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海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「デモ隊と殴り合ってはいけない」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2007年09月11日 | 中国の政治・経済・社会
北京発:北京のオリンピック競技大会でデモをしたら、どうなるか。外国から来た活動家たちが撮影中のカメラの前で横断幕を振り回したり、デモやその他の抗議行動に移ったら、中国の治安当局は何をするだろうか。チベットのための自由や、法輪功のグループの迫害を非難したら、どのような反応が起こるか。
普通の時期だったら、人民中国では、政治的批判を街頭で表現すれば、素早く警察権力で終わらせられる。外国人の活動家を中国の公安がどう扱うかをあらかじめ示したのが、少し前に、チベットのためのデモ隊が万里の長城で抗議行動をした後、逮捕され、三日後に国外退去になったときである。
オリンピック競技中にはもっと自由を認めると北京政府は約束した。何かが期待されているということは、北京では知られている。オリンピック競技場には、「デモ・コーナー」も設けられるだろう。だが、活動家たちがどこか別の場所で注目を引こうとしたら、警察がどう振る舞うかは、秘密のままである。いずれにしても、オリンピック大会前あるいは中に市民が抗議行動を見た場合、彼らがどう振る舞うべきか今すでに知らされている。
「いろいろな価値観をもったいろいろな人たちがこの機会を利用して、彼らの意見を誇示することは避けがたい。かなり多くの意見は中国では歓迎されない」とオリンピック大会の準備について「新華社通信」の寄稿文は述べている。「このような行動に対しては断固として抵抗せよ。しかし、落ち着いて振る舞え。事故を直ちに警察、あるいは他の公的機関に通報せよ。」
乱闘になることに対してはっきりと警告している。「殴り合いになることは、最悪の選択である。」昨年も、タイ国で開かれた子供の水泳大会で台湾の金メダル選手が台湾の国旗を身にまとったとき、衝突が起こった。人民中国のスポーツ役員が国旗を奪った。
「暴力行為は、われわれに跳ね返り、われわれを不利な立場に置き、活動家を犠牲者に見せる。これこそこれらの人々が狙っていたことのだ」と書いたとき、中国の役所がスポーツ役員のこのような不作法な振る舞いを考えていたかどうかは明らかではない。
既に2万人の外国からのジャーナリストたちに、中国について良いことを報道するようにお達しがあった。そういうわけで、中国のピンポン競技の花形であるデン・ヤピンは、中国テレビで、自分の国の悪口を言わないように警告した。外国のレポーターが政治的意識を持たない単純な人たちと話をすると、こういったことは簡単に起こる。だが、西欧のジャーナリストたちは、中国を「色眼鏡」で見ているということを知らねばならない。だから、すべての中国人は、この時期、オリンピック競技会の宣伝役で中国の代表者だということを中国の市民にはっきりさせるなければならない、とデンは語った。(後略)
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「国防省、中国の龍に対して警告」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2007年08月20日 | 中国の政治・経済・社会
ワシントン発:国防省でも、国務省でもホワイトハウスでも、「平和の使命2007年」という名札を信用していない。それは、上海協力機構の諸国がキルギスタンのビシュケクで開いた年次集会で行った軍事演習の名札である。このウラル南部の演習には、6500名の兵士が参加した。彼らは仮想国Aの政府が上海協力機構に軍事援助を要請した後でテロリスト集団に対して投入されたことになっている。
2001年に創設された中国とロシアの同盟にカザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・ウズベキスタンの中央アジアの国々が参加しているが、彼らは、仮想のA国に援助を与える用意があり、国連の安全保障理事会の軍事的介入のための命令を得たということになっている。彼らはテロ集団を発見し、「短期間に彼らを壊滅させた」とロシア軍のウラジミール・モルテンスコイ中将は述べた。
6年前の同盟創設以来初めてのこの軍事演習には、6000万ユーロ(96億円)の費用がかかったが、ロシア大統領プーチンは、胡錦涛中国主席と中央アジア諸国の大統領をこの演習とそれに続くビシュケクからシベリア西部のチェリアビンスクまで飛行機で来させた。
中国は、1700名の兵士と戦闘機とヘリコプターを参加させた。カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・ウズベキスタンの部隊も、訓練に参加した。それはロシア軍の催し物であったが、外国首脳に対して武器のデモンストレーションの機会となった。
前日、六人の国家首脳は、共同声明で、地域の安全を維持することが上海協力機構の唯一の課題であると述べた。これは、米国に対する明白な目配せである。まぜならば、米国にとっては、この地域は、アフガニスタンとイラクへの軍事介入のための前進基地であり、イランへの隣接地域として、また、地域の石油と天然ガス産出によっても、非常に軍事的に重要な意味を持っているからである。2006年に、ワシントンは、ウズベキスタンから駐留米軍を引き上げなければならなかった。キルギスタンのマナス空軍基地を国防省はその後も利用している。
再び目覚めた「ロシアの熊」と並んで「中国の龍」は、もはやただの輸出大国であるとは思っておらず、その政治的経済的力をこの地域での軍事的手段とともに示そうとしたということは、ワシントンにとっては、何ら新しいことではない。「中国の軍事力」と題する国防省の最近の報告では、中国軍の増大する打撃力に対して以前にはなかったほどはっきりと警告している。人民軍の増大する軍事的能力は、--2百3十万人の軍人は、相変わらず世界最大であるが、アジア・太平洋地域を越えて影響を及ぼしている。
第一に批判されているのは、北京が軍事費の規模と武器費用を隠蔽している点である。三月には、北京は、公式に2007年度に防衛費を17.8パーセント増やし、総額450億ドル(5兆4千億円)にすると述べた。これは公式には、米国の毎年の軍事費の10分の1であるが、国防省と情報機関は、中国の軍事費が850億ドルから1250億ドルに達していると確信している。(以下省略)
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「すべてのニュースは、良いニュースでなければならないと、中国政府」と題する『ガーディアン』紙の記事。

2007年08月18日 | 中国の政治・経済・社会
