海外のニュースより

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「六ヶ国協議は、なぜうまくいかないのか」と題する論説。

2005年05月07日 | 外交問題
これも「ジェームズタウン財団」のホームページに掲載された論説です。筆者はジ・ユウ(中国系の人だろうと思います。)という人で、オーストラリアのニュー・サウス・ウエールス大学の政治学・国際関係論講師だそうです。
 なぜ、六ヶ国協議は、うまくいかないのか?主な理由は、北朝鮮がアメリカの政権を変えようとする戦略に対する対抗手段として大量破壊兵器を保持しようと決断しているからである。しかし、六ヶ国の間の優先の順位が違っていることも、どのようにして北朝鮮に圧力をかけるかという問題の要因となっている。
 米国も中国も平壌の核計画を終わらせるために平和的手段を用いることに同意してる。けれども中国にとっては、北朝鮮の非核化は、戦争の回避に比べれば二次的な目標である。今年二月、北京は初めてこの議論がどのように解決されるかについて関心があると述べた。話し合いによる決着以外の方法は、戦争に至る点まで緊張をエスカレートするかもしれないという北朝鮮の脅しを深刻に受け取った。なぜなら、それは中国にとっては破滅的であるからである。北京にとっては、戦争を防ぐことは、どんな犠牲を払ってでも追求されなければならないからである。これは六ヶ国協議に関するアメリカの優先事項に矛盾する。ワシントンにとては、軍事的オプションは、目下はオプションではないが、もし、多国間の枠組みが行き詰まれば、そのオプションは、適用可能である。
 優先性の順序は、六者協議の長期的結果に対して重大なインパクトを与える。例えば、戦争回避を強調することは、敏感な問題であり、他の参加者によって、歓迎されるだろう。しかしながら、それは間接的に平壌を助けるかもしれない。話し合いが長引けば、その間に北朝鮮は、核物質を武器化することができる。更に、平和的手段を強調することによって、北京は実現可能な解決を見いだす道として北朝鮮の安全保障をオウム返しに繰り返すようになる。結果として、北京は、アメリカが文書で北朝鮮の安全を保証することが六者協議の目標にとって、必要であるだけでなく、本質的であると見なしている。最後に、平和的解決を強調することは、取引決着にいたる段階的で並行的なプロセスに好都合な立場に中国を追い込む。つまり、アメリカの安全保障プラス平壌の核施設の撤去と引き替えに石油資源を補償するというプロセスである。
 このような解決は、アメリカの目標と明らかに抵触する。ワシントンによれば、圧力を最大にすることは、平壌をその誓約の感じられる評価へともたらすための前提条件である。これは軍事的威嚇のレベルに基づかなければならない。それゆえ、先制攻撃を完全に除外することはできない。過去二年間、アメリカは、イラクで手一杯だったし、北朝鮮の言い逃れ戦術を大目に見なければならなかった。ワシントンも別の戦術を展開するには時間が必要であることは、言うまでもない。六者協議は、この背景の中では最善のメカニズムであった。しかし、今や状況は変わった。イラク問題は解決の目途が見えてきた。六者協議の非効率性によって、ワシントンは、北朝鮮に圧力を加える別のオプションを考えなければならないと考えている。
 北朝鮮の安全を保証することは、アメリカ政府の関心事ではない。文書で安全を保証することは、政治的には危険であり、ブッシュ政権にはイデオロギー的に受け入れられない。核施設の停止と引き替えに発電所や石油の供給をすることは、アメリカの欲するところではない。失敗した合意の枠組みの教訓から学ぶことによって、ワシントンが、核施設の完全で検証可能な不可逆的な廃棄を要求することは、論理的である。事実、ワシントンは、リビア・モデルを北朝鮮に適用しようとしている。国連大使に任命されたボルトンは、リビアが大量破壊兵器の開発を止めたことに対して代償を与える気はない。その代わりに、リビアが国際社会に再び入ることを許しただけである。アメリカは、北朝鮮の協力に平壌が置いた高い代価をゆすりだと見なしている。合意の枠組みに同意させるために北朝鮮に賄賂を使ったのだとクリントン政権を批判しているブッシュ政権にとっては、多額の代償は問題外である。
 北京はリビア・モデルについては沈黙しているが、私的には、中国のアナリストは、それが北朝鮮にも適応可能であるかを疑っている。なぜならば、北朝鮮は、国際社会に復帰することを気にしていないからである。北朝鮮の唯一の関心事は、政権の存続である。更に、リビアは、豊富な石油資源を持っているが、北朝鮮は、絶望的に代償と援助に依存している。それゆえ適当な代償がなければ、北朝鮮は核施設を決して廃棄しないであろうと中国政府は考えている。(以下省略)
[訳者の感想]この論説を読んで、六者協議が開かれない理由が、どこにあるかがよくわかりました。
 
 
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