報恩坊の怪しい偽作家!

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“愛原リサの日常” 「鬼の接近」

2023-07-04 20:20:05 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[期日不明 時刻不明(夜間) 天候:不明 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 リサ「ん……?」

 夜中にリサは目が覚めた。
 寝る場所は大広間を2つに分けている。
 8畳間が二間続きになっており、間に襖がある。
 寝る時はこの襖を閉めて、男女別とした。

 リサ「……トイレ」

 リサは尿意を催して、布団から這い出た。
 廊下に出ると、常夜灯として点灯している廊下の電球が数個だけ点灯していた。
 柱の上にある行燈タイプの照明と比べれば薄暗い。
 洋式トイレのある個室に向かうと、隣の男子用小便器のある個室の照明が点灯していた。
 そして、その扉が開く。
 そこから出て来たのは、愛原だった。

 愛原「おっ、リサもトイレか?」
 リサ「うん。おしっこしたくなっちゃって……」
 愛原「そうか。それじゃ、今空けたから使ってくれ」

 愛原は小便器の方を指さした。

 リサ「いやいや、わたしはこっち」
 愛原「小さい方なんだろ?それじゃ、こっちじゃないか」
 リサ「せ、先生、わたし、女の子……」
 愛原「いいじゃないか。できなくはないだろ?さあさあ」

 愛原はリサを男子用小便器の個室に連れ込んだ。

 愛原「見ていてあげるから、ここで立ちションしてみるんだ。さあ、早くブルマとパンティーを脱いで……」

 愛原がリサの耳にささやく。

 リサ「ひゃっ!……は、はい」

 リサは言われた通り、ブルマとショーツを一緒に脱いだ。

 リサ「は、恥ずかしい……」
 愛原「リアル『体操服のJKに男子用小便器を使わせてみた!』だぁ!」

[12月31日01時32分 天候:雪 栃木県日光市某所 某民泊施設]

 リサ「でへへへ……先生、ヘンタイ……でへへへへ……。ん?」

 そこで覚めるリサ。

 リサ「……ちっ。いい所だったのに……」
 絵恋「萌えへへへ……。リサさぁん……こんな所で一緒にオシッコだなんて……萌えへへへへ……」

 リサの布団の中に絵恋が入り込んで、どうやら似たような夢を見ているようだった。

 リサ「ちっ、オマエのせいか……」

 先ほどの夢を見たせいで、本当にトイレに行きたくなったリサだった。

 リサ(まさか正夢!?)

 リサは布団から急いで出ると、廊下に出てみた。

 リサ(……な、ワケないか)

 真っ暗な廊下の中、トイレの方を見ると、全く照明など点いていなかった。

 リサ(世の中、そんなに甘くない……)

 その時、リサは廊下が真っ暗なのが気になった。
 確か夢の中と同様、廊下の照明は、天井に付いている何個かの電球を灯して常夜灯にすると愛原が言っていたはずなのだが。
 誰かが消したのだろうか?
 それとも、停電か?

 リサ(いや、違うな……)

 リサは洋式トイレの個室の照明スイッチを入れてみた。
 すると、ちゃんと点灯した。
 つまり、停電というわけではない。
 誰かが消したということか。

 リサ「!?」

 その時、リサは誰かの視線を感じてバッと振り向いた。
 しかし、そこには誰もいない。
 だが、代わりに白い一筋の光のようなものが通過したかのように見えた。

 リサ「……!?」

 リサはその筋が通過して行ったと思われる方向を見た。
 それは廊下の突き当り、または台所の方。

 リサ「気のせいか……?」

 今は気配はしない。
 台所の方を見に行くか迷ったが、激しい尿意の波が来たので、それは断念することにした。

 ……それはけして、リサの気のせいではなかった。
 リサは第1形態の鬼の姿をしている。
 その能力による気配の察知は、けして間違っていなかったのだ。
 何故なら、本当に台所に『あるモノ』が潜んでいたからだ。
 それは空中に浮かぶ2つの『目玉』。
 台所から廊下の方を窺っている。
 つまり、リサの方を窺っている。

 鬼の男「やっぱりあれは、鬼の女だ。本当にいたんだ。しかも、かわいい……」

 2つの目玉はゆっくりとリサに近づいていった。
 リサはまだ気づいていない。
 だが、リサのある行動から、その目玉の動きが止まった。

 リサ「『体操服のJKに男子用小便器を使わせてみた!』かぁ……。うふふふ……」

 リサは夢の内容を思い出して、男子用小便器の照明のスイッチを入れ、中に入って行った。

 鬼の男「う、うっそ……?え……?お、男ォ!?そ、そんなバカな……!」

 目玉がグルグルとトイレの周辺を旋回する。
 まるで、虫よけスプレーをされた人間の肌の上を旋回する蚊のように。

 鬼の男「う、うそだうそだうそだうそだうそだ!あんなにかわいい女の子が、男だなんてことは……絶対……絶対無い……わぁぁぁぁぁっ!!」
 リサ「うーん……。やっぱり、女の子じゃ、こんなの使えないよ……。も、漏れそうだから、やっぱり隣にしよ……」

 ザザザザザザ……!