北京発:中国政府は、メディアに肯定的なニュースだけを報道せよと命令し、共産党の最も重要な会議の最初に意見の相違に対する弾圧の最中に民主主義推進派の異端者を投獄した。
メディア統制は、強化された。胡錦涛主席が第17回全人代の準備をするにつれて、エイズの活動家やNGOは、活動を禁止された。そこでは次世代の国家指導者が、政治局の改造によって明らかにされる。
禁止された「中国民主党」の創設メンバーであるチェン・シュチンは、木曜日に、「政府を転覆するように人民をそそのかせた」というかどで有罪となったとき、最も厳しい罰を受けた。
せっ江省の杭州市の人民中級法廷は、彼を四年の禁固刑に処した。厳密に統制された伝統的なメディアのせいで、彼の近年のキャンペーンは、インターネットに制限されていたけれども、チェンは、断固たる共産党の批判者である。
「国境なきレポーター」というグループは、判決にぞっとして、「共産党から命令を受ける裁判所は、サイバー反体制派を取り締まり続けている」と述べた。パリに本拠地を置くこの団体は、「中国で捕まっているチェンや他の50人のサイバー反体制派やインターネット・ユーザーの釈放を求めるわれわれの訴えを繰り返している」と述べた。
正確な日時は秘密であるが、10月に予定されている全人代が近づくにつれて、国内メディアは、食品と製品安全についての独立の調査を行うことを禁じられた。北京では、首都の宣伝部は、今日始まった交通緩和措置のテストをどう報道すべきかについて編集者たちに詳細な指示を突きつけた。四日間の試験期間中、長さ1メートル以上の車は、道路を走らないように命じられた。地方新聞やテレビ局は、環境と輸送に対する改善についてのみ報道できる。不便な通勤者や混雑したバスについてのインタービューは、禁じられた。
たいていの国家メディアも、14人の犠牲者を出した中国南部の橋の崩壊について報道することを禁じられた。リポーターによると、彼らは役人に殴られ、事故現場から追い出された。
水曜日に、政府は、新たな規制を公表したが、それは虚偽のニュースや非合法のテレビ報道を禁じるものである。これは、明らかに、先月の「ダンボール肉まん」について虚偽の報道に対する返答である。このやらせ報道に責任があったジ・ベイジアは、1年の禁固刑に処せられた。
「この取り締まりは、事実に基づいて報道しようしている責任あるジャーナリストの頭に突きつけられた鉄砲だ」と「人権ウオッチ」のアジア代表であるソフィー・リチャードソンは述べた。
[訳者の感想]「ガーディアン」紙の中国特派員であるジョナサン・ワッツ記者の記事です。ここまで報道統制をしなければいけないということは、共産党と政府がメディアに手こずっている証拠だと思います。報道の自由がないところには、民主主義は育たないと思います。
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「中国、食品薬品安全局長を死刑に」と題する『アルジャジーラ』局

2007年07月11日 | 中国の政治・経済・社会
当局に一連の汚染された食品スキャンダルに対する圧力が加わったので、中国は元食品安全局局長を汚職の理由で死刑執行した。
ゼン・シャオユウは、基準を満たしていない薬品を承認した見返りに、80万ドル(9,600万円)相当の金品を収賄したというかどで、五月に死刑を宣告されていた。
ある抗生剤は、少なくとも10人の患者を死に至らしめた。
火曜日のゼンの死刑執行のニュースは、もっと厳格な品質コントロールをする努力を高めるよう誓わせられた際に、食品安全局の役人によって確認された。
63才のゼンに科せられた異常に重い刑の宣告は、この国の恐ろしい生産物安全記録との取り組みを示そうとする政府の努力だと見られている。
 ゼンは、国家食品薬品安全局(SFDA)の局長であったが、この機関は、1998年から、2005年に彼が逮捕されるまで、食品及び薬品の安全性基準を定めていた。
 中国は、輸出された食品・いんちき薬・潜在的に有毒な製品を含む基準以下の製品から生じる問題を克服せよとの国内的国際的圧力に直面している。
 SFDAの報道官ヤン・ジャンヤンは、北京の記者会見で処刑を確認した。
「数人の腐敗した役人は、全システムの恥であり、彼らのスキャンダルは、いくつかの重大な問題を暴露した」と彼女は言った。
「われわれは真剣に反省し、これらの事件から教訓を学ばねばならない。われわれは、食品や薬品を保証する努力をステップ・アップする。それはわれわれが現在行っていることであり、将来において続けるつもりである。」
 ヤンは、SFDAは、その安全手続きを強化し、より透明な作業環境を作り出すために働いていたと述べた。
 「発展途上国として、中国の現在の食品と薬品の安全状況が余り満足すべきものでないわけは、食品と薬品の安全性の管理・監督が遅く始まったからである。その基礎が弱いので、食品と薬品の安全性の管理・監督は容易ではない。
 先週、SFDAは、中国内で消費されることを目的とした生産物の20%が、今年の上半期に、基準以下であることがわかったと述べた。
 缶詰の果物と乾し魚は、バクテリアに汚染されているので、もっとも問題的である。
 中国製の歯磨き粉は、内容にジエチル・グリコールを含んでいたために数カ国で販売禁止になった。
 今年初めには、化学的メラミンで汚染された中国製小麦グルテンを含むペット・フードで、数百匹の犬と猫が死んだと非難された。
 製品の安全性についての最も最近の国内警報では、北京で使われている冷水機の半分以上は、偽ブランドの水を売っていた。水は、小規模の供給者によって、水道水か、浄化水が水樽に詰められ、偽の品質基準マークのシールが張られていたと『北京時報』は報道している。
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「中国、『カリブの海賊』第三部を検閲」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年06月16日 | 中国の政治・経済・社会
 国営の中国映画局は、『カリブの呪い』から10分間分を消去した。その理由は、そこでは中国人が中傷され、歪められたからである。検閲官は、特に、香港出身の銀幕のスターであるチョウ・ユンファットがサオ・フェン船長を演じているエピソードが気に入らなかった。報道によると、この役所は彼らの決断に対する具体的な理由を述べなかった。
 しかし、中国のある映画雑誌は、「チョウの髭を生やし、頭をそり上げて恐ろしい外貌が、中国人を悪魔化するハリウッドの古い伝統と一致している」と書いている。それ以外にも、この場面は、アメリカ映画が「土着の文化を理解できない」ことを示している。
 『カリブの呪い』第三部では、ジャック・スパロー船長を演じるジョニー・デップは、新たに世界の大海に船出した。検閲官は、メディアの報道によると、チョウが「シンガポールにようこそ」と言う場面も削除した。これは、「シンガポールが海賊の国である」ことを示唆するからである。「シンガポール人達は既に抗議したそうだ」と検閲の理由に述べられた。
