[1月20日19:10.天候:晴 千葉県銚子市 JR銚子駅→JR総武本線4014M電車2号車]
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
前半は純粋な慰安旅行だったのだが、後半は急きょ入った仕事の依頼のおかげで、BOWに追い回されることとなった。
しかしその仕事も無事に終わり、私達は帰途に就こうとしている。
〔「1番線に停車中の列車は19時15分発、特急“しおさい”14号、東京行きです。東京行きの最終列車です。ご利用のお客様は、お乗り遅れの無いようご注意ください。……」〕
市街地の寿司屋で夕食を取った後、私達は駅に向かった。
ま、何だかんだ言って、仕事終わりの一杯は最高である。
特急“しおさい”号には車内販売が無い為、駅構内のコンビニで酒やら何やら買い込んでいたら高野君に窘められた。
寿司屋で散々っぱらビール飲んでいたのに、まだ飲むのかと。
こういうツッコミを入れてくれる人物は貴重である。
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
斉藤:「私、リサさんの隣でお願いします!」
高橋:「俺は先生の隣で」
愛原:「はいはい」
リサ:「サイトーは窓側でいい」
斉藤:「いいの?」
リサ:「うん」
自動改札機を通ると、目の前の1番線には往路と同じ電車(JR東日本255系)が停車していた。
往路と違うのは、今回は指定席だということ。
だから席にあぶれることは無い。
日曜日夜の上り電車ということもあって、そんなに車内は混んでいるわけではないのだが。
グリーン車に至ってはガラガラだ。
斉藤絵恋さんは大企業家の御嬢様だから、本来彼女はそこに乗るべき人間なのだろう。
私達は普通車指定席の2号車に乗り込んだ。
愛原:「ほら、高野君も飲みなよ」
私はコンビニで買った缶ビールを高野君に渡した。
高野:「電車の中で二次会ですか?」
愛原:「それが慰安旅行の醍醐味ってもんだよ」
高野:「あまり騒ぎ過ぎてはダメですよ」
高野君は苦笑しつつ、取りあえず私の缶ビールを受け取った。
高野:「いくら後で報酬が入るからといって、無駄遣いはダメですよ」
愛原:「分かってるって」
寿司代は全部で5ケタに達してしまったが、予想外の出費になってしまったのは私のビール代ではなく、育ち盛りが2人もいたことに起因するとしておこう。
え?なに子供に責任転嫁してるのかって?それは【お察しください】。
〔「ご案内致します。この電車は19時15分発、総武本線回りの特急“しおさい”14号、東京行きです。銚子を出ますと飯岡、旭、八日市場、横芝、成東、八街、佐倉、千葉、錦糸町、終点東京の順に止まります。尚、この電車には車内販売はございません。車内に自動販売機等もございませんので、ご注意ください。まもなくの発車となります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間が迫り、駅のホームからは発車メロディが聞こえて来た。
今や地方の駅でも、発車ベルはベルではなく、メロディの時代だ。
駅の放送も乗り遅れ防止の呼び掛けをしているのは、この電車が東京行きの終電だからか。
千葉県内が終点の普通列車だったら、この後も何本かあるのだろうが。
しばらくして、車内にインバータのモーター音が響いて来た。
時計を見ると定刻通りだから、ギリギリの客はいなかったもよう。
そこは空いている日曜日夜の上り電車だからか。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は総武本線、特急“しおさい”14号、東京行きです。……〕
車内に自動放送が流れている間も、私のビールとおつまみは止まらない。
やはり、あれだけ命懸けの仕事を終えると腹が減るものだな。
そもそも、よくよく考えてみれば昼食は抜きだった。
ま、探偵稼業では調査の為に一食抜くくらいは当たり前だ。
愛原:「あーあ。飲んだら眠くなってきた」
高橋:「先生。どうぞ、休んでてください。俺が起こしますから」
愛原:「と言いつつ、お前も寝るんじゃないのか?」
高橋:「いや、それは……気を付けます」
前に一回、高橋やらかしたからな。
愛原:「行きと違って、帰りは錦糸町で降りるからな、それで寝過ごすわけにはいかんのだよ」
この電車で帰京しようとすると、都内に入るのは21時過ぎになるだろう。
私達はともかく、まだ中学1年生の彼女らは早く帰宅させる必要がある。
特に、斉藤さんは。
ぶっちゃけリサはBOWだから、そこまで気を使う必要も無いのかもしれない。
ただ、あまり夜遅くまで連れ回していると、後で善場さんに何言われるか分からんからなぁ……。
