[6月28日14:00.仙台市泉区 アリスの研究所 敷島孝夫]
ザァーと強い雨の降る中、敷島が研究所に戻って来た。
「ただいまァ」
「あっ、プロデューサー。お帰りなさい」
小さなエントランスホールのソファに、KAITOが座っていた。
敷島の姿を見ると立ち上がって出迎える。
「さっきまで晴れてたのに、タイミング悪かったですねぇ……」
「こんなん、いちいち気にしてたらキリが無いよ」
「アリス博士は?」
「財団や中央科学技術局の役人と口ゲンカしてるよ。科学者と官僚間で、俺みたいな事務方は蚊帳の外だよ」
「『だからあれは想定外だって言ってんでしょ!ただの事故よ!事故!』って、ところかしら?」
奥からMEIKOがニヤけた顔でやってきた。
「あいつもワンパターンなんだよ。あれ?整備してくれてんの、誰?」
「奈津子博士です」
「ああ、そうか」
「ほい、次はKAITOだって」
MEIKOはボカロ試作機仲間の肩をポンと叩いた。
「了解。じゃ、ちょっと行ってきます」
「ああ」
KAITOは奥の研究室に向かった。
敷島は隣の事務室に入る。
「はー、涼しい」
ジメジメした中、エアコンの効いた事務室は別世界のようだ。
「で、エミリーが連行されたのはいいけど、何でミクまで?可哀想じゃない」
一緒に入ってきたMEIKOが文句を言った。
「連行とか言うな。まあ……ミクの歌がきっかけだったのは事実だからねぇ……」
「ミクはただ、スケジュール通りに番組で歌ってただけじゃん?」
もっとも、敷島がラジオを受信したからというのは華麗にスルーされた。
「遺産捜索じゃなくて、俺はプロデューサーらしく、ミクについていてやれば良かったかな……」
「今更そんなこと言って……」
「まあまあ」
「アッ、敷島参事」
そこへマリオがやってきた。
ウィリーが開発した無差別テロロボット“バージョン・シリーズ”を、後継のアリスが再開発したバージョン5.0が原型で、更に“アリス・オリジナル・ヴァージョン”として、今では財団のかませ犬……もとい、ベタな昼行燈キャラの法則アリス研究所の世話役として稼働している。
「何だ?この前みたいにベニテングタケの大量生産はカンベンだぞ?」
アリスが製作したのは2機。
兄弟という設定で、それが任天堂の不朽の名作“スーパーマリオ・ブラザーズ”のマリオとルイージをイメージしたということで、赤い塗装をした方をマリオと呼んでいる。
「イエ、チョット居住区デ雨漏リガ発生シマシタノデ、修理ヲ行イマス」
「またかよ?改築したばっかなのに……」
敷島は席を立った。
「この前なんか、シャワーが水漏れしたんだって?」
と、MEIKO。
「ソレはルイージが直シマシタ」
「今度はどこが雨漏りしたんだ?案内してくれ」
「ハイ。コチラデス」
「ったく、どうなってんだよ、藤谷組ィ!ちゃんと施工しろよ、藤谷組ィ!頼むぞ、藤谷組ィ!」
敷島が事務室から出ると、外線電話が鳴った。
MEIKOが電話を取る。
「はい、アリス研究所でございます。……あ、はい。いつもお世話に……え?……プロデューサーからお電話を差し上げると言ってまだ来ない!?申し訳ありません!大至急すぐに……はい!……申し訳ありません!失礼します!」
電話を切るMEIKO。
そして、
「ちょっとプロデューサー!アンタこそ番組制作会社の担当さんに電話忘れてんじゃんよ!?どうなってんだよ、プロデューサー!ちゃんと仕事しろよ、プロデューサー!頼むぞ、プロデューサー!」
[6月28日18:00.アリスの研究所 敷島孝夫]
「え?まだ終わらないの?そんなに事情聴取掛かるかねぇ……」
敷島は事務室で、アリスからの電話を受けていた。
「ミクはうちのトップアイドルなんだから、早いとこ解放してもらわないと困るよ。来月は都内で収録やミニライブが目白押しなんだから」
{「ちったぁ、アタシの心配もしろ!」}
「いや、俺はプロデューサーだから……。で、役人さん達、何だって?」