 オルランド・ブルーム、ケイラ・ナイトリー、ジョフリー・ラッシュなど数多くの映画スターが出演している『カリブの呪い--世界の果てで』は、数週間、アメリカやドイツでは、ランク一位にある。上海での初上映の際、この映画は118万元(1,770万円)を稼いだ。「われわれは、この映画が中国で『スパイダーマン3』よりももっと大きなヒットになることを望んでいる」と検閲官について言われている。
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「米中関係に冷水」と題する『ガーディアン』紙の論説。

2007年06月15日 | 中国の政治・経済・社会
 米国がロシアとの関係が凍結されるのを止めようともがいているときに、中国の軍事的増強についての国防省の新し報告書に従うと、はっきりした冷気が北京の扱い方に降りてきた。リチャード・ニクソンのほうが、両方の超大国と対抗することをよく心得ていた。このような智恵は、ジョージ・ブッシュを悩ませている。
 グローバルな野心をもった中国の地域的経済的な権力としての急速な台頭に注目して、国防省は、その拡大する軍事力と、それがどのように行使されるかをめぐる不確実について苦情を述べた。中国の短期的焦点は、「台湾海峡の軍事的緊急事態である」と報告書は述べている。しかし、中国は、資源や領土を巡る可能な紛争に備えて、軍事力をアジア・太平洋地域を離れてもっと遠くに投影しようと計画している。
 国防省は、中国の強化された長距離ミサイルの能力をもった五隻のジン級潜水艦という新しい艦隊の展開に対して異議を唱えた。一月に実施された、人工衛星破壊ロケットのテストの成功は、すべての宇宙空間利用国の資産を危険に曝し、人類の宇宙飛行に対して危険を引き起こした。そして、米国のいわゆる戦場や宇宙、サイバースペースにおける技術に対抗する中国の能力に対して異議を唱えた。
 中国共産党指導層の「平和的台頭」のスローガンに挑戦して、米国の国防計画立案者達は、「中国の行動は、ある領域でその宣言された政策と矛盾しており、防衛費は、公開された数字を遥かに超えている」と主張した。そして彼らは二つの問題にハイライトを当てた。
 日本との緊張関係は、昨年11月の北京サミットの後いくらか収まったが、「東シナ海における領土の争いと国連安保理の議席を得ようとする日本の要求をブロックする中国の努力は、依然として摩擦の源泉である。」報告書はまた、北京によって裏切り者の領土と見なされているが、その独立が、事実上、米国によって暗黙の内に支持されている台湾は、依然もっともありそうな発火点であると警告した。
 「中国の軍事力近代化と対岸の島に対する戦闘能力の増強とは、和らげられていない。力の均衡は本土に有利になりつつある」と報告書は述べている。台湾は、防衛費を増額しているが、来年3月に台北で行われる大統領選挙は、更に米中両国の緊張を悪化させるだろう。台湾政府の役人は、最近、自分たちが中距離弾道弾や大量破壊兵器の獲得を計画しているということを否定したが、国際政治部局は、どうすれば中国を思いとどまらせることができるか、引き続き検討している。
 国防省の批判に対する中国の反応は、頑強で巧妙だった。外務省は、中国の内政に対する「乱暴な干渉」を遺憾であるとした。公式の『中国日報』は、報告書が米中関係を混乱させようとする米国タカ派による露骨な試みであると示唆した。「事実を無視し、いわゆる中国の軍事的脅威を宣伝することによって、報告書は長持ちする足を持っていない」と述べた。
 シンガポールの「国際戦略研究所」の講演で、人民軍参謀本部の補佐官であるジャン・チンセン陸軍中将は、「米国の恐れは誇張されている。中国は、平和的発展の道を選んだのだから、歴史における台頭する国家とは違っている。中国は、本性防衛的な防衛政策にずっと固執してきた。中国は決して先に発砲しないだろう」と述べた。ジャン中将は、中国の防衛予算の数字は、「真実で、本当だ」と主張した。「われわれが直面している多様な治安を見れば、支出総額は、米国と比べてかなり少ない。」
 西欧と台湾のアナリストは、中国の台湾戦略は、将来の紛争の際、米国の航空母艦を寄せ付けないことによって、米国の軍事的介入を止めさせることである。それは主にミサイル発射潜水艦の使用によって可能になる。しかし、中国は、ワシントンの圧倒的な核優位を含む米国の能力についても関心を持っている。米国が1万発の核弾頭を持っているのに対して、中国は、400発しか持っていない。
 増大する国際的利害と傷つきやすい中近東の石油供給路を持ったグローバルな貿易国として、中国の軍事力拡張計画は、殆ど例外的だとは見られなかった。むしろ、中国は既成の西欧的伝統に従っている。ブッシュのグローバルなミサイル防衛計画は、ロシアとの摩擦の種であるが、それれは東アジアの軍事的平衡を更に複雑にした。
 ミサイル防御に関する日本との協力は、公式には北朝鮮を思いとどまらせようとしているが、モスクワと同様、北京に、ブッシュ政府が、透明性を強調しているものの、話の全体を述べているかどうか、疑いの目を向けさせている。
[訳者の感想]『ガーディアン』紙の論説委員であるサイモン・ティスダルの論説です。かなり中国寄りと言えるでしょうか。
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「中国、本物そっくりのトランスラピッドを製造」と題する『シュピーゲル』誌の記事。

2007年06月04日 | 中国の政治・経済・社会
上海のトランスラピッドの走路の建設を巡る競争は、ますます劇的になりつつある。テスト走路に目撃されたモデルは、独逸製のリニアモーターカーに驚くほど似ている。独逸製のトランスラピッドは、2003年初頭から浦東空港と地下鉄の竜陽路の間の31.5キロを往復している。中国製のトランスラピッドまがいの写真は、現在、リニアモーターカーの専門家のためのウエッブサイトに公開されている。
ティッセン=クルップ社とジーメンス社の交渉係は、非常に不安になっている。彼らは、中国側が現在、トランスラピッドの延長交渉を引き延ばしている理由は、中国人達が自分で製造した列車を投入できることを望んでいるからだということをあり得ることだと考えている。
反則ゲームは、否定できない。新聞の報道によると、少し前に中国人技術者達が、夜間にトランスラピッドの格納庫で発見されたが、彼らは明らかに極秘のリニアモーター技術について情報をえようとしていた。
 連邦首相アンゲラ・メルケルは、既に最近の展開について情報を与えられたそうだと、交渉係の間では言われている。英語で書かれた『中国日報』は、先週、トンジ大学の鉄道技術者のシエ・ウエイダの言葉を引用していた。「中国はまだドイツのリニアモーター技術に大幅に後れを取っていると教授は述べた。「リニアモーターカーが建設される場合、大部分はドイツから輸入されなければならない。これまでわれわれは軌道と車体の外側をこなせるだけだ。」