 リサ「え……?」

 トイレの外、つまり裏庭を誰かが走って行く音が聞こえた。
 リサは窓を開けて、外を覗いた。
 あいにく、防犯の為の鉄格子がされている為、窓から顔を覗かせることができない。
 だがリサは、僅かに鬼の臭いを嗅ぎ取った。

 リサ「お、鬼だ!鬼が出たーっ!!……けど、その前にトイレ」

 リサは隣の洋式トイレの個室で用を足した後……。

 リサ「先生!先生!」

 愛原を叩き起こした。

 愛原「な、何だよ?まだ、夜中じゃないか……!」
 リサ「鬼が外にいたみたいなの!」
 愛原「な、何いっ!?」

 リサの声に、全員が飛び起きた。

 愛原「すぐに確認するぞ!リサ、案内してくれ!」
 リサ「分かった!」

 愛原はパジャマから着替えると、すぐに上着を羽織った。
 そして、枕元に置いていたショットガンを手に取る。
 高橋も同様の行動をし、44マグナム(デザートイーグル)を手にした。

 愛原「絵恋さんは家の中にいてくれ!パールは絵恋さんを守って!」
 パール「了解しました」

 パールはサバイバルナイフを手にしていた。

 愛原「行くぞ!」
 リサ「こっちだよ」

 玄関から見ると、トイレは裏手にある。
 庭を通って、裏手に回ることにした。
 そして、勝手口の前の通った時だった。

 愛原「おい、勝手口が開いてるぞ!」

 ほんの僅かに勝手口が開いていた。

 愛原「鍵を掛けて無かったのか!?」
 高橋「ど、どうでしょう?一切、開閉しなかったもんで、気にしてませんでした」

 玄関の方は戸締りしている。
 また、窓の方も全ての窓が閉まっていることを確認していた。
 ということは、この流れで勝手口の施錠も確認しているはずだが……。
 尚、ガスストーブの換気は換気扇を回して換気している。
 高橋は鍵を確認した。

 高橋「先生、ピッキングされた跡があります」
 愛原「何だって!?すると、鬼は……」
 リサ「勝手口から入って、勝手口から出て、それからトイレの後ろを通って逃げたんじゃない?」

 よく見ると、確かに玄関の前の門扉から新しい足跡がある。
 玄関のピッキングは諦めて、勝手口に回ったようだ。
 そして、勝手口から中に入ったのか?
 しかし、ドアを開けてみても、入った形跡は無かった。
 人を何人も食った鬼は、独特の体臭がする為、その場に留まれば、残り香がするとリサは言っていた。
 それが無かったことから、勝手口は開けたものの、中には入らなかったということになる。

 リサ「あっ、あの一筋の光……」
 愛原「なに?」

 リサはトイレに起きてから、一筋の光のような物を見たことを話した。

 高橋「ライトの明かりとかですかね?」

 高橋はヘッドランプを指さして言った。

 愛原「なるほどな」
 リサ「でも、鬼はそんなもの使わなくても、目が見えるはずだけど?」
 愛原「必ずしも見えるとは限らないだろう」
 リサ「そうかなぁ……」
 愛原「恐らく、こういうことだろう。勝手口を開けて、中に入る前に、ライトの光か何かで、中の様子を探ったんだろう。その時、リサがトイレに起きて来たんで、見つかったと思って慌てて逃げたんじゃないか?」
 高橋「なるほど!さすがです!」

 トイレの後ろに回ると、確かに足跡があった。
 その足跡は更に続いており、どうやら塀を飛び越えて外に出たようである。

 愛原「くそっ!新しい雪が積もってて、足跡が消えている!」

 その為、塀を飛び越えた後、鬼がどちらに逃げたか不明であった。

 愛原「とにかく、メールで報告しておこう」
 高橋「はい」
 リサ「わたし、近くを探してみようか?」
 愛原「いや、いい。深追いは危険だ。取りあえず、家の中に戻るぞ。で、万が一の為に家の中も捜索してみよう」
 高橋「分かりました」

 リサ達は家の中に戻った。
 そして、今一度家の中を確認したり、愛原がメールで関係各所に報告し、再び布団の中に入った時には、既に午前3時を過ぎていた。

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