海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「中国の惰性は、緑の革命を遅らせる」と題するジョナサン・ワッツの解説

2007年03月06日 | 中国の政治・経済・社会
 温家宝首相は全人代における年次報告で環境についての覚醒を口にしたが、中国の政治が改革されるまでは、この問題には留意されそうもない。
 この国の歴史で最も環境に配慮する首相という評判を肯定することによって、温家宝首相は、全人代に集まった代表達に、この国がエネルギー効率と汚染の低減を改善しなければ、中国の成長は持続不可能であると警告した。
 このメッセージは、よく知られているが、それにこのような重要さが与えられたことはこれまでなかった。米国大統領の年頭教書にたとえられる年次報告の冒頭に環境を置くことによって、温家宝首相は、国民の注意をその「経済的奇跡」の持つ最悪の帰結に引きつけた。
 勿論、社会的不平等・農村暴動・腐敗・教育・健康・台湾のような差し迫った争点への言及もあったが、---これらの争点は、初日の全人代に対する開会演説では支配的であったのだが、---最も鋭い自己批判は、環境目標に対応するのに政府が失敗したことに向けられた。
 「われわれはエネルギーを保存し、エネルギー消費を減らし、環境を保護し、土地を集中的に利用することを、経済成長のパターンを変えるための主な支えにしなければならない」と彼は開会演説で述べた。
 「国家は、環境汚染をコントロールし、環境を保護するために、非効率で不潔な動力施設や鋳物工場を閉鎖するだろう」と彼は言った。
 代表団は熱烈にと言うよりは礼儀的に拍手した。温家宝はそれに慣れている。話し手としては、彼のもっとも推奨できる性格は、聴衆に彼らがどちらかと言えば聞きたくないことを言う積極性である。
 首相の警告を裏付ける証拠は十分ある。北京は世界中で最悪の大気汚染問題の一つである。中国の河川の70%は、汚染されている。中国南部では、ヒマラヤの氷河は溶けつつある。北部では、浸食する砂漠が、4億人の生活を脅かしている。
 ある国が切迫した環境の崩壊に直面しているとしたら、それは中国である。けれども、この国は、世界中で最も効率の悪い経済の代表である。それは国内問題ではなく、地球の温暖化にインパクトを与え、ますます少なくなっている資源にインパクトを与えている。中国の環境問題は、その軍隊よりももっと大きな脅威を与えていると言えるかもしれない。昨日、中国はその軍事費を2007年度は17.8%増やすということを明らかにした。
 温家宝首相は、中国の経済をより環境に優しくしようとすることで、「世界野生動物基金」や「グリーンピース」のようなグループからは拍手喝采されるのはもっともだ。だが、変化に影響を与える彼の力は限られている。経済成長をコントロールすることになると、この権威主義的な国家には、権威が欠けている。
 今日、温家宝は、今年の成長目標を8%にすると宣言した。それは、2006年度の10%の成長率に比べるとかなりのスローダウンである。この冷却が達成されるかどうかは、別の問題だ。近年、政府の見積もりは拡大の本当のペースよりも下回っている。
同様に、排出や無駄を減らすための国家の環境目標は楽天的すぎることが証明された。両方の場合に、問題は、環境により焦点をおくという温家宝の誓いにもかかわらず、中央政府と地方政府の優先は、ビジネスと仕事を促進することである。
温家宝の演説には抜けている政治的改革に少なくとも一部は責任がある。民主的な責任負担がないから、共産党幹部と官僚という支配階級は、貧しい生活環境に苦しんでいる人々よりも、汚染する側に遥かに近い。
腐敗ともみ消しとは、まん延しており、普通、それらが大きな汚染排出の主たるファクターであることが分かっている。温家宝首相が本当に中国を綺麗にしようと欲するならば、彼は政治をより汚くしないことから始めるべきだ。
[訳者の感想]『ガーディアン』紙に載ったジョナサン・ワッツ記者の論説です。昨日訳した『ヴェルト』紙のキルスティン・ヴェンク記者の解説よりもずっと辛口だと言えるでしょう。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「中国の将来についての10の... | トップ | 「イエスと特殊部隊」と題す... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

中国の政治・経済・社会」カテゴリの最新記事