 数日前に既にプロジェクトを巡って騒動があった。上海市政府は、「付近の住民が電磁波放射を恐れているので、路線の延長は中止された」という国営の「新華社通信」の報道を否定した。その際、家屋とトランスラピッドの高架との間の22.5メートルという安全距離が問題になった。これは、先週、住民の間に抗議運動を引き起こした。彼らは特に騒音と住環境の悪化とを恐れている。
中国側とドイツ側は目下、地下鉄の竜陽路駅から2010年に開催される予定の世界博覧会の会場までの線路を延伸すること、更に、南駅と最終的には虹橋空港のそばの交通要衝への延伸を交渉している。それ以外に、180キロ離れた杭州まで高架を建設することが話し合われている。しかし、さしあたり中国人は、虹橋空港への延伸だけを望んでいると、消息筋は語っている。北京の国務院が許可を出す前に、環境局が周辺に対する有害な結果についての報告を提出しなければならない。
[訳者の感想]ドイツ側の磁気浮上技術は厳秘になっていて、そう簡単にはコピーできないようです。
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「中国の人権問題」と題する『フランクフルター・アルゲマイネ』紙の記事。

2007年05月27日 | 中国の政治・経済・社会
ケーラー・ドイツ連邦大統領は、最も最近のドイツからの来訪者として、ピリピリした雰囲気の中で中国を旅行している。最近数週間のうちに、ドイツは、人権というテーマを再び鋭くするのに成功した。このテーマについては、それは外交上の型どおりの仕事の中ですっかり姿を消したと思われていた。だが、連邦議会の決議は、中国の労働収容所を批判した。ベルリンでのヨーロッパと中国の人権対話から、中国の外交官達が早々に退去した理由は、国家に敵対的だと分類された香港の非政府系通信社が加わっていたせいである。今回、ケーラーは、彼の言葉を慎重に選んでいる。
 少し前に、抽象的すぎる概念はうまく無害化されているという印象を持つことができた。人権状況について西欧の政治家達が口に出すのと同じ頻度で、中国の政治家達は、内政問題であるという理由で丁寧に反論した。
 だが、クールな外見は、欺いている。外交的に平静な時代でも、中国は、普遍主義的な要求によって挑発されていると感じている。そのことによって、具体的な批判は、直ちに単なる内政干渉であるとして退けられないでいる。多数の研究者や研究施設、例えば、「人権研究のための中国学会」は、何年も前から、「西欧の議論上の覇権」に対して何か独自のものを対置するために、このテーマと取り組んでいる。繰り返し変えられる公式の立場は、中国の伝統文化は、人権についての独自の見方を展開してきたというものである。それは「個人主義と利己主義」からではなくて、共同体の調和を前提にしている。それゆえ、政府の出している人権白書は、「存在と発展に対する人民の権利」を「国家が配慮してきた人権」だと称する。
なぜ政府が権力を譲渡しないかという理由を探している政府が哲学していることは、明白である。真剣に考えられた論拠も、それが適合する国家によって道具化される。けれども、人権の持つ普遍主義的性格を真剣に考える思考は、歴史的文化的経験に立ち入るのが良い。
「中国社会科学院」が発行している雑誌に最近、ある論文が載せられた。それは、通常の文化主義的論証よりももっと過激である。「社会科学院」で仕事をしている哲学者チャオ・ティンヤンは、西欧がいつも人権を支持することを新たな「西欧の事実上の宗教」だと表現した。(別の機会には、彼は、西欧的普遍主義を「隠れた原理主義」と呼んだ。)彼は、公式筋の受け身の反応を哲学的に無意味であり、西欧の見方が正しいということを暗黙の内に認めていることに他ならないと述べた。
 けれども、西欧が人間であるという単に生物学的な事情から権利を引き出す仕方は正当化されないと彼は言う。自然は、まだ一度も権利を基礎付けなかった。それができるのは道徳である。実際には、人間が何で「ある」かではなくて、人間が何を「する」かによって、人間は権利の主体になることができる。ゲーム理論的な考慮に基づいて、チャオは、人間の利害関心は、「調和の取れた正義」を持った制度において最も良く満足され、そこでは、人権は、存在に基づく「自然権」ではなくて、行為に基づく「信用への権利」が保障されると言うのだ。
 「すべての人権は、結局、生命と自由への権利を含めて、払い戻されねばならない何かである。」その権利は、良い振る舞いにおいてのみ、通用する。
 この行為との関係から得られた立場の盲点は、明らかである。この立場は、権利が依存すべき、社会を何か自然発生的なものと見なし、誰がどんなカテゴリーにしたがって、権利を保障したり、奪ったりするのかという問いを中心に置いていない。チャオ自身が、この体制では、正義に対する客観的な判定基準は存在しないということを白状している。まさに人権によって限界が置かれるべき国家の恣意に対してどうぞご自由にと言っているのと同じだ。
 だが、チャオがまさに人権において不都合だとしている点は、それがもともと自然法的、あるいはキリスト教的由来をもっているということである。実際の政治においては、この起源は、括弧に入れられているが、全く違った精神史との対決において、この起源は再び何か異質のものとして現れる。だが、人権のパラドクシカルな点は、この起源には依存していない。人権の要請は、国家に、それ自身の有効性の限界を無条件に認めることを要求している。このような限界の線引きの意味を見抜くのに、一定の形而上学は必要でなく、国家が人権に対する侵害をなし得るという歴史的経験だけが必要なのだ。この経験を中国は十分持っている。
[訳者の感想]人権問題を文化的な違いから違った解釈が可能だと考えているこの中国人哲学者の意見は、日本の保守派の意見とそっくりだとは思いませんか。筆者は、マーク・ジーモンスという記者です。
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「中国は、ボーイングとエアバスに対抗する」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年03月20日 | 中国の政治・経済・社会
 専門家の意見聴取には、3年かかった。ある人は、費用が高すぎる、プロジェクトが来るのが遅すぎた、ボーイングとエアバスは、強すぎると言った。他の人たちは、中国の経済力は、エアバスとボーイングを相手にするのに十分強いと言う。その上、中国は、大型旅客機を必要としている。2020年までに中国は、1500機の新しい航空機を入手しなければならない。ボーイングは、2026年までの中国の航空機需要を2900機と見積もっている。この費用は、2千8百億ドル(33兆400億円)に達する。それなら自分で航空機を建造するほうがいいではないか?
