遺跡という地味な文化遺産、その上広域に渡っていることから、観光面でも、地域づくりの面でも難しさを抱える世界遺産「北海道・北東北の縄文遺跡群」をどう生かしていくか、という課題について考えるシンポジウムに参加した。
昨日(7月31日)午後、札幌グランドホテルを会場に「北海道・北東北の縄文遺跡群」の「世界遺産登録1周年記念シンポジウム」に参加した。シンポジウムは4時間という長丁場だったが盛りだくさんの内容が詰め込まれたシンポジウムだった。その内容とは…、
※ 開会前の会場の様子です。
◆基調講演「世界遺産と縄文遺跡群の役割」
講師:北海道環境生活部文化局文化振興課 縄文世界遺産推進室 特別研究員
阿部 千春 氏
◆1周年記念イベント 「各地の喜びのメッセージ」
◆パネルディスカッション「縄文世界遺産 これからのまちづくりと文化振興を考える」
パネリスト:岩手大学 平泉文化研究センター 客員教授 八重樫 忠郎 氏
DENEB株式会社 代表取締役 永原 聡子 氏
田辺市熊野ツーリズムビュロー 事業部長 ブラッド・トウル 氏
斜里町地域プロジェクトマネージャー 初海 淳 氏
北海道観光振興機構 政策マーケティング部室長 生川 幸伸 氏
コーディネーター:阿部 千春 氏
※ パネルディスカッションの様子です。ブラッド氏はカナダからオンラインでの参加でした。
シンポジウムの趣旨は、高いハードルを超えて無事に世界文化遺産の登録が実現したが、 このことをどのように観光に結び付け、地域振興を図っていくか、という課題解決を模索する場であったと理解した。
阿部氏は講演の中で、「・北東北の縄文遺跡群」は高い精神性と工芸技術の巧みさが秀でていると強調された。さらには狩猟・採集・漁労という農耕を主体としない形での定住生活を可能とした特異性にも言及された。確かに学術的な面からは「北海道・北東北の縄文遺跡群」は評価される側面が大きいと言えるかもしれないが、そのことが観光や地域振興とどう結びつくのか、という点には大きな課題がありそうである。
その点について、各地で活躍する人材が登壇してパネルディスカッションが展開された。各地の実践例、成功例が提起され、それぞれが傾聴に値する内容を含んでいるように思えたが、リード文でも触れたように「北海道・北東北の縄文遺跡群」特有の課題がある。すぐに他の地域の例が応用できるとは言い難い難しさがある。ただ、1点光明が見えた。それは他でもない “人” ではないのか!ということだった。つまり地元の人、地域の人が、“おらが街の文化遺産” の価値や素晴らしさを知り、それを誇りに思い、他に発信していく、やがてはそのことが地域振興、観光振興にも繋がっていくのではないか、ということだ。
難しい課題かもしれない。しかし、難しいからこそ即効薬ではなく地道に本流を貫くことこそ、確かな地域振興に繋がっていくのではないか?そんなことを思いながら会場を後にした。
※ 会場入り口には「世界遺産登録証」の写し(?)が展示されていました。
明日から道南地方の縄文遺産を巡ってきます!
別にシンポジウムを聴いたからではないのだが、タイミングよく計画を立てていた。明日からは「北海道・北東北の縄文遺跡群」の構成遺産の一つになっている函館市の「大船遺跡」と「垣ノ島遺跡」を巡ってくる。残念なのは関連遺産となっている森町の「鷲の木遺跡」がクマ騒動の為に見学中止措置が取られてしまったことだ。何時の日か訪れる日が来ることを期待したい。
※ 北海道遺産の一つ「五稜郭」です。(写真はウェブ上から拝借しました)
同時に、道南地方(特に函館市)に存在する「北海道遺産」も何ヵ所かカバーしてくる予定である。その北海道遺産は「函館西部地区の街並み」、「函館山と砲台跡」、「五稜郭と箱館戦争の遺構」などである。収穫の多い道南の旅になりそうだ。