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救急医療 急性脱水症

2012年08月03日 03時29分56秒 | 講義録・講演記録4

救急医療 急性脱水症

名古屋大学大学院医学系研究科

救急・集中治療医学分野

松田直之

 

基本知識

 急性脱水症は,急激な水摂取低下や水消失により,体内水分量の減少した状態です。脱水では,病歴から原因を検索することが大切であり,水分と塩分の摂取状況を把握することが必要です。
 急性脱水症の病態は,塩類消失の有無により,大きく① 高張性脱水,② 等張性脱水,③ 低張性脱水の3つに分類しています。一般に,水摂取低下で血清ナトリウム(Na)濃度が上昇しはじめると,細胞内より細胞外へ水が移動して細胞内脱水となります。このような状況では,視床下部の浸透圧受容器を介して口渇感と水摂取を促されますが,人工呼吸管理や意識障害を伴う場合には水補充の不適正により高張性脱水が導かれやすいです。一方,等張性脱水や低張性脱水では,バソプレシンやアルドステロンの分泌亢進により,腎における水再吸収が促進され,尿が濃縮される傾向があります。
 このような状況において,水摂取低下の原因としては,① 意識障害,② 悪心,③ 消化器症状などによる経口摂取不能や水分制限が挙げられます。一方,腎性水喪失の要因としては,① 多尿,② ループ利尿薬,③ 浸透圧性利尿薬,④ 塩類喪失性腎症,⑤ 鉱質コルチコイド分泌低下などを評価します。さらに,腎以外の要因による腎外性水喪失の原因としては,① 嘔吐,② 下痢,③ 全身性炎症に伴う血管透過性亢進病態,④ 消化管浮腫,⑤ 低蛋白血症,⑥ 胸水,⑦ 腹水,⑧ 発熱の推移などを評価します。
 脱水の臨床症状は,① 皮膚や舌の乾燥,② 眼球陥没,③ 頻呼吸,④ 尿量の低下と尿比重の上昇です。脱水が進行すると,循環血液量が減少し,意識低下やショックを認めます。血液・生化学検査では,血清Na濃度,血清カリウム(K)濃度,血清クロール濃度,血清総蛋白,血清アルブミン濃度,BUN,ヘマトクリット値,さらに血液ガス分析でまず,貧血,代謝性アシドーシスの進行と血中乳酸値の蓄積を時系列で評価して下さい。

輸液例

 循環血液量の減少を認める場合は,細胞外液液を点滴静注します。経口摂取が使用可能であれば,経口補液(ORS:oral rehydration solution)の投与を検討してください。

1. 高張性脱水でない場合
1)ヴィーンF注 500 mL 点滴静注
2)ビカーボン注 500 mL 点滴静注
3)生理食塩液 500 mL 点滴静注
 開始時の輸液スピードは,バイタルサインに応じて決定します。必ず呼吸数を時系列でチェックし,カルテに記載を残すようにして下さい。尿量 0.5 mL/kg/時以上が得られることを目標とします。

2.高張性脱水の場合(Kフリーの選択)
1)ソリタ-T1号注 500 mL 点滴静注
2)5%ブドウ糖液注 500 mL 点滴静注
 まず,上述の液を初期輸液剤とし,① 利尿がつくこと,② 高カリウム血症でないことを確認します。急性脱水症や大量の輸液量を必要とする場合に,急激な血糖値上昇の可能性があるために,血糖値を評価し,ヴィーンF注 やビカーボン注などの併用も考えます。

知っておくとよい注意事項

1.貧血および輸液量に対する注意
 パルスオキシメータ波形の呼吸性変動が強い場合は,脱水を示唆する所見です(救急一直線 講義 パルスオキシメータおよびA-lineの圧波形の読み方)。意識・呼吸・循環,バイタルサインに異常が認められる急性脱水症では,特に非侵襲的気道確保と輸液に注意して下さい。この際に,貧血の程度をいち早くアセスメントして下さい。基本的にはまず,リンゲル液や生理食塩水 1 Lを15分程度で投与し,バイタルサインの改善を初期目標とします。この際には,必ずパルス波形をチェックして下さい。また,貧血(Hb<7 g/dL)における急速輸液は,極端なHb低下,酸素運搬低下,心肺停止を導く可能性がありますので,赤血球輸血を念頭において対応して下さい。

2.高齢者・心機能異常・低栄養を伴う場合
 高齢者や,心機能異常,弁疾患,および低栄養を伴う場合には,急激な輸液負荷により肺水腫,胸水,および腹水が増強する場合があります。心エコー検査を時系列で施行し,急速輸液に慎重に対応します。

3. 意識障害における対応:脱水と高ナトリウム血症
 意識障害を伴う高度の高張性脱水では,細胞外液量の補正とともに,バゾプレシン分泌低下や浸透圧利尿薬の使用状況を評価すると共に,これらを踏まえて,高Na血症の是正が必要となります。このような場合,血清Na濃度の低下速度が0.5~1 mEq/L/時程度となるように補正します。

4.低Na血症を伴う急性脱水症
 低Na血症を伴う急性脱水症では,Naの腎性喪失を評価すると共に,尿中のNaとK濃度の評価が必要です。尿中(Na+K)濃度>血清Na濃度の場合には,細胞外液輸液のみでは低Na血症が進行することに注意します。

5.尿浸透圧・尿中Na濃度の評価
 腎外性喪失の場合には,腎機能が正常であれば尿浸透圧は450 mOsm/L以上,尿比重は1.015以上に注意します。また,Na排泄率(FENa=尿中Na濃度/血漿Na濃度)/(尿中クレアチニン濃度/血漿クレアチニン濃度)が1%以下であれば腎外性喪失の可能性があります。

救急科専門医や上級医への紹介のタイミング

 意識低下,呼吸数>30回/分 あるいは < 9回/分,頻脈,血圧低下を認める場合は,生命に危険を伴う緊急性の高い状態であり,病棟で入院対応せず,救急・集中治療の専門医にコンサルトするとよいです。

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