 旅客機製造支持者の意見が通った。2月26日、中国の国務院は、プロジェクトに着手することを決議した。実行可能性についての評価は肯定的だった。野心的な計画への細部が現在初めて明らかになった。中国が軍事的に利用可能な航空機を計画するということを経済週刊誌『チャイジン』が暴露した。
 国家のインノベーション計画は、16の高度技術プロジェクトを数えている。その中には、宇宙旅行計画やトランスラピッドにとって代わる磁力軌道開発が含まれている。体面に関わる企ての上の方に大型旅客機の建造が挙げられている。中国はボーイングやエアバスと競争するつもりである。それには50億から60億ユーロ(9000億円)の開発費が見込まれる。10年間に150座席以上の航空機の原型ができる予定だ。この航空機は旅客だけでなく、部隊輸送としても使われる。
 その後、航空機プロジェクトのためのプロジェクト会社が創設される。この航空機の民間仕様は、上海で製造される。軍用機は西安で作られる。
 航空機プロジェクトが推進される会合で、温家宝首相は、この企てはこれまでの技術計画とは別のやり方で進められることを希望した。グローバル化の時代には、すべての自前では製造することは、非効率である。例えば、推進技術は、今日国際的に提供されるだろうと述べた。
 1970年から1985年まで、上海で、極秘の状態で、Yun10型の旅客機が開発された。三つのバリアントが存在した。1980年にはモデル02が飛行可能だった。130回の離陸が試され、試験的にチベットのラサまで飛んだ。だが、飛行時間は、170時間を超えなかった。 1985年に、中国は、米国のマクダネル・ダグラス社との協力を始めた。だが、12年後、ボーイング社がダグラス社を併合したので協力は終わった。MD82型機とMD90型機が上海で37機、製造された。
 AE100型機を製造するためのエアバス社との協力も、1997年に停止された。その理由は、エアバス社が技術移転に対して法外な価格を要求したからであり、その中心的技術を引き渡すことに不安に思ったからである。(以下省略)
[訳者の感想]中国はとうとう自前の技術で旅客機を開発することに決定しました。その意気を壮とすべきでしょう。
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「中国の惰性は、緑の革命を遅らせる」と題するジョナサン・ワッツの解説

2007年03月06日 | 中国の政治・経済・社会
 温家宝首相は全人代における年次報告で環境についての覚醒を口にしたが、中国の政治が改革されるまでは、この問題には留意されそうもない。
 この国の歴史で最も環境に配慮する首相という評判を肯定することによって、温家宝首相は、全人代に集まった代表達に、この国がエネルギー効率と汚染の低減を改善しなければ、中国の成長は持続不可能であると警告した。
 このメッセージは、よく知られているが、それにこのような重要さが与えられたことはこれまでなかった。米国大統領の年頭教書にたとえられる年次報告の冒頭に環境を置くことによって、温家宝首相は、国民の注意をその「経済的奇跡」の持つ最悪の帰結に引きつけた。
 勿論、社会的不平等・農村暴動・腐敗・教育・健康・台湾のような差し迫った争点への言及もあったが、---これらの争点は、初日の全人代に対する開会演説では支配的であったのだが、---最も鋭い自己批判は、環境目標に対応するのに政府が失敗したことに向けられた。
 「われわれはエネルギーを保存し、エネルギー消費を減らし、環境を保護し、土地を集中的に利用することを、経済成長のパターンを変えるための主な支えにしなければならない」と彼は開会演説で述べた。
 「国家は、環境汚染をコントロールし、環境を保護するために、非効率で不潔な動力施設や鋳物工場を閉鎖するだろう」と彼は言った。
 代表団は熱烈にと言うよりは礼儀的に拍手した。温家宝はそれに慣れている。話し手としては、彼のもっとも推奨できる性格は、聴衆に彼らがどちらかと言えば聞きたくないことを言う積極性である。
 首相の警告を裏付ける証拠は十分ある。北京は世界中で最悪の大気汚染問題の一つである。中国の河川の70%は、汚染されている。中国南部では、ヒマラヤの氷河は溶けつつある。北部では、浸食する砂漠が、4億人の生活を脅かしている。
 ある国が切迫した環境の崩壊に直面しているとしたら、それは中国である。けれども、この国は、世界中で最も効率の悪い経済の代表である。それは国内問題ではなく、地球の温暖化にインパクトを与え、ますます少なくなっている資源にインパクトを与えている。中国の環境問題は、その軍隊よりももっと大きな脅威を与えていると言えるかもしれない。昨日、中国はその軍事費を2007年度は17.8%増やすということを明らかにした。
 温家宝首相は、中国の経済をより環境に優しくしようとすることで、「世界野生動物基金」や「グリーンピース」のようなグループからは拍手喝采されるのはもっともだ。だが、変化に影響を与える彼の力は限られている。経済成長をコントロールすることになると、この権威主義的な国家には、権威が欠けている。
 今日、温家宝は、今年の成長目標を8%にすると宣言した。それは、2006年度の10%の成長率に比べるとかなりのスローダウンである。この冷却が達成されるかどうかは、別の問題だ。近年、政府の見積もりは拡大の本当のペースよりも下回っている。
同様に、排出や無駄を減らすための国家の環境目標は楽天的すぎることが証明された。両方の場合に、問題は、環境により焦点をおくという温家宝の誓いにもかかわらず、中央政府と地方政府の優先は、ビジネスと仕事を促進することである。
温家宝の演説には抜けている政治的改革に少なくとも一部は責任がある。民主的な責任負担がないから、共産党幹部と官僚という支配階級は、貧しい生活環境に苦しんでいる人々よりも、汚染する側に遥かに近い。
腐敗ともみ消しとは、まん延しており、普通、それらが大きな汚染排出の主たるファクターであることが分かっている。温家宝首相が本当に中国を綺麗にしようと欲するならば、彼は政治をより汚くしないことから始めるべきだ。
[訳者の感想]『ガーディアン』紙に載ったジョナサン・ワッツ記者の論説です。昨日訳した『ヴェルト』紙のキルスティン・ヴェンク記者の解説よりもずっと辛口だと言えるでしょう。
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「中国の将来についての10の質問」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年03月05日 | 中国の政治・経済・社会
北京で世界最大の議会が招集される春毎に、中国は、国防費の増加を告知する。国家予算と将来のための重要な転換が計画される。
3月5日から16日まで、2,937名の代表委員が集合するならば、国家予算についての賛否と並んで、二つの重要な法案が中心になる。私有財産の保証と改革された企業課税は、中国に市場経済へのさらなる一歩をもたらすはずだ。
1.中国の台頭は、西欧との戦争に繋がるか?
