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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

韓国料理から韓国を識る

2023-09-17 20:56:17 | 講演・講義・フォーラム等
 韓国の料理というといろいろと思い浮かべることができると思います。どこの国でも食はその国の歴史が深く関わっているとされるが、韓国も同様である。韓国の識者から、韓国の料理の成り立ちなどについて聴いた。
  
 9月16日(土)午後、民団北海道本部において「韓国の歴史と料理」と題する講演会が開催されたので「いったいどんな話が聴けるのだろうか?」という興味で参加した。講師は世宗研究所 日本文化センター長である陳昌洙氏が務めた。
  
  ※ 講演をされた陳氏です。日本語が上手で相当な日本通の方でした。
 「世宗研究所」について私は全く知識がなかった。そこで調べたところ「世宗研究所は京畿道城南市にある民間の研究所」で「国の安全と南北統一及び対外関係に必要な研究と教育・研修を通じて国と社会の発展に貢献することを設立目的としている研究所」だそうである。その研究所の日本文化センター長というから、陳昌洙氏はけっして料理の専門家ではない。
 私も韓国料理そのものを知りたかったわけではなかったから、陳氏のお話はとても興味深く伺うことができた。
 韓国料理というとまず思い浮かぶのは「キムチ」である。韓国には地域や材料によって約500種のキムチが存在するという。ところが今、キムチは地方色が薄れてきたうえ、韓国人自身がキムチを作らなくなってきているそうだ。現在韓国で出回っているキムチの相当部分が中国製であるという話には驚いた。
 面白い話を聞いた。キムチというと赤い唐辛子の色を思い浮かべるが、当初はキムチの辛味を山椒で取っていたという。それが文禄・慶長の役以後(1593年)日本から唐辛子が流入したことにより現在のようなキムチとなったということだ。
  
 ※ キムチの一例です。
 講演後の質疑応答の中で、「日本人は昔キムチを食しなかったが、今は多くの人たちが 好んで食すようになったのはなぜか?」という質問が出た。陳氏は「日本人はキムチを臭い、汚いといって避けていた。しかし、“冬のソナタ” をはじめとして韓流ブームによって日本人は韓国への関心が高まった結果、韓国食に対するアレルギーが無くなったようだ」と解説された。
 韓国はよく郷土意識が非常に強い国だと言われている。郷土料理についてもそれは色濃く表れているようだ。(それは日本でも言えることかもしれないが…)全羅道VS慶尚道など隣り合った地域における郷土料理などにはそうした意識が色濃く出ているという。例えばそれは「タコ料理」などで顕著だという。
 そうした郷土料理にも影響を与えたのが朝鮮戦争だという。朝鮮戦争時に南朝鮮(現在の韓国)が一時北朝鮮に攻め込まれ、南部の釜山付近まで後退したことによって、ソウル付近の料理と南部の料理がアレンジされて、それが現在の韓国料理に一部にもなっているとのことだ。  
 まだまだあれこれと韓国料理を素材に多くの話を伺ったが、最後に韓国料理のもう一方の代表格である「韓定食」についてのお話である。「韓定食」とはご存じの方も多いと思うが「韓国の伝統的な 献立によって数種類の料理を一度に出す定食」のことを言うのだが、庶民は3品、王様は12品もが一度に出されるそうだ。その内容も地域によって様々のようだが、現在は「前菜・主食・デザート」の順で出されるところも多くなったが、全羅道だけは今も全ての料理を一度に出す形式を守っているとのことだ。
  
 ※ こちらは「韓定食」の一例です。
 私も20数年前に韓国旅行(といってもソウル周辺だけだが)の体験がある。大して高額なツアーではなかったが、ソウルで「韓定食」を食した体験がある。その時は少なくとも12品以上あったように記憶するから、私たちは王様気分を味わったということだろうか?しかし、私の感想はあまり芳しいものではなかった。
 講演の最後に陳氏は日本と韓国の食の違いについて言及した。陳氏は自分の意見できなく韓国人識者の論を紹介した。それによると、「酸っぱくて塩辛いものと我慢強い日本人」VS「辛いものと怒りっぽい性格の韓国人」、「整然とした会席料理を好む日本人」 VS「混ぜて急いで食べる韓国人」、「取り箸の距離感がある日本人」VS「鍋をシェアして親しみやすい韓国人」etc.…。
 また別な識者の分析も紹介してくれた。「口で食べる韓国人」VS「目で食べる日本人」、「スープの味を大切にする韓国人」VS「麺の味を大切にする日本人」、「一緒に食べる韓国人」VS「一人で食べる日本人」、etc.…。
 なるほどと頷くところもあれば、「あれっ?」と頭をかしげるところもあるが、一つの見方ではあるのかな?と思う。
 ここまではさすがに日本研究者である陳氏は冷静に日本と韓国のことを分析してみせたが、最後に質問に答える形で韓国人らしさを垣間見せるところがあった。
 それは、陳氏が絶えず韓国と日本を行き来していることから痛感していることを話された。それは空港での旅客に対する両国の違いについてだった。陳氏は「韓国ではもはや “紙” は使わない!」と強調した。ところが「日本ではまだ “紙” が大手を振るっている」と…。
 このことはコロナ禍にあったときに日本の成田から入国した際に、入国審査で計2.8キロも歩かされた上、そのところどころで審査を通った証明の紙をなんと審査を終えるまでに5枚も渡されたという。韓国では一切そうしたことはなく、スマホで全てが解決するという。「日本はICT化において完全に遅れている」と指摘された。
 聴いていた私たちにとっては耳の痛い話であるが、”紙” を大切にするというのは、日本人の用心深さ、あるいは慎重さが表れた一面なのかもしれない。しかし、そうした一つ一つの事象において世界から遅れを取りつつあるのも事実かもしれない。日本人としての良さを維持しつつ、世界に伍していく術をあらゆるレベルで模索する必要があるように思った。
 なんだか、食のこととは全く関係のない話になったが、陳氏の指摘は考えされられるお話だった。


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