一応、この慰安旅行については話は通してあるので、これについては何も言われないはずだ。
高野:「いざとなったら、私が起こしますよ」
愛原:「そう?それは助かる」
やっぱこういう時、高野君の方が頼りになるな。
[同日20:34.天候:晴 千葉県千葉市中央区]
愛原:「ん……?」
私はふと目が覚めた。
窓の外を見ると、ちょうど電車が駅を発車する所だった。
過ぎ去って行くホームに目を凝らし、駅名看板を何とか読み取ると、千葉駅を発車したようだ。
千葉駅でもなかなか乗降があるだろうから、その雰囲気で目が覚めたのかもしれない。
〔この電車は特急“しおさい”14号、東京行きです。【中略】次は、錦糸町です〕
ここから電車は総武快速線と呼ばれる線路の上を走ることになる。
窓の外には、総武緩行線と呼ばれる各駅停車の通勤電車が並走するのが見える。
つまり、ここから先、総武本線は複々線になるということだ。
私はここでトイレに立った。
幸い、2号車にはトイレがある。
ふと通路を挟んだ隣の席を見ると、すっかり眠り込んだJC2人の姿があった。
愛原:「この分なら、起こされなくても大丈夫みたいだな」
用を足した後、洗面台でちゃんと手を洗っていると……。
リサ:「愛原さん」
愛原:「!」
背後からリサに声を掛けられた。
愛原:「おっ、リサ。どうした?トイレか?」
リサ:「タイラント君、どうだった?」
愛原:「あ、ああ。リサのおかげで、立ち去ってくれたよ。さすが、リサ・トレヴァーは強いな」
リサ:「タイラント君がいた所に、私の『友達』はいた?」
愛原:「いや、いなかったな。いた痕跡はあったんだが……」
リサ:「そう……」
リサは肩を落とした。
その姿がまるで、アメリカのオリジナル版のように見えた。
ここにいるリサ達の生い立ちが、まるでそのリサ・トレヴァーに似ているから便宜上そう呼ばれているだけで、彼女らのBOWとしての正式名称は不明だ。
何しろ開発した旧・日本アンブレラ社が既に倒産しているからだ。
こういうのは極秘事項であるからして、直接研究・開発に携わっていた関係者にしか知られていなかっただろうし。
リサ:「皆、外国に連れて行かれたのかな……」
愛原:「それは分からんよ。仙台にはお前の仲間がいたじゃないか」
それは完全にクリーチャーと化して、BSAA極東支部に退治されてしまったが。
リサが本当に暴走するとああなるということを見せつけられた。
衣裳部屋で見つけたあのUSBメモリーに、何か重大な情報が入っているといいのだが……。
私の名前は愛原学。
都内で小さな探偵事務所を経営している。
前半は純粋な慰安旅行だったのだが、後半は急きょ入った仕事の依頼のおかげで、BOWに追い回されることとなった。
しかしその仕事も無事に終わり、私達は帰途に就こうとしている。
〔「1番線に停車中の列車は19時15分発、特急“しおさい”14号、東京行きです。東京行きの最終列車です。ご利用のお客様は、お乗り遅れの無いようご注意ください。……」〕
市街地の寿司屋で夕食を取った後、私達は駅に向かった。
ま、何だかんだ言って、仕事終わりの一杯は最高である。
特急“しおさい”号には車内販売が無い為、駅構内のコンビニで酒やら何やら買い込んでいたら高野君に窘められた。
寿司屋で散々っぱらビール飲んでいたのに、まだ飲むのかと。
こういうツッコミを入れてくれる人物は貴重である。
愛原:「キップは1人ずつ持とう」
斉藤:「私、リサさんの隣でお願いします!」
高橋:「俺は先生の隣で」
愛原:「はいはい」
リサ:「サイトーは窓側でいい」
斉藤:「いいの?」
リサ:「うん」
自動改札機を通ると、目の前の1番線には往路と同じ電車(JR東日本255系)が停車していた。
往路と違うのは、今回は指定席だということ。
だから席にあぶれることは無い。
日曜日夜の上り電車ということもあって、そんなに車内は混んでいるわけではないのだが。
グリーン車に至ってはガラガラだ。
斉藤絵恋さんは大企業家の御嬢様だから、本来彼女はそこに乗るべき人間なのだろう。
私達は普通車指定席の2号車に乗り込んだ。
愛原:「ほら、高野君も飲みなよ」
私はコンビニで買った缶ビールを高野君に渡した。
高野:「電車の中で二次会ですか?」
愛原:「それが慰安旅行の醍醐味ってもんだよ」
高野:「あまり騒ぎ過ぎてはダメですよ」
高野君は苦笑しつつ、取りあえず私の缶ビールを受け取った。
高野:「いくら後で報酬が入るからといって、無駄遣いはダメですよ」
愛原:「分かってるって」
寿司代は全部で5ケタに達してしまったが、予想外の出費になってしまったのは私のビール代ではなく、育ち盛りが2人もいたことに起因するとしておこう。
え?なに子供に責任転嫁してるのかって?それは【お察しください】。
