海外のニュースより

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「中国コネクション」と題するポール・クルーグマンの論説。

2005年05月22日 | 中国の政治・経済・社会
『ニューヨーク・タイムズ』紙5月20日に掲載されたクルーグマンの論説です。
中国の通貨政策を非難する最近の財務省報告についての話は、「ふん、何だって」と言わせた。率直に言って、これは専門のエコノミストも混乱させる問題である。だが、何が起こっているのか説明させて欲しい。
過去数年、中国はそれ自身の理由で、米国の財政責任とナスダック式の投機マニアへの見返りの両方を可能にする者として振る舞ってきた。今や、アメリカ政府は、やっと、問題があることを認めつつある。ただ、問題は中国にあって、俺たちにはないのだと主張している。
行政府の誰かが不愉快な現実に直面したという兆候はない。アメリカ経済は、中国や他の外国政府からの低利のローンに依存するようになり、これらのローンが来なくなった場合、それは重大な問題を持つように見える。
これが米中の経済関係が現在機能している状態である。
通貨は中国に注がれており、それは中国の急速に増大する貿易黒字のせいであり、西欧と日本の会社の投資のせいである。中国の貿易黒字と注入される外国資本の両者は、中国の通貨である元の価値を押し上げており、中国の輸出はより競争力を失い、貿易黒字は縮小しつつある。
しかし、中国政府は、大量のドル建てアセットを買うことによって、元の価値を押し下げてきた。その額は、2004年には2000億ドルであり、今年は3000億ドルに上る予定である。これは経済学的には異常である。その資本が西欧の基準化から見れば少ない貧しい国である中国が、アメリカに低利で莫大な金額を貸しているのである。
けれどもアメリカは、この異常な行動に依存するようになった。中国や他の国によるドルの購入は、アメリカ経済を一時的に巨額の財政赤字の影響から切り離した。この外国からの金の流入は、財政赤字をカバーするのに必要な巨大な政府の借金にかかわらず、アメリカの金利を低く抑えてきた。
反対に、低利の債券は、アメリカの建築ブームにとって重要である。急騰する家の価格は、建築業を産み出さない。家の価格は、消費支出も支えているが、そのわけは、多くの家の所有者が彼らの抵当を別の借り入れで弁済することによって、上昇する家の価値を現金に換えたからである。
そういうわけで、なぜアメリカ政府は文句を言うのか。財務省報告は、中国の為替政策がどのようにアメリカに影響するかについては、全く何も述べていない。それが提供している国内的側面は、行政政策についてのいつものおべっか的な賞賛である。それに対して、それは中国自身にとって中国政府の政策の不利に焦点を当てている。いつから、それはアメリカの主な関心事になったのだろうか。
実際は、政府は、中国経済について心配しているのではない。中国の貿易黒字について怒っているアメリカの製造業からの政治的圧力のゆえに、それは元について文句を言っているのだ。そういうわけで、それはすべて政治である。そしてそれが問題なのだ。もし、政策決定が純粋に政治的理由でなされるならば、誰もその現実世界に対する帰結を良く考えないだろう。
中国が通貨政策を変え、これらの安いローンがもはや来なくなったら、何が起こるか。アメリカの金利は上昇するだろう。住宅建築バブルは、恐らくはじけるだろう。建築業の雇用と消費者の支出は、どちらも下がるだろう。住宅の価格が下がれば、破産が増えるだろう。こうして、われわれは、突然、なぜ誰かが財政赤字を財政的に管理することは容易だと考えたのかと不思議がるだろう。
言葉を換えると、われわれは中国のドル買いに対して中毒症状を呈して来たし、それが終わったときに苦痛に満ちた禁断症状に悩むだろう。
私は現状を維持するように努力すべきだと言っているのではない。中国症状は断たなければならない。早ければ早いほど良い。結局、近い未来、中国は、ドル買いを止めるだろう。われわれが何をしても、住宅建築バブルははじけるだろう。長期的には、外国のドル買いに対する依存を終わらせることは、われわれにより健全な経済を与えるだろう。特に、「元」と他のアジア通貨の上昇は、2000年以来300万人の雇用を失ったアメリカの製造業をより競争力のあるもにするだろう。
しかし、中国の通貨政策の変更のマイナスの影響は、直接的であるが、プラスの影響は、実現するのに何年もかかるだろう。私が言える限り、権力を持つ立場にある誰も、中国が現実にアメリカの要求に譲歩して、元を切り上げたとき、その帰結をどう扱ったらよいかを考えていないのだ。
[訳者の感想]中国政府が実際に元を切り上げたとき、アメリカ経済に何が起こるかをはっきり述べている論説だと思います。しかし、アメリカ政府の要人がだれもそのマイナスの影響を考えていないとは信じがたいことです。題名の「中国コネクション」は、中国から多額のお金が流入している現状を麻薬の経路にたとえたものと思われます。
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