見つめた。これは彼女の癖(くせ)なのか、人と話しをするときによくする仕種(しぐさ)だ。女の子は顔を赤くして、
「あの…。もういいです。失礼(しつれい)しました」
 女の子が逃(に)げるように行ってしまうと、初音は涼をからかうように言った。
「何だ。あなたの…。珍(めずら)しいこともあるものね。あなたが後輩(こうはい)に慕(した)われてるなんて」
「そんなんじゃないよ。部活でもしゃべったことないし。あいつ、何しに来たんだ?」
「あなたのこと、恐(こわ)すぎて話せなかったのよ。きっとそうに違(ちが)いないわ」
 ――女の子の名前(なまえ)は日野あまり。剣道部(けんどうぶ)に入っているが、下手(へた)すぎて雑用(ざつよう)ばかり押(お)しつけられていた。あまりは廊下を歩きながら呟(つぶや)いた。
「今日は休みなんだ。残念(ざんねん)だわぁ。あの人のこと、見てみたかったのに…」
<つぶやき>謎(なぞ)の下級生の登場(とうじょう)です。彼女には、秘(ひ)めたものが…。あの人って誰のこと?
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1070「しずく129~夢中」

2021-05-23 17:37:32 | ブログ連載~しずく

 神崎(かんざき)つくねは、月島(つきしま)しずくと対決(たいけつ)した日から夢(ゆめ)を見るようになった。いつも同じ夢。見知らぬ女性がつくねに話しかけている。でも、声は聞こえないので、何を言っているのか分からない。そして、女性はつくねをぎゅっと抱(だ)きしめた。――そこで目が覚(さ)める。
 つくねは、初(はじ)めのうちは気にもしなかったのだが、だんだんその女性が誰(だれ)なのか知りたくなってしまった。自分と何か関(かか)わりのある人なのか…。それとも――。
 つくねは家にあるアルバムを探(さが)してみた。でも、家中探しても、写真(しゃしん)一枚見つからない。つくねは父親に訊(き)いてみた。すると父親は一枚の写真をつくねに見せた。それは、つくねがまだ小さい頃(ころ)の写真。つくねは父親の膝(ひざ)の上にいて、その横(よこ)に女性が座(すわ)っていた。
「これが、お母さん……?」つくねは思わず口(くち)にした。
「そうだ。お前が小さい時に亡(な)くなったから、覚えてないだろうが…」
 つくねはがっかりした。夢に出てきた女性が母親だと思っていたからだ。写真の女性はまったく違(ちが)う人だった。つくねは、母親の顔をまじまじと見つめていた。
 その日の夜。つくねはまた夢を見た。今度の夢は、誰だか分からないが、女の子と夜の街を駆(か)けている。何かに追(お)われて逃(に)げているのか…。つくねは女の子の顔を見る。最初(さいしょ)はぼやけていたが、だんだんはっきりしてきて…。その女の子は、しずくの顔になった。
 つくねは、飛(と)び起きた。「何なの…。今のは…」しずくは汗(あせ)をぬぐいながら呟(つぶや)いた。
<つぶやき>記憶(きおく)が戻(もど)り始めているのでしょうか? 夢に出てきた女性は、つくねの…。
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1065「しずく128~腐れ縁」

2021-05-13 17:58:18 | ブログ連載~しずく

 川相初音(かわいはつね)がアパートへ戻(もど)って来たのは深夜(しんや)になってからだった。部屋(へや)の前まで来ると、扉(とびら)の前に水木涼(みずきりょう)が座(すわ)り込(こ)んでいた。どうやら、眠(ねむ)っているようだ。
 初音は涼を揺(ゆ)り起こして、「何してんの? こんなとこで寝(ね)ないでよ」
 涼は寝ぼけているのか、「もう…寝かせてよ。まだ早いだろ……」
「あきれた…」初音は涼の頭をひっぱたいて、「起きろ!」
 これには、さすがの涼も目が覚(さ)めたようだ。目の前にいた初音に抱(だ)きついて、
「初音…。どこに行ってたんだよ。もう、心配(しんぱい)してたんだからなぁ」
 初音は、涼の腕(うで)を振(ふ)りほどくと、「緊張感(きんちょうかん)なさすぎよ。もし襲(おそ)われたらどうするの?」
「ごめん…。でも、急(きゅう)にいなくなるなよ。一人であいつらのとこ行ったのかと…」
「あたしは、あなたみたいに無鉄砲(むてっぽう)じゃないわ。ちょっと、塾(じゅく)に行ってたのよ」
「こんな時間まで? あっ、まさか…。誰(だれ)といたんだよ。優等生(ゆうとうせい)がそんなことして…」
「なに考(かんが)えてるの。一人で自習(じしゅう)してただけよ。あなたも、ちゃんと勉強(べんきょう)しないと留年(りゅうねん)よ」
「そ、そこまでは……。なぁ、もし、そうなりそうなときは…」
「もう、早く寝なよ。明日も学校(がっこう)あるんだから…」
 初音は、背(せ)を向(む)けた涼に言った。「あたしたち、友だちだよね。何があっても…」
 涼は振(ふ)り返ると、「あんたとは、腐(くさ)れ縁(えん)じゃない。何があっても、私が守(まも)ってやるよ」
<つぶやき>いろんなことがあったけど、この二人の友情(ゆうじょう)は変わらない。何があっても…。
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1060「しずく127~裏切り」