〔「ご案内致します。この電車は19時15分発、総武本線回りの特急“しおさい”14号、東京行きです。銚子を出ますと飯岡、旭、八日市場、横芝、成東、八街、佐倉、千葉、錦糸町、終点東京の順に止まります。尚、この電車には車内販売はございません。車内に自動販売機等もございませんので、ご注意ください。まもなくの発車となります。ご乗車になりまして、お待ちください」〕
発車の時間が迫り、駅のホームからは発車メロディが聞こえて来た。
今や地方の駅でも、発車ベルはベルではなく、メロディの時代だ。
駅の放送も乗り遅れ防止の呼び掛けをしているのは、この電車が東京行きの終電だからか。
千葉県内が終点の普通列車だったら、この後も何本かあるのだろうが。
しばらくして、車内にインバータのモーター音が響いて来た。
時計を見ると定刻通りだから、ギリギリの客はいなかったもよう。
そこは空いている日曜日夜の上り電車だからか。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は総武本線、特急“しおさい”14号、東京行きです。……〕
車内に自動放送が流れている間も、私のビールとおつまみは止まらない。
やはり、あれだけ命懸けの仕事を終えると腹が減るものだな。
そもそも、よくよく考えてみれば昼食は抜きだった。
ま、探偵稼業では調査の為に一食抜くくらいは当たり前だ。
愛原:「あーあ。飲んだら眠くなってきた」
高橋:「先生。どうぞ、休んでてください。俺が起こしますから」
愛原:「と言いつつ、お前も寝るんじゃないのか?」
高橋:「いや、それは……気を付けます」
前に一回、高橋やらかしたからな。
愛原:「行きと違って、帰りは錦糸町で降りるからな、それで寝過ごすわけにはいかんのだよ」
この電車で帰京しようとすると、都内に入るのは21時過ぎになるだろう。
私達はともかく、まだ中学1年生の彼女らは早く帰宅させる必要がある。
特に、斉藤さんは。
ぶっちゃけリサはBOWだから、そこまで気を使う必要も無いのかもしれない。
ただ、あまり夜遅くまで連れ回していると、後で善場さんに何言われるか分からんからなぁ……。
一応、この慰安旅行については話は通してあるので、これについては何も言われないはずだ。
高野:「いざとなったら、私が起こしますよ」
愛原:「そう?それは助かる」
やっぱこういう時、高野君の方が頼りになるな。
[同日20:34.天候:晴 千葉県千葉市中央区]
愛原:「ん……?」
私はふと目が覚めた。
窓の外を見ると、ちょうど電車が駅を発車する所だった。
過ぎ去って行くホームに目を凝らし、駅名看板を何とか読み取ると、千葉駅を発車したようだ。
千葉駅でもなかなか乗降があるだろうから、その雰囲気で目が覚めたのかもしれない。
〔この電車は特急“しおさい”14号、東京行きです。【中略】次は、錦糸町です〕
ここから電車は総武快速線と呼ばれる線路の上を走ることになる。
窓の外には、総武緩行線と呼ばれる各駅停車の通勤電車が並走するのが見える。
つまり、ここから先、総武本線は複々線になるということだ。
私はここでトイレに立った。
幸い、2号車にはトイレがある。
ふと通路を挟んだ隣の席を見ると、すっかり眠り込んだJC2人の姿があった。
愛原:「この分なら、起こされなくても大丈夫みたいだな」
用を足した後、洗面台でちゃんと手を洗っていると……。
リサ:「愛原さん」
愛原:「!」
背後からリサに声を掛けられた。
愛原:「おっ、リサ。どうした?トイレか?」
リサ:「タイラント君、どうだった?」
愛原:「あ、ああ。リサのおかげで、立ち去ってくれたよ。さすが、リサ・トレヴァーは強いな」
リサ:「タイラント君がいた所に、私の『友達』はいた?」
愛原:「いや、いなかったな。いた痕跡はあったんだが……」
リサ:「そう……」
リサは肩を落とした。
その姿がまるで、アメリカのオリジナル版のように見えた。
ここにいるリサ達の生い立ちが、まるでそのリサ・トレヴァーに似ているから便宜上そう呼ばれているだけで、彼女らのBOWとしての正式名称は不明だ。
何しろ開発した旧・日本アンブレラ社が既に倒産しているからだ。
こういうのは極秘事項であるからして、直接研究・開発に携わっていた関係者にしか知られていなかっただろうし。
リサ:「皆、外国に連れて行かれたのかな……」
愛原:「それは分からんよ。仙台にはお前の仲間がいたじゃないか」
それは完全にクリーチャーと化して、BSAA極東支部に退治されてしまったが。
リサが本当に暴走するとああなるということを見せつけられた。
衣裳部屋で見つけたあのUSBメモリーに、何か重大な情報が入っているといいのだが……。