~塚本晋也のキャリア10傑~
アヴァンギャルド精神、ここにあり。
いつまでも若々しくエッジな独立映画を撮りつづけているように見えた塚本晋也も、来年元日に還暦を迎える。
時代のせい―早過ぎた―か、三池崇史や園子温に比べ未だ「知るひとぞ知る」存在であることが嘆かわしい。
円熟期の現在、塚本映画は第2ステージへ突入。
独立体制の映画創りはそのままに、国家に刃を向け始めた。
塚本映画を観たことのないひとには、21世紀の大島渚だよ、、、と説明すべきかもしれない。
いやその前に。
監督作を観ていないひとでも、沢山の映画・ドラマに出演しているので、俳優として認識しているのではないか。
『シン・ゴジラ』(2016)や『沈黙 サイレンス』(2016)の、あのひとだよ!!
(1)『東京FIST』(95)
身体的な「痛み」をともなうことで、初めて生きる実感がわく。
クローネンバーグや金原ひとみが描こうとしてきたことだが、この映画が持つ説得力は絶大だと思う。
観るのに覚悟の要る物語だが、好きなひとはとことん好きになる映画。
(2)『六月の蛇』(2003)
長年温めていたピンク映画の物語を、黒沢あすかというミューズを発見することによって叶えた快作。
そう塚本さんって、女優を「より美しく」撮ることの出来るひとなんだ。
(3)『鉄男II BODY HAMMER』(93)
塚本神話の誕生は(当然)第1作目のほうだが、破壊の美しさを説く主題が好きなので自分は続編のほうを推す。
お互いがおじいちゃんになる前に、もういちどトモロヲさんと組んで撮ってほしい。
(4)『野火』(2015)
大岡昇平の戦場記、2度目の映画化。
市川崑×和田夏十のコンビによる最初の映画化作品も悪くないが、デジタル撮影の効果だろう、暴力・殺戮の即物性が際立ち、戦争の恐怖を「存分に」体感出来る―そこを評価したい。
(5)『鉄男』(89)
塚本神話は、この1作で誕生した。
ある日、突然「鉄化」していく男の物語―カフカの世界観にも通じそうだが、しかし、鉄化する理由は「いちおう」あるのだった。
そこが面白い。
(6)『斬、』(2018)
最新作。
刀鍛冶を冒頭に置き、映像と音楽で圧倒させる創りは初期と変わらぬが、ひとがひとを殺めることの無常を描いている点にこそ注目してほしい。
殺陣の迫真性は『羅生門』(50)、その無常観は『許されざる者』(92)のよう―と評したら褒め過ぎだろうか。
(7)『双生児―GEMINI―』(99)
江戸川乱歩原作、モックン本木雅弘が主演、制作陣にメジャーのプロ集団が関わったため観る前は「いつもの塚本節が発揮出来るのか…」と不安になったが、雰囲気抜群のホラー映画として完成。
ファンも、おそらく塚本さん自身もホッとしたのではないかな。
(8)『電柱小僧の冒険』(88)
背中から電柱が生えている(?)男の子のタイムスリップ劇。
習作と呼べるものだと思うが、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞、これにより資金と協力者を得て『鉄男』が制作された。
(9)『ヴィタール』(2004)
人体解剖にのめりこむ男を浅野忠信が好演、ただ塚本演出に慣れ過ぎているファンにとっては、少々喰い足りないところは(正直)あった。
(10)『バレット・バレエ』(99)
銃に取り憑かれた男と、その周辺に蠢く若い男女を荒々しいモノクロームで描く。
塚本さんお気に入りの映画は、自分にとっての神映画『タクシードライバー』(76)。
これは、新世紀に向けての塚本版『タクシードライバー』だったのだと思う。
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明日のコラムは・・・
『vitamin CINEMA』
アヴァンギャルド精神、ここにあり。
いつまでも若々しくエッジな独立映画を撮りつづけているように見えた塚本晋也も、来年元日に還暦を迎える。
時代のせい―早過ぎた―か、三池崇史や園子温に比べ未だ「知るひとぞ知る」存在であることが嘆かわしい。
円熟期の現在、塚本映画は第2ステージへ突入。
独立体制の映画創りはそのままに、国家に刃を向け始めた。
塚本映画を観たことのないひとには、21世紀の大島渚だよ、、、と説明すべきかもしれない。
いやその前に。
監督作を観ていないひとでも、沢山の映画・ドラマに出演しているので、俳優として認識しているのではないか。
『シン・ゴジラ』(2016)や『沈黙 サイレンス』(2016)の、あのひとだよ!!
(1)『東京FIST』(95)
身体的な「痛み」をともなうことで、初めて生きる実感がわく。
クローネンバーグや金原ひとみが描こうとしてきたことだが、この映画が持つ説得力は絶大だと思う。
観るのに覚悟の要る物語だが、好きなひとはとことん好きになる映画。
(2)『六月の蛇』(2003)
長年温めていたピンク映画の物語を、黒沢あすかというミューズを発見することによって叶えた快作。
そう塚本さんって、女優を「より美しく」撮ることの出来るひとなんだ。
(3)『鉄男II BODY HAMMER』(93)
塚本神話の誕生は(当然)第1作目のほうだが、破壊の美しさを説く主題が好きなので自分は続編のほうを推す。
お互いがおじいちゃんになる前に、もういちどトモロヲさんと組んで撮ってほしい。
(4)『野火』(2015)
大岡昇平の戦場記、2度目の映画化。
市川崑×和田夏十のコンビによる最初の映画化作品も悪くないが、デジタル撮影の効果だろう、暴力・殺戮の即物性が際立ち、戦争の恐怖を「存分に」体感出来る―そこを評価したい。
(5)『鉄男』(89)
塚本神話は、この1作で誕生した。
ある日、突然「鉄化」していく男の物語―カフカの世界観にも通じそうだが、しかし、鉄化する理由は「いちおう」あるのだった。
そこが面白い。
(6)『斬、』(2018)
最新作。
刀鍛冶を冒頭に置き、映像と音楽で圧倒させる創りは初期と変わらぬが、ひとがひとを殺めることの無常を描いている点にこそ注目してほしい。
殺陣の迫真性は『羅生門』(50)、その無常観は『許されざる者』(92)のよう―と評したら褒め過ぎだろうか。
(7)『双生児―GEMINI―』(99)
江戸川乱歩原作、モックン本木雅弘が主演、制作陣にメジャーのプロ集団が関わったため観る前は「いつもの塚本節が発揮出来るのか…」と不安になったが、雰囲気抜群のホラー映画として完成。
ファンも、おそらく塚本さん自身もホッとしたのではないかな。
(8)『電柱小僧の冒険』(88)
背中から電柱が生えている(?)男の子のタイムスリップ劇。
習作と呼べるものだと思うが、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞、これにより資金と協力者を得て『鉄男』が制作された。
(9)『ヴィタール』(2004)
人体解剖にのめりこむ男を浅野忠信が好演、ただ塚本演出に慣れ過ぎているファンにとっては、少々喰い足りないところは(正直)あった。
(10)『バレット・バレエ』(99)
銃に取り憑かれた男と、その周辺に蠢く若い男女を荒々しいモノクロームで描く。
塚本さんお気に入りの映画は、自分にとっての神映画『タクシードライバー』(76)。
これは、新世紀に向けての塚本版『タクシードライバー』だったのだと思う。
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明日のコラムは・・・
『vitamin CINEMA』