インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

『ワイルド・ソウル』(上) ~アマゾン移住者~

2009-09-15 21:56:22 | 映画や小説、テレビなど
 テレビが視聴率を気にするように、ブログはアクセス数を気にする。昨日は閲覧数:492PV 訪問者数:143IPで、昼ごろ猛烈にクリックされたようだ(面白かったですかねぇ)

 さて、先週からずっと読んでいるのが大藪・吉川文学・推協賞の三冠を受賞した『ワイルド・ソウル』であるが、なかなか面白い(今下巻突入)。

 
ワイルド・ソウル〈上〉 (幻冬舎文庫)
垣根 涼介
幻冬舎

詳しく


 二段並べのハードカバーより、文庫本の方が読みやすいようだ(特に下巻からスラスラ読める)。犯罪系のハードボイルドで、徹底的な調査でリアルに描いており、桐野夏生を髣髴させる(過去のトラウマやら偽造パスポートや麻薬が出てきて『ダーク』っぽい)。

 南米の都市やら風俗、麻薬、銃や車などについて詳しく、日系ブラジル人のシンパであるように思われる。

  戦後、まだ日本が貧しかった頃、日本で移民政策があり、あまり世間に知られていないが、外務省に騙されて酷い目にあった人々が4万人以上(ブラジル)いたようだ。ドミニカへの移住政策では、訴訟すら起こっている⇒ドミニカ移民の悲劇救済に感じること(依存症の独り言)

  まさか日本が凄まじい高度成長期を迎えるとは思っていない時期で、「狭い日本で豊かになるにはアマゾンへでも行くしかない!」と思った人々も多かったのだろう(国が素晴らしいと宣伝していたし)。

  日本は生温い環境だから(北海道等を除く)、アフリカや南米が如何に恐ろしいか想像力を働かすしかない(ウイルスを甘く見ていたら…)。著者も、アマゾンの中では、ヒト一人の命など明らかに軽いと繰り返す。

 中には特殊な人もいるが(『ジャングルに乾杯』)。実際、プラス思考に生きた人もいるかもしれない。インディオに混じって踊り、麻薬でもやって精霊世界に生きたとか…(同じモンゴロイドだからすぐに仲間になれそうな)。だが、現実はマラリアや毒蛇でそれどころではないか??

 そもそも、アマゾンの開拓など農地に適していないので、現地人は始めからやらない。それを…。作者も現実を視たり、資料を調べたりするうちに、怒りがこみ上げて来たものと思われる(それがモチーベーション)。

 おれたちは棄てられた民だ。そもそもこのアマゾンへの移民事業自体が、戦後の食糧難時代に端を発した口減らし政策だったのだ。国と外務省が推し進めた棄民プロジェクトだったのだと。
 このペテン師、人殺し野郎――。


  気づいた時は、戻る金もなく、送金を頼んでも仲介業者が使い込み(ゲートウエイ21と全く同じ!)、ただ路頭に迷うしかないわけだ。

 …ろくに現地調査も行わないまま、現地政府といい加減な取り決めを交わし、蜜の誘い文句で移民者達を未開の地に放り込んだ後は、知らぬぞんぜぬを決め込む。

 いったい中南米全体でどれほどの人間が路頭に迷い、虚しく土くれと帰していったのか。めまいを通り越して吐き気さえ覚えた。


  国家やら政府を信じてはろくな事にならないのであろう(戦前も、戦後も)。この世は、人間のアタマ、理性の力を越えたところにあるのではないか。

  アマゾン移住者の謙虚さが必要ですアマゾンに夢を託してより

  「(アマゾンでの迷子)…この時、私が入植時味わった恐怖感を一瞬で体験し、出れなかったらどうしよう、死んでしまうのではないかと生まれて初めて死を考えるのです。しかも日本では怖い物が何も無かった青少年がどうする事も出来ず、自分の力の弱さ、小ささを知り、偉大な自然の前では手も足も出ない、動く事さえ出来ぬ弱い人間だと学ぶのです。大声で泣き叫び恥も外見も無く助けを求め約30分、私と別れた所に戻り、座り込み顔の表情が変わって来ます。何とか生きようと決意するのです…」

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