天を追放されたスサノオが降り立った
船通山に日南町側から登る。
途中に杖が用意されており
突きながら登ると
くくりつけられている木札が
カラカラと山に響み渡る。
カタクリの花は終わっていたが
青紅葉やミズナラ、ブナの若葉が
幾重にも重なって緑の天井を作っていた。
その緑の天井へ向かって
地の底から歩みを重ねる。
次第に頭上が明るくなり
ついに緑の天井の上に出る。
見渡せば
山々が幾重にも連なり
いつもと異なる風景の中で
石の小さな鳥居をくぐって
お社にお参りをする。
『古事記』では
スサノオはここから奥出雲へと向かう。
そして八岐大蛇の物語へと続いていく。
ヤブデマリ〈スイカズラ科〉 船通山山頂
copyright Maoko Nakamura
曇をまとった空が
フェイドアウトするように
光を失っていく。
道づれにするように
すべてのものの
光も奪っていく。
石につまづいた拍子に
すとんと違う世界に
落ちてしまいそうな
逢魔が時。
息をひそめて窓辺に佇む。
東の空には
涙で滲んだような月明かり。
バラ〈バラ科〉
copyright Maoko Nakamura