黄金虫たちを魅了したふかふかの花粉も・・・
蜜蜂たちをとりこにした甘い蜜も・・・
蝶たちを誘った艶やかな色も・・・
もうなく・・・。
花はひっそり風に揺られていた。
けれど花は自由だった。
風を、光を
花は初めて感じるように味わった。
土の中から頭をもたげた日のような
わくわくする気持ちを思い出しながら。
虫たちを引きつけた甘い匂いも・・・
もうなかった・・・。
自分の匂いを
花は初めて感じるように味わった。
かつての馨しい匂いではなく
枯れ草のような
明るく懐かしい匂いを。
虫たちを待つのではなく
花は自ら声をかけた。
同じ匂いのする花に。
花はなんでもできそうに思えた。
土の中から頭をもたげた日のように。
コスモス〈キク科〉
copuyright Maoko Nakamura