2021-05-03 17:42:42 | ブログ連載~しずく

「ねぇ、パパ」神崎(かんざき)つくねは部屋(へや)に入ってきた父親(ちちおや)に向かって言った。「あたし、もう学校(がっこう)へは行きたくないわ。いいでしょ? 行かなくても…」
「どうしてそんなこと言うんだい?」父親は優(やさ)しく訊(き)いた。
「だって、あの娘(こ)、大(たい)したことないわ。パパが思ってるような能力(ちから)はないわよ。あたし、ちょっと試(ため)してみたの。そしたら、あたしの攻撃(こうげき)に手も足も出なかったわ」
「勝手(かって)なことをしたらダメじゃないか。どうして、パパの言うことがきけないんだ!」
 父親の剣幕(けんまく)につくねは驚(おどろ)いて、「ごめんなさい。そんなに怒(おこ)らないで…」
 父親は息(いき)を整(ととの)えて、「いや、怒鳴(どな)ったりして悪(わる)かった。でもな、しずくは、パパにとってとても大切(たいせつ)な研究対象(けんきゅうたいしょう)なんだ。だから、パパのために仲良(なかよ)くしてもらわないと…」
「あたし、あの娘(こ)、好きになれないわ。もう、近くにいたくないの」
「何を言うんだ。しずくをここに連(つ)れて来るのがお前の役目(やくめ)だ。忘(わす)れたのか?」
 突然(とつぜん)、つくねが姿(すがた)を消(け)した。と同時(どうじ)に、川相初音(かわいはつね)が部屋に飛(と)びこんで来た。それを追(お)って、つくねが迫(せま)っていく。二人は、相対(あいたい)した。初音は、つくねを制(せい)して、
「ちょっと待ってよ。あたしは、あなたとやり合うつもりはないわ」
 神崎が初音を見て言った。「君(きみ)は、黒岩(くろいわ)のところにいた…。どうしてここへ?」
「こっちの方がいいかなぁって…。あたしが、連れて来てあげるよ。しずくを…」
「私に、それを信(しん)じろと言うのか…。君は、黒岩を裏切(うらぎ)ったんじゃないのかね?」
<つぶやき>どうしてこんなことをするのか…。神崎は、初音を受け入れるのでしょうか?
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1055「しずく126~手当て」

2021-04-23 17:52:49 | ブログ連載~しずく

 秘密(ひみつ)の場所(ばしょ)の一室(いっしつ)で月島(つきしま)しずくの悲鳴(ひめい)が聞こえた。そして、水木涼(みずきりょう)の声が、
「そんなに騒(さわ)ぐことじゃないだろ。手当(てあ)てしてるんだから、少しは我慢(がまん)しろよ」
 しずくは小さな子供(こども)のように、「だって…。もっと優(やさ)しくやってよ。痛(いた)いってばっ…!」
 そこへ、ハルとアキが帰ってきた。しずくは二人の後ろに逃(に)げ込んで、
「ねぇ、助(たす)けて。涼が、ひどいんだよ。怪我(けが)してる私に…」
「しずく、いい加減(かげん)にしろよ。その口に絆創膏(ばんそうこう)はってやるからなぁ」
 二人の様子(ようす)を見てハルが言った。「騒ぐのは止めてください。怪我は私たちが治(なお)しますから。それより、あずみ先生、怒(おこ)ってましたよ。何してるのよって」
「それは…、しずくがやったことで…、私は関係(かんけい)ないからな。なぁ、初音…。あれ、どこ行っちゃったのよ。さっきまでここにいたのに…」
 柊(ひいらぎ)あずみがため息(いき)をつきながら入って来て、「まったく、どうなってるのよ。勝手(かって)なことばかりして…。しずく、怪我は大丈夫(だいじょうぶ)なの? 無茶(むちゃ)なことはしないでよ」
 しずくは、しおらしく答(こた)えた。「はい。全然(ぜんぜん)、大丈夫ですから。これくらい…なんとも…」
 涼が訊(き)いた。「先生は、つくねのこと知ってたのか?」
「私も驚(おどろ)いたわよ。たぶん、つくねは記憶(きおく)を消(け)されてるわね。私が呼(よ)びかけても答えてくれなかったから。でも、分からないのは、なぜ私たちの前に現れたかよ」
<つぶやき>しずくは何を考えているのか? これから、何をしようとしているのか…。
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