答え:そうはならないだろう。核保有国家中国の台頭は、世界を予測不可能にする。それは一方では、中国指導部が安全保障政策上の目標を貫徹する際に用いている不十分な透明性のせいである。その上、中国が目指している多極的世界秩序は、基本的に不安定だということをヨーロッパの歴史は示している。にもかかわらず、指導部が呪文のように唱えている「平和的発展」というスローガンは、信頼に値する。熱い紛争が起これば、一番多く失うのは中国だ。中国は、一年間に600億ドル(7兆2000億円)もの直接投資の最大の受け入れ国である。戦争が始まれば、投資家は投資を止め、成長は停止する。中国は安定した世界を必要としている。北京は外交的利害を力を使わないで効果的に貫いている。中国は貿易相手国を巧みに互いに競争させ、多極的なフォーラムで経済的側面に全力を注いでいる。
2.1989年のように、大きな政治的反乱はあるか?
答え:殆どない。一党支配を揺るがせうるような大衆のデモや政治的不安はありそうにない。中国の市民社会には、組織的に政治的圧力を行使するための制度がない。都市の市民は、大多数が、基本的な体制の変革に関心がない。彼らは、党が保証した経済のブームから利益を得ている。何千万という不満で貧しい農民や出稼ぎ労働者は、独裁政治にとって潜在的な危険である。公式の数字によると、2005年には、農村で、8万7千件の地方的な暴動が起こった。2006年にはその数は、20%減った。だが、それは非常に疑わしい。厳格な統制のために、1989年の天安門事件のような運動は、起こりえなかった。
3.中国は、民主国家になるか?
答え:さしあたりは、ならない。温家宝首相によれば、中国は少なくとも100年間、社会主義体制を維持する。だが、専門家達は、別のシナリオが可能だと考える。1)指導部の中の進歩的勢力が意志を貫いて、上からの民主化を導入する。かってのソビエトのように。
2)経済的発展は、政治的決定に参加したいと望む市民層の形成を促進する。このプロセスの終わりに、複数の政党と自由な選挙をもった民主的体制が成立する。これらの可能な展開の萌芽は存在する。それらの発展に対して、にもかかわらず、安定した一党独裁が存続する。
4.国家が崩壊する危険はあるか?
答え:どちらかといえば、ない。中国の巨大な諸問題は、ペシミスト達に国家が間もなく崩壊するだろうと予言させた。事実、金持ちと貧乏人との二分化は、劇的である。都市住民は、平均して、8億人の農民の五倍稼いでいる。2億人の出稼ぎ労働者は、職を求めて豊かな沿岸部へと移動している。一人っ子政策は、彼らが豊かになるよりも早く中国を老化させるだろう。腐敗は、国民経済の15%を食い尽くしていると「国際透明性研究所」は、見積もっている。これらのリスクに対して、党の経済的成功が対立している。それによって、党は、それ自身の支配を正当化し安定にしている。
5.ヨーロッパは、中国の経済奇跡にゆえに、自分の福祉が脅かさされると心配しなければならないか?
答え:心配しなければならない。中国の経済的台頭は、ヨーロッパにとっては、祝福であると同時に脅威である。中国は、確かにわれわれの商品を買うが、もっと沢山売っている。米国についてと同様、ヨーロッパの対中貿易赤字は、増大している。(2005年には、赤字額は、1300億ユーロ(19兆5千億円)だった。これは、何百万もの中国人にとっては仕事があり、貧困からの解放を意味した。だが、ヨーロッパは、不利な状況に陥らないためには、競争力を維持するように急がねばならない。低賃金領域では、西欧は中国と競争できない。だが、サービス部門やインノベーションでも極東は追いつきつつある。欧州委員会によると、中国の国内総生産に対する公的私的研究開発への投資比率は、2010年には、欧州連合よりも大きくなるだろう。(以下省略)
[訳者の感想]『ヴェルト』紙の特派員キルスティン・ヴェンク記者の記事です。
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「共産党幹部から、環境保護論者へ」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年02月25日 | 中国の政治・経済・社会
北京市の西北にある自分の小さな住まいの窓から外を見るたびに、リウ・ダシャンの目に入るものは余りない。今週も、よりによって中国の春節に、そいつはいた。つまり濃い霧である。「目の前の自分の手が見えないのよ」と54才の母親は言った。多くの北京市民と同様、彼女はどうしても必要なときにしか、外には出ない。出るときはマスクを付ける。
というのも、視界を遮っている雲は、激しいスモッグなのだ。
何ヶ月も前から、リウは、普通の排気ガス以外には何もこの霧には含まれていないのかどうかについて思いをめぐらしている。国家のメディアは、地球温暖化についていろいろ報道している。それはチベットの氷河を溶かしている。それは川や海で水量を増やしている。それは、北京の160年間で一番暖かだった異常に暖かい冬にも責任があるかもしれない。この穏やかな気候が霧の発生に好都合だった。「これは、不安にさせるわ」とリウは言う。
共産党指導部もそう考えている。3月5日に開かれる全人代の会議でも、環境というテーマは、温家宝首相の報告の中で大きな場所を占める予定である。それどころか、四月末までに、政府は「国家気候保護計画」を提出する予定だ。それはこれまでの態度の転換である。中国は、確かに「京都議定書」に署名はしたが、その低開発国という地位に固執した。先進工業国とは違って、それは炭酸ガス排気量の減少を義務づけられてはいない。
だが、北京の指導部は、京都で約束した以上のことをするつもりだ。中国は、既に炭酸ガスの排出量では、世界最大であり、二酸化硫黄の排出量では、世界第二位である。中国は、責任を取ろうとしており、その環境政策をこれまで怠ってきた分だけ拡大しようとしている。つまり、気候保護を拡大しようとしている。この計画は、三年以内に、気候に有害なガスを減らすために、党幹部に法的指針を提出する予定である。
