田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

加藤周一文庫と立命館

2017-10-13 20:53:24 | 大学公開講座
  加藤周一いう日本を代表する知識人など、私などとは真逆の存在であり、恥ずかしながら関心もほとんどない。しかし、加藤に関わる人が来札し、講演すると知り、ちょっと覗いてみることにした。

 札幌大では、「地域創生入門」の公開講座と並行して、大学創立50周年記念公開講座と銘打って「個人文庫をもつ大学 ~その意義と可能性」と題する公開講座が開設された。(こちらは3回シリーズだが)

 札幌大学に山口昌夫氏(東京外大名誉教授、元札幌大学長)が蔵書を寄贈し、大学に「山口文庫」ができたことはニュースで知っていた。そのことから、立命館大の「加藤周一文庫」、東京女子大の「丸山眞男文庫」の三つの個人文庫に関わる方々を招請して、その意義と可能性について語り、考える講座が開設されたということである。

 その第1回として、加藤周一が遺した蔵書・遺稿・ノートなどを収蔵した「加藤周一文庫」において、加藤の遺したものから彼の業績を研究対象とする研究センター長(正式には加藤周一現在思想研究センター長)の鷹巣力氏「活きた文庫を目指して ~加藤周一文庫の現在と未来~」と題してお話された。

               

 センター長を務める鷹巣氏はけっして加藤の教え子とか、思想を共にした学者ではない。鷹巣氏は出版社の平凡社に勤め、加藤周一の作品を出版する担当者としてのお付き合いが長かったことから、センター長に就かれたという。もちろん鷹巣氏が単なるジャーナリストではなく、加藤研究を任せるに相応しい人物として白羽の矢が立ったのだと思われる。
 ことほど左様に、加藤は弟子を育てるとか、徒党を組むということには終生無関心だった、と鷹巣氏は話した。

 そのジャーナリストである鷹巣氏から見て、加藤周一は「戦後日本を代表する知識人」であり、「日本を代表する国際的知識人」でもあると評した。加藤の国際派を語る一例として、加藤は英語はもちろんのこと、フランス語、ドイツ語を自由に操ったそうだ。さらには、イタリア語、ラテン語にも通じていたという。そして海外20カ国の大学において教鞭を取った経験があったそうだ。
 海外の研究者が日本文学を研究しようとするとき、加藤の論文は避けて通ることのできないものだとも語った。
 加藤に心酔する鷹巣氏が語ることだから、若干は割り引いて聞かねばならないのかもしれないが、いずれにしても日本を代表する知の巨人であることは疑いようのないことである。

 東大出身である加藤周一の遺品がなぜ立命館大学に寄贈されたのかについては、加藤が立命館の国際関係学部の客員教授をしていたこと、さらには立命館の国際平和ミュージアム初代館長を務めた縁があったことなどから、遺族が立命館に寄贈することを望んだことから実現したという。

 加藤が寄贈したものは、書籍や蔵書で約2万冊、遺稿やノート類には手紙類、書簡、日記、手帳などさまざまなモノが含まれており、未整理の段階であるが推定では1万点くらいにのぼると推定されているそうだ。
 これらを鷹巣氏は「活きた文庫」として、研究者のみならず、多くの市民にも公開する「利用される文庫」を目ざしたいとした。しかし、保存と利用とは二律背反のところがあり、現在は蔵書2万冊のうち、1万2千冊程度を開架式にして誰もが利用できる体制を取っているということだ。残る蔵書、あるいは未整理の遺稿、ノート類などについては、二段階に分けて将来にわたって公開できない貴重なモノ、研究者たちには一部公開できるもの、に分類して提供することを考えているということだった。

 ノート類などの一部はデジタルアーカイブ化して、一般に供しているものもあるというが、全体をデジタルアーカイブ化するには膨大な時間を必要とするとも語っていた。

               

 「加藤周一文庫」設置の意義について、鷹巣氏は多くを語らなかったように記憶しているが、それは私が単に聞き逃しただけかもしれない。氏が言いたかったことは、加藤周一のような日本を代表する知識人の功績を多くの人たちに知ってもらい、それぞれの将来に役立ててもらうためには、単なる所蔵・保存だけではなく、「活きた文庫」として活用される文庫を目ざしたいということだった。
 今後においては、同じように設立された「山口文庫」、「丸山眞男文庫」とも連携し、大学が設置した「個人文庫」のより良い在り方について探っていきたいとした。

 残り2回の講座も聴講してみようと思うが、やっぱり私にとっては無縁ともいえる大学の個人文庫である。しかし、知識としてそうした文庫の在り方を知っておくことは無駄ではあるまいと思いながら札幌大学に通うことにしよう。


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