宝塚民話No.1-7 武庫川堤の狐
むかしむかし町村という呼び名が無く里とか郷という呼び方をしていた時のことです
武庫川の堤にはたくさんの狐や狸が住んでいてよく悪さをしては
里の人達を困らせていたそうです
ある夏の暑い昼下がり一匹の狐が暑さしのぎに水浴びでもしようと
武庫川堤の河原に降りて来ました
ちょうどその時 里のお役人が五人用があって向うの岸に渡ろうと
がやがやわいわい言いながらやって来ました
「チェッ邪魔しやがってせっかく水浴びしようと思うとるのに」
狐はとがった口をもっと突がらせドロ ドロ ドロンとアッという間に姿をかくしてしまいました
お役人達ははしゃいで 「カンカン照りの好い天気 川は浅いし ぬれて歩くのもなかなか気持ちが良いものじゃ」
五人はそれぞれにジャブジャブと川を渡り始めました
ところが突然あたりがにわかにうす暗くなり川の水が増え始めました
「ありゃ これはどうした事だ 雨も降らんのに川の水が増え始めたぞ」
「ありゃ大変じゃ」五人はあわてふためきやあやあがやがや言いながら着物の裾を
高くからげて向こう岸を目がけて必死の思いで走りました
ところがいくら走っても向こう岸には一向に近付きません おまけに水かさは増すばかりです
「助けてえこのままでは溺れてしまう」 その時堤を通りかかった一人のお百姓さんが
ふと川の中を見ると五人のお役人が水も無いのに裾)をからげて同じ所を
行ったり来たりの大騒動
「ハハァン また狐の仕業だな」お百姓さんは笑いをこらえながら 「お役人衆しっかりなされェ」と
大声でどなったら五人のお役人はハッと気付き相手のしぐさを眺めてキョトンとしていたそうです
このような話はその頃ちょくちょくあったそうです
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