海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「もう一つのアジア危機へとまっしぐら」と題する『シドニー・モーニング・ヘラルド』の記事

2005年05月09日 | 中国の政治・経済・社会
『シドニー・モーニング・ヘラルド』紙5月9日のハミッシュ・マクドナルド記者の記事です。
 先週、貿易相手国は、中国の通貨切り上げを期待していたが、エコノミスト達は、指導者がもっと景気の良い時期に進行させることに焦点を絞っていると考えた。香港のアジア・太平洋マーケットの主任エコノミストであるジム・ウオーカー氏にとって、兆候は次々に現れている。
メルボルンのクラウン・カジノでは、賭をする行楽客に対する前払い金は、今年の新年には、アジアの無茶な賭をする人たちが昨年支払った額の二倍であった。普通労働力が過剰であると見なされている中国内部の省であるセン西省では、最低賃金が30%上昇した。
 ウオーカー氏が言うには、これらすべては、中国が狂乱的な経済サイクルの最後の段階に近づきつつあることを示している。アメリカ・ドルにペッグした通貨の過剰によって特徴づけられる段階に近づきつつある。
 投資銀行モルガン・スタンレーの中国エコノミストであるアンディ・シエ氏も経済システムは、早い速度でクラッシュに近づきつつあると見ている。
 「中国は、輸出と投資に動かされるモデルで、輸出と投資の間の結びつきは、基本的に国家の銀行システムが輸出で得た資金を利益を考えないで投資している点にある」と、シエ氏は言っている。「このモデルは、危機が来るまでは続くようだ。」
 これらのエコノミスト達は、中国の指導者が最小限の仕方以上に多くの西欧の財政担当者による期待に応えようとしているとは考えていない。先週のアジア開発銀行の会合では、通貨切り上げという形で早めに薬を飲むべきだという意見が出されたのだが。
 ウオーカー氏によれば、彼が受け取っている信号は、中国政府高官は、アメリカや欧州の保護貿易主義者達をなだめるために何かをしなければならない、例えば、35%の価格値上げによって、中国の第一四半期の輸出における利益を相殺するということに同意しているということだ。
 しかし、彼によれば、それは多分、がっかりさせるものになるだろう。過去10年間維持されてきた1ドル=8.28元というペッグの周りの帯をたった1%だけゆるめることを意味しているからである。数年の内には、この帯は、もっとゆるめられるかもしれないが。
 海外からの投機的資金の流れが流入し続け、災いに満ちた日をできるだけ先延ばしできるように、北京が元の対ドル相場を引き上げを続けることを期待しているとシエ氏は言っている。
 「もし、中国がある他の国々が要求しているように、通貨安を評価するならば、中国は、1997年に東南アジアで起こったような財政危機を招くだろう。」 
 香港のING銀行のチームは、先週金曜日に、中国は三ヶ月以内に元のドル交換率を改めることができると述べた。「われわれは交換率が10%程度(1ドル=7.45元)大幅に引き上げられると期待している」とING銀行は言う。「元の対ドル比率の引き上げが大きいだろうというわれわれの予測は、マーケットへのアクセスを失うという恐れが高まったことから生じた。」
 外の世界は、中国を突出する経済大国と見るが、ウオーカー氏とシエ氏は中国を古典的な弱点を持ったもっと壊れやすい低開発国であると考えている。
 シエ氏によれば、通貨切り上げ自体が「バブル」そのものである。他の「バブル」と同様、切り上げは、デフレーションをもたらすと思われる。
 「十年前に東南アジアで起こったことを見なさい。通貨価値は、競争力と金融的健全性に依存している。新興経済においては、金融的健全さを維持することはできない。だから周期的に金融問題が生じる。貨幣供給が拡大しすぎており、ドル通貨の切り下げ(depreciation)が行われる。中国も例外ではない。」
 ウオーカー氏は、中国経済が労働力不足のため、壁に突き当たっていると見る。既に100万人の台湾人が大陸で雇われており、大陸の労働力の10%に達している。香港や東南アジアでは、新聞を包んでいるのは、中国での監督的技術的仕事の求人広告である。恐らく2007年に一年か二年利益が出ないためにビジネス活動の収縮が生じるならば、中国の最初のスローダウンは数年続くだろう。
 「これは中国が経験する最初の本当の資本主義的サイクルである。以前にも中国人は景気の上がり下がりを経験した。しかし、それは政府によって作り出されたものだった。今度は、私的セクターの会社に生じた悪質な負債があり、銀行はそれに遥かに違った対応をするだろう。」
[訳者の感想]経済現象に余り知識がないので、これまで経済記事を翻訳することは敬遠してきました。この記事でも、元を切り上げるとデフレになることは分かるのですが、それが1997年の通貨危機と同じだというのが良く分かりません。どなたかご教示頂けると有り難いです。]
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