ほんの一瞬

ほんの一瞬
風のことだけを思う。

ほんの一瞬
空のことだけを思う。

ほんの一瞬
海のことだけを思う。

ほんの一瞬
山のことだけを思う。

ほんの一瞬
花のことだけを思う。

ほんの一瞬
今のことだけを思う。

ほんの一瞬。

今日1日の
旅の途中で。

ほんの一瞬
永遠を手に入れる。


ラッパ水仙〈ヒガンバナ科〉

白和え

畑から採ったばかりの
小松菜の花芽をもらう。
ゆでて
やはりゆでた人参と
白和えにする。
すりごまもたっぷり入れ。

緑と赤と白と
ごまの香りと。

味も優しい
春の惣菜。

体が食べよと
せっせと手を運ばせる。


新体操の演技中（？）の「かれん」

瞳

見つめあう
互いの瞳。
あなたの瞳が潤めば
わたしの瞳も潤み。

瞳と瞳が交し合う
言葉の果て。

目には見えないけれど
涙となって
互いの気持ちを物語る。

いずれの縁か
初めてで出会う瞳と瞳。
けれど
あなたの瞳が潤めば
わたしの瞳も潤み。

窓の外は
雨上がりの青い空。


クローバー〈マメ科〉

光降（こうこう）

何やら賑わしいと
思ったら
川面にたくさんの
光の子どもたち。

歌を歌ったり
ダンスをしたり
手拍子を打ったり
ちょっぴり
ケンカをしたり。

光の子たちが
どんどん
空から降りてきて
そうして
川も海も野も
それから桜も
それから心も
春の色に染まってく。


朝の日野川河口

星々

夜空に輝く
星々。

見上げれば
光が言葉となって
降り注ぐ。

「美しい心を保て」
「もし我らを
　美しいと感じるならば」。
「そのために我らは輝く」と。


大山と「かれん」

白い椿

白い椿をあなたへ。
悲しみを癒し
やがて
あなたの色に染まるよう。

その花弁の
一ひら一ひらが
歩み始めたあなたの色に。

白い椿をあなたへ。


椿〈ツバキ科〉

だいじブクロ

飲み干した
ジュースの
空き缶一つ。

ビニール袋に入れ
「だいじブクロ」と
名づければ
立派なあの子の宝物。

間にあるもの

間にあるものは
忘れられない思い出。

間にあるものは
忘れてしまった出来事。

間にあるものは
過ごしてきた日々。

あなたとわたしの。

今日の日の下に
幾つも重なっている
過ごしてきた日々。


昨日の「かれん」。後ろの白い山は大山（鳥取県）

春うらら

遊び疲れて
車中で眠る
犬の横顔
春うらら。


車の中で眠る「かれん」

ご飯

春は名のみの
寒い夜。

ぐつぐつ
ご飯が炊ける音。
ふんわり
ご飯が蒸す香り。

ほっこり
こたつで待つ
幸せ。


水仙〈ヒガンバナ科〉

啓蟄（けいちつ）

昔々の夢を見る。
昔々のその人は
昔々の姿のままで
昔々の思いを語る。

昔々の夢を見る。
昔々のわたしは
昔々の姿のままで
昔々の思いを巡る。

記憶の奥底に
眠っていた
思い出も啓く
啓蟄の朝。


ボール大好きの「かれん」

波

引き際と
攻め際と
瀬戸際と。

繰り返し
繰り返し。


ボケ〈バラ科〉

一休み

続けるために
一休み。

再開のときは
わからないけど
続けたいから
一休み。

体を
一つゆるめて
一休み。

再び
始めたいと
思うその日まで。

そう思える日が
来ることを願って
一休み。


しだれ梅〈バラ科〉

梅

梅の花咲く。
満を持して
蜜蜂が飛び始める。

花が散り
誰も見向きを
しなくなった頃
梅は静かに
実を育て始める。

桜が咲き
つつじが咲き
たくさんの春の花が咲き
賑わうなかで
ひっそりと。

やがて雨が降り続き
梅は最後の
仕上げに取り掛かる。

白い花だったところには
緑の梅の子たち。

その誕生を祝して
人は再び
梅の下へと集う。


梅〈バラ科〉

小さな夢

少し手を伸ばせば
届くことのできる
小さな夢が一つ。

少し手を伸ばして
小さな夢を捕まえる。

小さな夢は
手のひらで温かく。

今日は今日の
明日は明日の風が吹く。

少し手を伸ばせば
届くことのできる
小さな夢はかしこに。

今日は今日の
明日は明日の風が吹く。


福寿草〈キンポウゲ科〉