河崎作品は本作で3作目なのだが、前2作とは、読後の印象がやや違ったのだが、それは私一人だけの勘違いなのだろうか?
私にとって河崎作品の前2作とは、直木賞受賞作の「ともぐい」と、デビュー作の「颶風の王」の2作である。
その2作と比して、どうも今ひとつ読後の感想に差を感じたのだが、その因を考えてみたい。
前2作と「愚か者の石」の違いの一つに物語の背景の違いがあるような気がしている。前2作の「ともぐい」や「颶風の王」の主たる背景は道東である。さらに題材がかたや熊撃ち、かたや馬を扱う農家である。いわば河崎さんにとってはホームグランドにおいて物語が展開するために、河崎さんは縦横にペンを奮われた感がある。
それが本作においては、明治期の月形町の「樺戸集治監」という監獄の中が舞台である。河崎さんはかなり克明に取材を重ね、臨場感たっぷりに描写されているのだが、今ひとつ私の意表を突くような表現とか、展開は見られなかったかな?という思いを抱いた。
ただ、物語の後半の後半において、意外な展開に導いていくところは流石に河崎流である。私が河崎作品に接したのはまだわずかの3作である。河崎作品を云々するのは早すぎるのかもしれない。
積極的に河崎作品に当たっていきたいと思っているのだが…。