秘密(ひみつ)の場所(ばしょ)の一室(いっしつ)で月島(つきしま)しずくの悲鳴(ひめい)が聞こえた。そして、水木涼(みずきりょう)の声が、
「そんなに騒(さわ)ぐことじゃないだろ。手当(てあ)てしてるんだから、少しは我慢(がまん)しろよ」
しずくは小さな子供(こども)のように、「だって…。もっと優(やさ)しくやってよ。痛(いた)いってばっ…!」
そこへ、ハルとアキが帰ってきた。しずくは二人の後ろに逃(に)げ込んで、
「ねぇ、助(たす)けて。涼が、ひどいんだよ。怪我(けが)してる私に…」
「しずく、いい加減(かげん)にしろよ。その口に絆創膏(ばんそうこう)はってやるからなぁ」
二人の様子(ようす)を見てハルが言った。「騒ぐのは止めてください。怪我は私たちが治(なお)しますから。それより、あずみ先生、怒(おこ)ってましたよ。何してるのよって」
「それは…、しずくがやったことで…、私は関係(かんけい)ないからな。なぁ、初音…。あれ、どこ行っちゃったのよ。さっきまでここにいたのに…」
柊(ひいらぎ)あずみがため息(いき)をつきながら入って来て、「まったく、どうなってるのよ。勝手(かって)なことばかりして…。しずく、怪我は大丈夫(だいじょうぶ)なの? 無茶(むちゃ)なことはしないでよ」
しずくは、しおらしく答(こた)えた。「はい。全然(ぜんぜん)、大丈夫ですから。これくらい…なんとも…」
涼が訊(き)いた。「先生は、つくねのこと知ってたのか?」
「私も驚(おどろ)いたわよ。たぶん、つくねは記憶(きおく)を消(け)されてるわね。私が呼(よ)びかけても答えてくれなかったから。でも、分からないのは、なぜ私たちの前に現れたかよ」
<つぶやき>しずくは何を考えているのか? これから、何をしようとしているのか…。
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