海外のニュースより

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「中国の(卑劣な)財政上の犯罪」と題する『ワシントン・ポスト』紙の論説。

2005年06月07日 | 中国の政治・経済・社会
反米主義をかき立てる一例として、中国の経済政策に対するアメリカ議会の現在の論調を考えて欲しい。
中国は、ドルペッグの故に、知的財産権の侵害の故に、アメリカ人に安価な衣類を供給するという悪しき習慣の故に、叩かれている。これらすべては、邪悪で有害で不公正であると考えられている。北京政府が通貨切り上げをしないならば、中国製商品に25%の関税を課すべきだとする法案を67人の上院議員が支持している。議会の圧力に屈して、ブッシュ政権は、最近、中国製衣料の輸入に割り当て量を課すると言明した。
これは馬鹿げている。中国の政治システムは、ひどく、その武力増強は、威嚇的である。しかし、中国の経済的パーフォーマンスは、邪悪でも、有害でもない。中国は、1981年から2001年までの間に、4億人に一日1ドル以上の所得を与えた。同じ時期に世界の残りの部分における貧困に対する実質上の進歩は、ゼロであった。そして、中国の成長は、不公平ではない。それどころか、中国は、合理的な観察者が予測したよりも、より良いグローバル経済上の市民になった。
1.中国は、国際的ルールにしたがって行動しないと言われる。しかし、WTOへのアクセスの条件に合わせるために、中国は、2,600件の法令や規制を廃止したり、修正したと『フォーリン・アッフェアーズ』の最近号で、ニール・H・ヒューズは述べている。規則遵守は続いている。中国は、2007年までに資本市場を外国の競争に開放するために、WTOとの約束を推し進めている。
2.中国は輸入を差別していると言われる。しかし、200年と2004年の間に、中国のアメリカからの輸入は、倍増した。フランス経済のほうが大きいのに、昨年、中国はフランスよりも60%も多くのアメリカ製商品を輸入した。
3.中国は、外国からの投資を差別していると言われる。だが、過去25年の間に、中国は、日本が1945年から2000年までの間にした10倍の外国からの投資を受け入れた。その結果、中国の輸出の半分以上は、外国の補助によってなされている。
4.にもかかわらず、中国は、アメリカの貿易赤字に大部分貢献していると言われる。実際、中国の昨年の収支勘定(貿易収入額プラス僅かの対外支払い額)の黒字は、ドイツの丁度半分である。もっとも、中国が急速に拡大しているというのは、本当であるけれども。
米国の貿易収支の赤字は、2004年度に6,660億ドルに達した。これを中国の黒字のせいにすることはできない。なぜなら、中国の黒字額は、560億ドルに過ぎないのだから。世界の不均衡貿易について心配する議会の議員は、この数字を壁に書くべきだろう。不均衡に対する中国の貢献は、アメリカの貿易赤字の12分の1であった。
5.今年初めの中国からの輸入の急激な増大の故に中国を叩いている。だが、この急激な増大が起こったのは、中国の輸出がそれ以前には保護貿易主義者によって抑えられていたからである。現在、ブッシュ政権は、再び割当制を課そうとしている。もし誰かが市場を不公平は仕方で歪めていると非難されるとしたら、それは中国であるよりはむしろ、米国である。
6.議会はまた、為替政策と米国の知的財産の侵害の故に、中国を叩いている。だが中国の安い人民元は、アメリカの財政赤字と同様、不均衡なグローバル経済に貢献している。しかし、中国も米国も、変化がそれ自身の利益に役立たなければ、変化しようとはしない。安い人民元は、中国にインフレの圧力を作り出す。だが、中国は、それが農村を離れ、あるいは、効率の悪い国営企業を離れる何百万人のために製造業を作り出す限りは、インフレを押さえ込んできた。
その上、たとえ、中国が人民元を実質的に切り上げた、--例えば、10%ないし15%--としても、そして他のアジアの諸国が追随したとしても、その結果は、米国の貿易収支赤字のかなりつましい減少であるだう。中国の為替政策は、重罪と言うよりはむしろ、経済上の不行跡である。
中国の知的所有権侵害は、Tシャツやブラジャーの輸出よりも米国にとって大きな脅威である。衣料品産業は、アメリカの財産にとっては、周辺的であるが、知的財産は、中心的である。しかし、ある程度の海賊行為は、発展途上国においては、風土病である。実際には、中国は、海賊行為を禁じる法律を書籍の上に明示している。
これらの喧嘩を視点に入れるならば、議会は、5年前の中国のWTO加入についての議論を思い出すべきだ。その当時、中国の詐欺行為は、WTOの議論において、不満の洪水を引き起こすだろうと予測された。本当のビッグ・ニュースは、そういったことが起こらなかったことである。より年期の入ったアジアの虎である韓国や日本と比べて、中国は、開かれた輸入に重きを置いた仕方で発展したのだ。中国はグローバル経済の規則によってプレイしようとしている。もっとも、その記録は、完全ではないけれども。
 そもそも誰が完全な記録を持つことができるだろうか。インフレと戦うサド的マネタリズムがグローバルな成長を妨げているヨーロッパ人も、農業保護主義の王様である日本も、アメリカ議会も完全な記録は持っていない。米国の財政赤字について、とんでもない農業補助金について、外国人に対して不正に操作された反ダンピング法について、議会は何をしようとしているのか?実際、中国がその問題についてしていることと同程度のことしかしていない。
[訳者の感想]中国がこれまでやってきた経済政策にかなり理解を示す論説だと思います。アメリカ政府の政策に対してはかなり批判的だと言えます。前出のポール・クルーグマンよりは、中国に味方していると言えるでしょう。タイトルの「卑劣な」(petty)という言葉が括弧に入れてあるのは、議会筋が使っている用語であって、この論説の筆者セバスチアン・マラビー自身は、そうは思っていないと考えます。
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