インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

悩める戦士

2014-01-06 21:40:26 | カスタネダ『呪術の実践』 !
 雅太はクリーニング店に寄って、ビニールで大げさに包まれた代物を車の中に入れておく。明日返却する予定だったが、ビニールを引き裂き、再び着て過ごすのを想像しながら、夕食を食べ始めた。雅太はブログに今の心境を綴るわけである。

 突如退職届を書いたということは、傍目には、疲れが相当たまったとか、不平不満が限界まで来ていたとか、寒さで気が動転していたのだろうとか、それぞれが推理・憶測をしているに違いない。実際、そんな感じで、雅太の上司も飛び出す直前までに記した日報、それを手掛かりに、「ひょっとしてあの時のミスが原因で…」とか考えているのである。

 だが、おっちょこちょいの雅太はいちいちミスなど気にするタイプではなかった。本人は勝手に、呪術師の世界がどうの、破壊点がどうの、人生の連続を断ち切らねばならないとか、異常な強迫観念に憑かれていたのである。まさか雅太が古代メキシコの教義を実践し、それを深めんがために、全てを断ち切ろうとしていたのだとは、周囲が知るはずはない。

 結果は失敗に見えたが、ある意味、自分自身を揺さぶった、つまり「忍び寄りの術」という点で、雅太は少しは成功だったと思ったりした。ただ、集合点の移動を、憐みのない場所にまで持っていくことが出来なかったのである。

 それにしても、雅太の行動の評価はどうだったのか。
 雅太のメル友は次のように意見した。「自分の置かれた環境、自分自身をしっかり知ることが出来て、自分がすべきことをちゃんと行動できるなら、どこで何をしていようとそれは実現する……」。

 なるほどと、雅太は共感した。結局どこへ行っても同じなのであり、呪術師、いや、戦士たらんとするものは、全てが挑戦なのであり、そこから逃げてはならぬのだろう。

 ちなみに、戦士の闘う相手は、自分自身のもう一つの心であり、それは外部から植えつけられた意識であるという。
 戦士の大目標は、内的沈黙で、夢見とかはその補助に過ぎないという。

 そうなると、雅太は、何か己自身が「戦士の道」から逸れているような気もした。大目標が、夢見、つまり「体外離脱」で、その補助として呪術の知識、内的沈黙とか反復とかを利用するわけである。こうやってブログを書きながら内的対話を繰り返していくということは。きっと、物書きになりたいのであろうが。戦士は利益のために行動するのではなく、精霊のために行動しなければならないわけで。

 雅太は戦略的に、自分自身を大いに見直さねばならぬと思うのであった。

  

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