インディオ通信

古代アメリカの共感した者の備忘録8年。

第2回 カスタネダ英文解釈教室

2014-12-18 09:37:23 | カスタネダ『呪術の実践』 !
  爆弾寒波で瀬戸内界隈も真っ白になっている。今朝はたまたま休日だったので助かったが、昨日は車が道路を泳ぐ恐怖も体験した。明日は、「頭痛か、車の故障で休もうか」と思うも、飼いならされている雅太は、そういう日こそ、忠犬な態度を示すかどうかが問われているのかな、と思ったりする。日本人は大概、自己犠牲の精神で、チェーンをしてでも、タクシーに乗ってでも、出勤するものなのだ。タクシーがなければ、何キロも歩いて、忠義を示すのであろう。そう、丁度この頃は、「忠臣蔵」の放映される時期であり、武士という名の「企業戦士」は命をかけて戦ったのである。

 一方、「呪術師」はそんなことをするのだろうかと思った時、「日常生活の型を壊す」というわけだから、良いチャンスだと思ったりするのかもしれぬ。イーグル、精霊に対してだけ忠誠を誓うわけで、給料のために働く普通人とは違うのだろう。ただ、どんな場所においても「挑戦だ」と考える彼らならば、「忍び寄りの術」として職場を遊ぶのかもしれぬ。

  忍び寄りとは何だっけ、雅太は『沈黙の力』を開き(209ページ)、意味がよくわからぬので、「The Power of Silence」原書も紐解き、第二回目の「カスタネダ英文解釈教室」が始まるのであった。

 5章 The Requirement of IINTENTより。

 まず、このintent であるが、カスタネダの書物では、キーワードであるので辞書を引いてみる。「意志、意図、目的、計画、決意、意思」となっており、さらに「intentionは意図を意味する普通の語、intentはそれよりも明確で、かつ入念に考慮した意図を暗示するやや形式張った語とあり、例文として、break into a house with an intent.(盗みの意図で家宅侵入する)となっており(笑)、どうやら人間の背後に君臨し、我々を操っている、我々に物事を見せている、イーグルの力、ということにでもなろうか。

  “Sorcerers,because they are stalkers,understand human behavior to perfection,” he said.“They understand, for instance,that human beings are creatures of inventory. Knowing the ins and outs of a particular inventory is what makes a man a scholar or an expert in his field,”

 「呪術師は忍び寄る者だから、人間の行動を完全に理解している」ドンファンは言った。「例えば、人間は目録の動物である、というふうにな。ある特定の目録に載っていることといないことを知ることが、学者になることだったりその道の達人になることだったりするわけだ」(真崎氏訳)

 「戦士たちは、忍び寄る者であるわけだから、人間の行動を完全なまでに理解している。その理解は、例えば、人間というのが目録の生き物である、というようなものである。ある特定の目録に載っていることといないことを知ることで、人は学者になったり、その分野の専門家になったりする」(北山氏訳)

 大方の読者は、この第一文「忍び寄る者」が分からない(笑)

「stalker=忍び寄る者」と訳して当然だが、「獲物などにこっそり忍び寄る=狩人」のイメージで、注意をひきつけたり、振る舞いを変えたり、呪術師は人間という獲物を狩ることができる、人間を呪術にかけられるということだろう。

  呪術師は人間行動というより、それ以前に、遥かに世界が何たるか、人間が何たるかを知っている。世界はイーグルであり、人間はイーグルの泡(放射物)であり、人間の注意力は、人間の泡の一部のみに向けられているということである。これが理性であり、第一の注意力である。それを深めていけば、頭でっかちの学者になれる、ということだ。

『意識への回帰』でも、「第一の注意力が、まゆの中にある、イーグルの放射物の一覧表を作っているのだ。人間は自分のまゆの中にある一覧表に注意を放っている」ような文章があり、inventory=目録となっているが(調べてみると「財産目録、棚卸表、商品目録、在庫品目録」とかなっている)、一覧表でもいいのではないか。そして「creatures of inventory」であるが、「目録の生き物」というのはどうか? of には「同格関係」という用法もあるので、「一覧表という生き物である」と訳すべきだろう。すると、「名称のない光の泡である存在(=人間)が」「学者になったり」「専門家になったり」と称せられるわけである。

 かくして、「呪術師(ストーカー)は人間のふるまいを完全に理解している。彼らは知っている、たとえば、人間存在が一覧表という生き物である、ということを。ある特定の一覧表に載っていることといないことを知ることで、その存在は、学者になったり、専門家になったりするのだ」

  さらに文章は続いている。

  “Sorcerers know that when an average person`s inventory fails, the person either enlarges his inventory fails, the person either enlarges his inventory or his world of self-reflection collapses. The average person is willing to incorporate new items into his inventory if they don`t contradict the inventory`s underlying order. But if the items contradict that order ,the person`s mind collapses. The inventory is the mind. Sorcerers count on this when they attempt to break the mirror of self-reflection.”

  普通の人間の場合、自分の目録にないものに出会うと、その当人が目録を増補するか、さもなくば内省の世界が崩れるかのどちらかだということを、呪術師は知っている。自分の目録の根底をなす秩序に矛盾するものでなければ、普通の人間は新しい項目をその目録に喜んでつけたす。しかし、その項目が秩序に反するものなら、当人の精神は崩れてしまうだろう。ここでいう目録とは精神のことだ。呪術師が内省の鏡を打ち破ろうとするときは、このことを計算に入れているんだ。(真崎氏訳)

  戦士は、並の人間の目録にかけているものがあるとき、その当人が自分の目録を増補するか、さもなくば、彼の内省の世界が崩壊するかのいずれかかだということを知っている。並の人間が新たな項目を自分の目録に付け足すことができるのは、それらが目録の基本的な秩序に矛盾しないことが条件である。だから項目がその秩序に矛盾する場合、その人間の頭の中は崩壊する。つまり目録とは頭の中のことなのだ。戦士たちが内省の鏡を打ち破ろうとするときはそのことを計算に入れる。(北山氏訳)

 寒さのため、雅太の足は氷付いていた。室温は8.7度。まだ耐えられるか? 過去にこういう例はあったか? まさに「一覧表とは、意識のことだ」。
 
 

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