fromイーハトーヴ ーー児童文学(筆名おおぎやなぎちか)&俳句(俳号北柳あぶみ)

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歌集『春戦争』(陣崎草子)ー書肆侃侃房

2013年10月29日 | 本の紹介

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 画家であり、児童文学作家でもある陣崎草子さんが歌集を上梓されました。マルチな方です。でもどのお仕事にも、陣崎さんらしい透明感があり、ステキです。歌集は歌人であり小説家でもある東直子さんのプロデュースによるもの。歌壇のことはよくわかりませんが、陣崎さん、おそらくかなり有望な新人なのだと思います。

 お陰様で、久しぶりに短歌をまとめて読みました。ああ、やっぱり俳句より小説に近いなというのが、第一印象。陣崎さん、いずれ大人向けの小説も書くのではという予感がします。好きな句に付箋を貼りながら読んでいき、最後に東さんの解説を読むと、私が好きだったのをほとんどもれなく取り上げてらっしゃり、そこも嬉しかったです。

 どうやって生きてゆこうか八月のソフトクリームの垂れざまを見る

 スニーカーの親指のとこやぶれてて親指さわればおもしろい夏

 ひどく白いホテルラウンジきみの手は赤いストローくにゃりと曲げる

 ぼくはややおかしいけれどまっとうで 離島で黄色い自転車飛ばす

 旗をふる人にまぎれて旗をふるだれも応援しませんの旗

 好きな順に5首というのではなく、付箋を貼っていた中からランダムに5首、書かせていただきました。 

 陣崎さんは、挿絵を描かれた『あまやどり』(市川宣子作)では、今年ひろすけ童話賞も受賞、すごい勢いで活躍されています。

 表紙の絵もいいですね。もちろん陣崎さんご自身によるものです。 

 ついつい刺激されて、何十年ぶりかで短歌作ってみました。

 歌いたくなるよ抱きしめたくなるよ『春戦争』の淡き桃色 

 カプセルの薬が喉を通りすぎ胃で解けてゆくほどの憂鬱  

 台風の過ぎて本郷六丁目古き旅館の地下ローマ風呂    

 冒頭とラストがあってその中を縫うように蟻自由に歩け

 パソコンのファイルを削除したあとの机の上に赤きクリップ     あぶみ  

 このまえ歌仙を巻いたときもそうだったけど、指を折って数えて……。


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