2019年11月30日に発行された日本経済新聞紙の朝刊一面に掲載されたコラム「Neo economy 昨日とは違う明日4」を拝読しました。
いい解説記事を久しぶりに読んだと感じました。現在の産業構造の問題点や貧富の差の拡大の仕組みなどを解説しているからです。
このコラムの文章は「産業革命以来の工業化社会は大量雇用で生産性を上げ、賃金上昇を通じて成長の果実を行き渡らせてきた。しかし、最近は富の源泉がモノから知識やデータに移り、分配の法則も変わった。時代に追いついていますか――」と問いかけます。
日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版では見出し「所得と消費に広がる溝 滞る再分配 安定損なう」と、報じています。
こうした変化の事例の典型例として、NECが採った人事策例を紹介しています。
NECが11月に東京都内で開いた顧客向けセミナーに、登壇した青いパーカー姿の青年は「人工知能(AI)向けのデータを整理するAIの開発について語った」と始まります。
この青年は、2018年に米国でベンチャー企業ドットデータを創業した藤巻遼平氏(38歳)でした。彼は、33歳の若さで、NECの最年少主席研究員に就いた優秀な人材です。
「優秀な藤巻遼平氏を、どうNEC社内につなぎ留めるか」を、NEC経営陣は1年間にわたって議論し、米国でのベンチャー企業の起業を認めたと伝えます。社内の優秀な人材と社内の先端技術を、実際には社外に出すことで、NECとのつながりを維持するという戦略を選んだのでした。
NECは自社の投資内容として、データや知的資産などとし、これを活用でできる人材に機会を与えることを選んだ。こうした自由な環境にこそ、優秀な人材が集まると腹をくくったと伝えます。
別の視点で考えてみると、米国の雇用者全体に占める製造業の人材割合は、1940年代には40パーセント近くあったものが、最近はその4分の一の9パーセントまで大幅に減っています。
日本でも同様で、1960年代に製造業は40パーセント弱あったのですが最近は17パーセントまでに減っています。従来の製造業の大量生産・大量雇用の仕組みではなく、富を産む知識を持つ者が勝者になり、富という“果実”を総取りする世界に入っていると解説します。
現在の大きな問題は富の偏在です。「世界不平等報告書」という研究成果報告によると、上位0.1パーセントの富裕層の富が、2050年には40パーセントの中間層の富に匹敵するほど、富が偏在するとの予測です。
この動きは加速する可能性が高いと危惧されています。米国シカゴ大学のプルース・メイヤー教授は所得の上位10パーセントと下位10パーセントの格差は拡大する一方ですが、所得の高い・低いという属性での消費のバラつきは横ばいだそうです。
つまり、一部の(富裕層の)人が使い切れない富を手に入れたために、経済全体では「有効需要の停滞を招いている」と、大阪大学の准教授は語ります。
この需要の低迷が低成長・低金利・低インフレを招くだろうという構図です。このためには、(米国では)富裕層に課税することが一番の解決策ですが、最近は富裕層は国境をまたいで活躍しています。このため、実際には国による課税は効果をもたないようです(タックスヘブンの活用によって)。
現実には、国境をまたいで活躍する知識やデータを活用して稼ぐ富裕層を自国では優遇する可能性があるということです。課税によって、別の国に移って活躍される可能性があるからです。
このため、富の再分配機能が目詰まりを起こせば、その中間層はやせ衰えて、社会の安定度が損なうというジレンマに陥ります。
富の再分配機能と社会の再活性化という相反する難問に人類はどういう答を出すのでしょうか・・。
いい解説記事を久しぶりに読んだと感じました。現在の産業構造の問題点や貧富の差の拡大の仕組みなどを解説しているからです。
このコラムの文章は「産業革命以来の工業化社会は大量雇用で生産性を上げ、賃金上昇を通じて成長の果実を行き渡らせてきた。しかし、最近は富の源泉がモノから知識やデータに移り、分配の法則も変わった。時代に追いついていますか――」と問いかけます。
日本経済新聞紙のWeb版である日本経済新聞 電子版では見出し「所得と消費に広がる溝 滞る再分配 安定損なう」と、報じています。
こうした変化の事例の典型例として、NECが採った人事策例を紹介しています。
NECが11月に東京都内で開いた顧客向けセミナーに、登壇した青いパーカー姿の青年は「人工知能(AI)向けのデータを整理するAIの開発について語った」と始まります。
この青年は、2018年に米国でベンチャー企業ドットデータを創業した藤巻遼平氏(38歳)でした。彼は、33歳の若さで、NECの最年少主席研究員に就いた優秀な人材です。
「優秀な藤巻遼平氏を、どうNEC社内につなぎ留めるか」を、NEC経営陣は1年間にわたって議論し、米国でのベンチャー企業の起業を認めたと伝えます。社内の優秀な人材と社内の先端技術を、実際には社外に出すことで、NECとのつながりを維持するという戦略を選んだのでした。
NECは自社の投資内容として、データや知的資産などとし、これを活用でできる人材に機会を与えることを選んだ。こうした自由な環境にこそ、優秀な人材が集まると腹をくくったと伝えます。
別の視点で考えてみると、米国の雇用者全体に占める製造業の人材割合は、1940年代には40パーセント近くあったものが、最近はその4分の一の9パーセントまで大幅に減っています。
日本でも同様で、1960年代に製造業は40パーセント弱あったのですが最近は17パーセントまでに減っています。従来の製造業の大量生産・大量雇用の仕組みではなく、富を産む知識を持つ者が勝者になり、富という“果実”を総取りする世界に入っていると解説します。
現在の大きな問題は富の偏在です。「世界不平等報告書」という研究成果報告によると、上位0.1パーセントの富裕層の富が、2050年には40パーセントの中間層の富に匹敵するほど、富が偏在するとの予測です。
この動きは加速する可能性が高いと危惧されています。米国シカゴ大学のプルース・メイヤー教授は所得の上位10パーセントと下位10パーセントの格差は拡大する一方ですが、所得の高い・低いという属性での消費のバラつきは横ばいだそうです。
つまり、一部の(富裕層の)人が使い切れない富を手に入れたために、経済全体では「有効需要の停滞を招いている」と、大阪大学の准教授は語ります。
この需要の低迷が低成長・低金利・低インフレを招くだろうという構図です。このためには、(米国では)富裕層に課税することが一番の解決策ですが、最近は富裕層は国境をまたいで活躍しています。このため、実際には国による課税は効果をもたないようです(タックスヘブンの活用によって)。
現実には、国境をまたいで活躍する知識やデータを活用して稼ぐ富裕層を自国では優遇する可能性があるということです。課税によって、別の国に移って活躍される可能性があるからです。
このため、富の再分配機能が目詰まりを起こせば、その中間層はやせ衰えて、社会の安定度が損なうというジレンマに陥ります。
富の再分配機能と社会の再活性化という相反する難問に人類はどういう答を出すのでしょうか・・。