田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

吉村昭に嵌まったかも?

2022-02-07 16:28:33 | 本・感想

 今さらながらの感はあるものの、私は吉村昭本に嵌まった感じがある。とあるキッカケで吉村の著「間宮林蔵」を手に取った。するとこれが面白かった。続けざまに「破獄」、「戦艦武蔵」と読むにいたって、私は今吉村昭に夢中になりつつある。

 それほどの読書家とは言えない私だが、まあそれなりには読書に親しんでいるつもりだ。昨年は私が所属する「めだかの学校」で藤沢周平原作の映画観賞を連続的に取り上げたこともあり、集中的に藤沢周平本を読み進めた。ところが大量に藤沢周平の短編を読み進めたことで、私の中にある種の “飽き” が漂い始めた。

 私は藤沢本のほとんどを安価なBOOK○○で買い求めていた。昨年末のある時、藤沢本の近くに陳列されていた吉村昭著の「間宮林蔵」が目に入り、吉村というよりも間宮林蔵に興味があって買い求めてみた。

         
 するとこの「間宮林蔵」が面白かった。間宮林蔵という人物自体が非常に興味深い人間なのだが、その間宮林蔵の樺太探検の様子をまるでその間宮に寄り添っていたかのように、あるいは間宮自身になり替わったかのような筆致に私は夢中になってしまった。

 夢中になった私はすぐさまBOOK○○へ出かけ「破獄」「戦艦武蔵」を買い求めた。

「破獄」は4度の脱獄を繰り返し「昭和の脱獄王」とも称された実在の白鳥由栄をモデルにした小説であるが、この作品もまた吉村の筆が冴えわたった作品の一つと評価されている。特に網走刑務所の脱獄に関しては、博物館「網走監獄」を観覧し、彼が屋根を伝って脱獄するシーンが再現されているところを見たこともあり、非常に興味深く全編を読むことができた。

        

 一方「戦艦武蔵」も吉村の代表作品の一つとされているが、私には前記二つの作品とは微妙に異なった印象を抱かせてくれた作品である。というのも作品は戦艦武蔵の建造期のことを精緻に書き進めた話が大半を占めていたことによる違和感だった。もっとも戦艦武蔵は太平洋戦争においては、戦争の形態が戦艦主体の戦争から航空機主体の戦争に切り替わっていった時代で、満を持して建造されたにもかかわらず大きな戦果も挙げぬまま撃沈されるという悲惨な運命を辿ったことによるのかもしれないが…。

        

 ただ、私が抱いた「間宮林蔵」、「脱獄」と「戦艦武蔵」の違いについて、吉村自身が次のように語っていたとある解説から知ることができた。そこで吉村は次のように語っている。「記録を肉付けさせる証言を求めて書く『戦史小説』に息苦しさに似たものを感じ、事実の拘束性に苦痛を感じるようになった。それに対して、『歴史小説』の方がはるかに自由で創作的で満足感を得られる」と述べたと言われる。

 この吉村の言葉が、私が抱いたことと通じているのかもしれない…。とは言いながら、吉村はその後も「戦艦武蔵」のような『戦史小説』も何本も手掛け、当時まだ確立されていなかったいわゆるノンフィクションの分野においても先駆者としての役割を果たしているのである。それらについては、これからもっともっと吉村の作品に触れることによってそのあたりの違いについて考えてみたい。

 私はその後も吉村作品を買い進めているが、今最も読みたい吉村本は北海道苫前郡の開拓部落で住民7人を食い殺し、3人に重傷を負わせた「三毛別羆事件」をモデルにした、彼の代表作の一つでもある「羆嵐」である。ところがこの本だけは何度BOOK○○に出向いても書棚から見つけることができない。おそらく人気本なのだろう。だから私はこの作品だけは市の図書館から借りようと思っている。「羆嵐」を読み終えた時には また吉村昭についてレポしてみたい。

《北京冬季五輪寸評》

 本日のトップの話題は何と言っても男子ジャンプノーマルヒルでの小林陵侑選手の金メダルでしょう。彼のどこか飄々とした競技に臨む姿勢が好結果に繋がったように思われます。もちろん自力があってのことですが…。

 さらにはフィギア団体で初の銅メダルを獲得したこともアッパレでした。その他、スノーボード、クロカンスキー、アルペンスキーと選手たちは善戦していますが、残念ながら世界のトップクラスとは少し差があるようです。

 今夕はスピードスケート女子1,500mに期待の高木美帆選手が登場します。有力な金メダル候補の高木選手の健闘を祈りたいと思います。



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2 コメント

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吉村昭 (しろまめ)
2022-02-07 21:41:57
「戦艦武蔵」は面白かったですね。
事実は小説より奇なりといいますが、史実の小説は面白いなり!
戦前戦後を通じて日本という国が持つ通弊が読み取れる部分もあり、戦前の日本人が痛々しいほど「お上」に従順だったことが伺えます。いや、従順だったというよりは恐怖支配だったのでしょうけれども。

そして吉村昭なら、以前にもご紹介した「赤い人」をぜひ!
戦史ものなら「海の史劇」が圧巻です!
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しろまめさんへ (田舎おじさん)
2022-02-08 19:22:53
 続けてのコメントありがとうございます。
 「戦艦武蔵」ねぇ~。私とはちょっと違った感想でしようか?
 「戦艦武蔵」も精緻に史実を筆写していることには感動を覚えましたが、私は本文でも触れているように「間宮林蔵」や「破獄」の方により感動しましたが、まあ感想は人それぞれでしょうね。
 私の吉村歴はまだ浅いのでこれから読み進めながらそのことをもう少し考えてみたいと思います。
 お勧めの「赤い人」ぜひ近いうちに買い求めたいと思います。「海の史劇」は購入済みですから間もなく読み始めることにしています。
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