「気候変動についての国連報告は、政府の注意を引いている」と「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の認識について、気候局長のチン・ダヘは言う。その原文では、「ヨーロッパや米国の政治家や市民と同様、われわれは目覚めた。これまで自然を犠牲にして経済成長を追求してきた中国で、新たな革命が、気候保護のための革命が始まった」と書かれている。
国連の研究者達は、地球温暖化が個々の地域にどのような影響を及ぼすかを詳しく示した。今まで以上に旱魃や洪水があるだろう。僅かな資源の不平等な配分のために、北の砂漠化と南の大量の流水のせいで、世界中で一番多い人口13億人の国家は、特に気候変動に対して敏感である。揚子江と珠江の三角州にある人口が集中した沿岸地域と工業地帯は、海中に水没するかもしれない。何百万もの人間が家を失うだろう。気候変動は、「調和ある繁栄」への途上にある中国を数十年後退させるかもしれない。(以下省略)
[訳者の感想]これまで環境問題を無視してきた中郷政府も今度の国連報告を見て政策を大転換するようです。石油の消費量や排気ガスの排出量を減らすように努力するでしょう。
筆者は、『ヴェルト』紙の東アジア特派員のキルスティン・ヴェンク記者です。
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「中国は、頭脳流出を憂慮」と題するドイツの『ネット新聞』の記事。

2007年02月18日 | 中国の政治・経済・社会
特にヨーロッパ諸国でこの現象はよく知られ、文句が言われている。それは高等教育を受けた若い人たちが、彼らに自国よりもよい労働条件が提供される外国に流出する現象である。例えばドイツ人医師は、スカンジナビア諸国やスイスに引っ越している。だが、このいわゆる頭脳流出は、その間、そんなことが考えられなかった国々で起こっている。例えば、中国は、高度の資格をもった頭脳の流出に悩んでいるのだ。
『中国日報』の報じるところによると、北京にある「中国社会科学院」は、そういう認識に到達した。2002年以来、毎年約10万人の中国人が外国で勉強するために、海外に渡航する。だが、そのうち三分の一も帰国しないのだ。2005年には帰国者の数は、3万人と把握されている。2003年には、帰国者の数は、2万人だった。
頭脳流出は、中国では、世界中のどこよりも酷いといわれている。ヨーロッパや米国やオーストラリアが、中国人が一番残留したがる場所である。「専門家をどうしても必要としている中国にとって、これは大きな損失である」とこの研究報告書の著者であるリ・シャオリは言った。彼は、国が彼らに沢山金をつぎ込んだのに、多くの資格のある人々が移住してしまうことを嘆いた。
勿論、リは、頭脳流出の中に中国の世界市場への統合が進んでいることを見ている。それゆえ、ある程度の進展は不可避であると彼は言う。「先進国での比較的高い収入は、後進国からの移民を引きつけている」とこの専門家は述べている。「多くの先進国は、低い出産率と人口の老化とを示しているから、中国からの移住者がその隙間を埋めているのだ。」
 2005年に出されたこの研究報告によると、30万人以上の高等教育を受けた中国人が、外国で、高度の資格を要求する職業に就いている。北京大学経済学教授ヤン・カイジョンは、頭脳流出についての憂慮は、行き過ぎていると思っている。中国は移住者からも大きな利益を得ていると彼は考えている。
 2005年度の「世界銀行」の報告書によると、中国は「離散効果」を感じている。人民共和国と中国人が人口の1%以上住んでいる国々の間の貿易量は、2005年以前よりも60%増大した。
けれども、ヤン教授も、母国の労働市場を外国にいる中国人専門家にとってもっと魅力あるものにするように、政府に要求している。いずれにしても、外国から帰国する企業家に対しては、低利の融資が用意されている。この報告によると、約3500万人の中国人が、世界150ヶ国に分かれて住んでいるそうだ。
[訳者の感想]華僑は単純労働をする人として海外に出て行ったが、今や中国人の頭脳労働者が引っ張りだこになっているようです。
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「石油が大事である場合には、中国にとって人権はどうでもよい」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年02月07日 | 中国の政治・経済・社会
ベルリン発:「自分は一種の『アフリカの再植民地化』を憂慮しながら、見ている」とセネガルの作家でジャーナリストのアダマ・ゲイエは、最近『南ドイツ新聞』とのインタービューで述べた。けれども、彼の非難はアメリカ人やヨーロッパ人に向けられたものではない。アフリカを経済的に支配しようとしている勢力、アフリカを「資源の倉庫と売り込み市場としてのみならず、外交的訓練場としても利用している勢力とは、中華人民共和国である。
 それと同時に、民主主義的原理や人権の確立に対する要求のようなアフリカ大陸に対するヨーロッパの望ましい影響が消えつつあると、ゲイエは、アフリカにおける増大する中国の参加について彼がフランスで最近出版した本の中で述べた。問題は、中国が自分自身の国民を搾取し、国民の一部に対して公然たる戦争を遂行している政権のために、その経済力を投入している点である。
 そういうわけで、中国は、スーダン西部のダルフール地方で数十万人を殺し、数百万人を隣国へ逃亡させた責任のあるスーダン政府を支持している。国連の安保理で拒否権を行使することによって、中国は数年前から、ダルフール地方に住む黒人を保護するための国連の効果的な処置を妨害している。ダルフールの黒人達は、スーダンの首都ハルツームにあるアラブ人が支配する政権によって迫害されているのだ。
 結局、最近のアフリカの八ヶ国訪問の際に、胡錦涛中国主席が国連の平和部隊をダルフール地方に派遣することを承認するようにカルツームの政府に働きかけるだろうということに国際社会の希望が懸かっていた。中国は、紛争当事者の間の対話による解決に決定的な役割を演じるつもりだと先週、胡錦涛の出発前に、中国外交部は述べた。
 それがどれぐらい真剣なものであったかは、先週金曜日の胡錦涛のハルツーム訪問の結果が示している。彼とアル・バシル・スーダン大統領とは、総額数百万ユーロに達する協力協定を結んだ。特に中国政府は、スーダンにおける1,600キロに及ぶパイプラインの建設と産出量の半分の原油の買い取りと、密接な友好関係の印しに、新しい大統領宮殿の建設を約束したのだ。
