同期シリーズ第1弾の『同期』(2009年、文庫は2012年発行)では主人公、警視庁捜査一課の宇田川が、暴力団のガサ入れ現場から何かを持ち出して逃げた組員を負う途中で発砲されるも、偶然同期で公安に属する蘇我に救われます。しかし、蘇我はその数日後に謎の懲戒処分となり、行方不明となります。宇田川は蘇我の懲戒処分の理由や行方を追おうとしますが、不可解なほどに何もわからず、「ゼロ」と呼ばれる公安のエリート部署から圧力がかかります。
一方2件の殺人事件は暴力団同士の抗争として捜査されることになり、捜査本部は組対4課主導で運営されますが、宇田川を始めとする数少ない刑事らはその捜査方針に疑問を抱きます。組織の壁に抗い、真相を究明し、友を救おうとする刑事の闘いを描いたストーリー。公安部の特殊性に関する描写やCIAとのかかわりなど、ちょっとスパイ小説みたいな要素があり、純粋な警察小説とは一味違った面白さがあります。
また、最初どちらかというと事なかれ主義の宇田川が先輩刑事からいろいろ学び、本気を出して捜査し、同期を救い、刑事としての自覚を新たにする成長物語としての側面もあり、ドラマ性・エンタメ性が高く、ストーリー展開のテンポがよく、あっという間に読破できました。