報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「愛原の推理」

2023-07-04 15:54:14 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月30日21時00分 天候:雪 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 明日は朝が早い。
 リサと絵恋は、先に風呂に入っている。

 高橋「先生、雪が降ってきましたよ?」
 愛原「今夜は降るらしいな。これ以上、積もらないといいが……。冬は二輪は大変だろう?」
 高橋「もちろんスよ。まあ、夏は夏で大変っスけどね」
 愛原「だろうなぁ……」

 と、その時、私のスマホに着信があった。
 画面を見ると、栗原蓮華からだった。

 愛原「もしもし?」
 蓮華「愛原先生?栗原です」
 愛原「おー、お疲れさん。不動産屋さん、どうだった?」
 蓮華「はい、質問してみました。そしたらですね……。『確かに、あの家はかつて2階建てだった』とのことです」
 愛原「やっぱり!!」

 私の推理は当たっていた!

 愛原「それで、2階の間取りはどんな感じだったんだろう?」
 蓮華「はい。玄関を入って、左側に階段があったそうなんですが……」

 やっぱり、あの物置部屋は階段室だったのだ。

 蓮華「そこを上がると、10畳一間の和室になっていたそうです」
 愛原「やっぱり!……その2階の和室って、何に使われてたんだろう?」
 蓮華「それは分かんないです」
 愛原「そうか……」

 恐らく、間取り図にも『和室』としか書かれていなかったのだろう。

 愛原「それで、この家にはかつて誰が住んでいたんだ?」
 蓮華「3人家族だったみたいですね。夫婦が1人と、小さい子供が1人だったそうです」
 愛原「同じだな。埼玉の家と……」
 蓮華「そうですね」
 愛原「どうして2階部分は無くなったんだ?」
 蓮華「何でも、小火があったそうです」
 愛原「ボヤ!?」
 蓮華「はい。まあ、修理すればまだ住める程度の小さな火事だったらしいんですけど、何故かその家族は『減築』工事をした後、その家を売り払って引っ越して行ったらしいです」
 愛原「すると、この家が民泊施設として再活用されたのは……」
 蓮華「今から、10年くらい前ですね。最初は借家として運用されていたらしいんですけど、ここ数年は借り手が付かないので、今流行りの民泊として再々活用しようということになって今に至ります」
 愛原「そうだったのか……」

 小火か。
 埼玉の家の全焼と同じ、火事繫がりだな。
 もっとも、この家の場合は修理さえすれば済む程度の小さな火事だったのこと。
 今から10年前……。

 愛原「その一家が、埼玉の家に引っ越したというわけかな?」
 蓮華「どう、ですかね……」

 埼玉の家も、比較的築浅だった。
 確かに、築10年くらいしか経っていなかったかもしれない。
 埼玉に新たな家を建て、この家を売り払ったのだとしたら……。

 愛原「栃木も埼玉も、同じ栗原不動産でしょ?何とか分からんかね?」
 蓮華「営業エリアが違うので、ちょっと調べないと分かんないですね。埼玉中央支店と栃木支店と別れてるので……」
 愛原「そういうことか」
 蓮華「あと、最近は個人情報保護とかも厳しいですし……」
 愛原「まあ、そうだな」
 蓮華「それで、やはりその日光の家は、『鬼の棲む家』でしたか?」
 愛原「その可能性は高い。それも、鬼はその潰された2階に棲んでいたかもしれない。今は、そういう結論だよ」
 蓮華「分かりました」
 愛原「まあ、帰京したら、改めて報告に行くけどね。……こんなんで、報酬もらえるのかな?」
 蓮華「はい、大丈夫ですよ。その家が、『鬼の棲む家』かどうかが分かればいいんです」
 愛原「それは良かった。それじゃ、俺達は元旦に帰京するから。……うん、それじゃ、良いお年を」

 私は報酬がもらえることが分かり、上機嫌で電話を切った。

 リサ「あーっ、先生!誰に電話してたの!?」

 そこへ、風呂から戻ってきたリサが体操服にブルマ姿で入って来た。
 ブルマは緑色の学校のブルマである。

 愛原「いや、誰って、仕事の……」
 パール「女性からの電話でしたよね?」
 リサ「にゃにぃーっ!?」

 リサ、一気に第1形態に戻る。

 愛原「誤解させるようなこと言うなーっ!」
 リサ「浮気は許さないっちゃーっ!」

 バリバリバリバリバリバリバリ

 愛原「ぎゃああああああっ!!」

 リサからの電撃を食らってしまった。
 リサからの電撃を食らいながら、私はふと考えた。
 リサは1度、『鬼』の男と対峙している。
 その男は、火を吐く血気術……もとい、特殊な妖術を使っていたそうだ。
 ちょうど今、リサが電撃を使ったように。
 『鬼』の男は、その妖術を使って埼玉の家に放火し、全焼させたと思われる。
 その片鱗は、子供の頃からあったのではないだろうか。
 夢の中に現れた少年は、その『鬼』の男の幼少期。
 人間から『鬼』へと変化を遂げる瞬間。
 その時には、既に火を吐く妖術を得ていたとしたら?
 2階を潰し、引っ越すきっかけとなった小火も、その『鬼』の男が引き起こしたものだったのかもしれない。

 高橋「おい、リサ!先生、動かねぇぞ、バカ!」
 絵恋「リサさんに向かって、バカとは何よ!?」

 絵恋は先ほどから、学校のジャージを着たままだ。
 リサ曰く、『ちゃんと下にはブルマを穿かせてるから安心して』とのこと。
 いや、それより……。

 高橋「先生、しっかりしてください!お気を確かに!」
 愛原「うーん……。なあ、リサ」
 リサ「な、なぁに?」

 高橋に言われたことで、さすがのリサもマズいと思ったか。

 愛原「この家……やっぱり『鬼の棲む家』なのかもしれない」
 リサ「えっ?」
 絵恋「そりゃあ、リサさんがいますからね」
 愛原「違うよ」
 リサ「違う?」

 恐らく、栗原不動産は栗原家の表向きの仕事なのだろう。
 裏稼業にして家業である鬼狩りにより、鬼から分捕った土地を有効活用する為に始めた事業らしいが。
 鬼狩りの一族が経営している不動産屋を、鬼の一家が利用するのは偶然だろうか?
 それも、栃木と埼玉、両方。
 2度あることは3度ある。
 今、この一家はどこに住んでいる?

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