 腐敗し犯罪的な政権に対する中国の寛大さは、それなしには、大陸の経済的政治的発展に対する見込みが失われる良いガバナンスの原理を打ち立てようとするあらゆる試みを駄目にする。中国が、むやみに前提条件なしにジンバブエのロバート・ムガベ大統領のような独裁者に金をばらまくことによって、このような政権を孤立させ、あるいは譲歩を強いる国際社会のあらゆる努力は無駄になり、大陸の民主的発展のための努力を後退させるのだ。それは決して、他の国々がこの分野で模範的に振る舞ったということを意味しない。だが、米国がこれほど開けっぴろげに、無反省に窃盗癖のある政権と協定を結び、公然たる民族虐殺を犯しているスーダン政府を支持すると想像するが良い。しかし、中国の場合は、殆ど誰の関心も引かないのだ。グローバリゼーションの批判者の国際的運動の興味も引かないのだ。
 問題は、北京がこの無責任な外交政策を近視眼的な経済的利己主義からやっているのか、それとも中国指導部がそれで長期的な力の政治的戦略をしているのか、ということである。中国が数年来、大量に軍備拡張を行い、人民解放軍の防衛的な構想を投げ捨てたということ、宇宙空間においても軍事的に地歩を固めようと努力し、台湾に対して脅迫的な態度をとり続けているということは、われわれを不安にする兆候である。(後省略)
[訳者の感想]筆者は、ヴェルト紙の常連寄稿家リヒャルト・ヘルツィンガーです。
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「中国の検閲:豚、チベットに対する同情、政府に言及は、すべて禁止」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2007年02月03日 | 中国の政治・経済・社会
 私が検閲というテーマに初めて注目したのは、私の学生時代だった。私は北京の「友好書店」で、2001年2月22日号の『エコノミスト』をぱらぱらめくっていた。35ページに載っているはずの「北京のオリンピック入札」という表紙に予告された記事を見つけることができなかった。というわけは、35ページ全部が欠けていたからである。そのページは、カミソリで綺麗に切り取られていたのだ。
何時ある記事が切り取られるべきだと誰が決定したのか?私の頭の中には大きな広間が思い浮かんだ。そこでは数百の机に向かって、田舎の出稼ぎ労働者の顔をした人間が、彼らには一言も読めない雑誌の35ページを切り取っているのだ。勿論、非常に注意深く。なぜなら、この雑誌の一冊の値段は、中国では5.5ユーロ(825円)し、それは、出稼ぎ労働者の一ヶ月の賃金の10分の1だからである。
 私の妻が今年の1月半ばに昆明市の「ハーバープラザ」という五つ星ホテルの一泊55ユーロ(8,250円)の部屋で、CNNテレビを見ていたとき、中国における検閲についてのニュースが始まった。すると突然、画面が真っ黒になった。20秒後、画像が再び映ると、ビキニを着た娘をインターネットから除去しようと構えていた中国のインターネット警察官とのインタービューだった。再びCNNのアナウンサーが画面にでると、画面は再び真っ黒になり、しばらくして次のインタービューが始まった。
 このような報道が、真っ黒な画面を見るよりも、もっと良い印象を与えるということを検閲官は考えることはできないのだろうか?このやり方は、視聴者の想像力を刺激し、CNNは、何らかぞっとさせる新しい事実を報道したのだと思いこませる。
 今年の1月15日に「ラジオ自由アジア」のニュースで、「中華人民共和国中央政府」という句が「中国電視台」では「敏感な文句」に格付けされたということを読んだとき、検閲に対する私の疑問は、さらに増大した。この概念を検索すると、「新しいニュース検索サービスしか与えない」と表示された。中国のインターネット利用者のがっかりし、憤慨した顔を想像することができる。
 私と妻は、サッカー世界選手権のベストエイトのチームのテレビ中継を見るために、ドイツ料理店「シンドラー」に中国人の友人を招いた。そこでは、競技は、二つのスクリーンで放映されていたあ。一つは中国国営テレビ局で、もう一つは、衛星中継されたイギリスの放送局の映像だった。ゲームが始まると、私たちは中国側の放映が、イギリスのテレビ局よりも30秒遅れているのが分かった。検閲者は、中国に敵対的かチベットに友好的な表現を削除するために時間が必要だったのだ。このことは観戦気分を損なった。なぜならば、部屋の別の側では、「オーッ」という声が聞こえていて、30秒後にはバラクがシュートすることが既に分かっているのに、別のテレビに向かってバラクを激励しようとするのは意味がないように見えた。国営テレビが何を「同時放映」として放送しているかを確認しなければならなかった中国人の友人にとっては、一層気分を損なうものとなった。
 中国の伝統的な暦では、今年、2月18日に豚年が始まる。現在、国営テレビのコマーシャルで豚を表現することは、1,800万人いるイスラム教徒と「民族対立」に対する配慮から、禁じられている。民族的緊張を避けるには、ウイグル人のモスレム少数派が居住している新彊ウイグル自治区にもっと少ない漢族を移住させ、もっと少ない鉱物資源を掘削し、より多くの未成年者にモスクへの立ち入りを許す方がましだろうと私には見える。あるいは、ひげ面の男達をもっと沢山国家のサービス、例えば教師に採用するほうがましだと思える。
このような改革を提案することは検閲官の任務ではない。だが、すべての中国人は、家や商店のドアに豚の絵を貼り、スーパー・マーケットや、カレンダーや年賀状、贈答品の包装紙は、豚の絵で溢れているから、テレビで禁止する意味は、直接的には分からない。もっと興味があるのは、この規則によって、「中華人民共和国」政府のウエッブサイトでは、豚の絵は見られないということになるのかどうかという疑問である。
[訳者の感想]この記事を書いたカンテルハルトは、中国政府の検閲制度のおかしな点を鋭くついているように思われます。
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