{「遺産全部回収しないことには、財団法人の資格を取り消してやるって」}
「そりゃ横暴だな。いくら天下の文部科学省でも力の強い中央科学技術局だからって……。別名、“科学技術省”だから、あれ」
※もちろん、架空の局です。
{「何それ?」}
「いや、中央省庁の一部局のくせに、力がそれこそ1つの省庁並にあるもんだから、俺達、財団の事務方は“科学技術省”って呼んでるんだよ」
{「そんなのどうだっていいわ。それよりこの分だと、もう一回潜るハメになるわね」}
「潜って何か見つかるものでもないだろう。爆発したんだから……」
{「アタシ的には爆発した原因が、本当に初音ミクの歌のせいなのかってことよ」}
「あー、そうそう。俺も気になってた。ミクが仙台市内のテレビ局で歌ってたわけだ。その時、俺達は宮城県沖、太平洋フェリーの航路の近くにいたわけだろ?いくらボカロの歌が何か作用があるったって、そんだけ離れてりゃピンポイントで宝箱を爆発させるわけないだろ」
{「アタシもそう思うのよ」}
「まあ、肝心の宝箱が爆発しちゃあ、世話無いけどさ……」
{「エミリーが土壇場で回収した破片を調べるしか無いね」}
「そもそも、あれは中身があったのか?」
{「……What?」}
「いや、だってエミリーが土壇場で回収したのは宝箱の破片だけだろ?中身の破片くらい回収できても良かっただろうに……」
{「そうか……。そうだよね」}
「何気にダミーだったりしてな。まあ、あそこまでやってダミーでしたってのもヒドいオチだけどな。じゃ、まあとにかく、科学的な論戦についてはお前に任すよ。一応こっちはネットで対策しておくから」
敷島がネットでどんな対策をしようというのかは【お察しください】。
ザァーと強い雨の降る中、敷島が研究所に戻って来た。
「ただいまァ」
「あっ、プロデューサー。お帰りなさい」
小さなエントランスホールのソファに、KAITOが座っていた。
敷島の姿を見ると立ち上がって出迎える。
「さっきまで晴れてたのに、タイミング悪かったですねぇ……」
「こんなん、いちいち気にしてたらキリが無いよ」
「アリス博士は?」
「財団や中央科学技術局の役人と口ゲンカしてるよ。科学者と官僚間で、俺みたいな事務方は蚊帳の外だよ」
「『だからあれは想定外だって言ってんでしょ!ただの事故よ!事故!』って、ところかしら?」
奥からMEIKOがニヤけた顔でやってきた。
「あいつもワンパターンなんだよ。あれ?整備してくれてんの、誰?」
「奈津子博士です」
「ああ、そうか」
「ほい、次はKAITOだって」
MEIKOはボカロ試作機仲間の肩をポンと叩いた。
「了解。じゃ、ちょっと行ってきます」
「ああ」
KAITOは奥の研究室に向かった。
敷島は隣の事務室に入る。
「はー、涼しい」
ジメジメした中、エアコンの効いた事務室は別世界のようだ。
「で、エミリーが連行されたのはいいけど、何でミクまで?可哀想じゃない」
一緒に入ってきたMEIKOが文句を言った。
「連行とか言うな。まあ……ミクの歌がきっかけだったのは事実だからねぇ……」
「ミクはただ、スケジュール通りに番組で歌ってただけじゃん?」
もっとも、敷島がラジオを受信したからというのは華麗にスルーされた。
「遺産捜索じゃなくて、俺はプロデューサーらしく、ミクについていてやれば良かったかな……」
「今更そんなこと言って……」
「まあまあ」
「アッ、敷島参事」
そこへマリオがやってきた。
ウィリーが開発した無差別テロロボット“バージョン・シリーズ”を、後継のアリスが再開発したバージョン5.0が原型で、更に“アリス・オリジナル・ヴァージョン”として、今では
「何だ?この前みたいにベニテングタケの大量生産はカンベンだぞ?」
アリスが製作したのは2機。
兄弟という設定で、それが任天堂の不朽の名作“スーパーマリオ・ブラザーズ”のマリオとルイージをイメージしたということで、赤い塗装をした方をマリオと呼んでいる。
「イエ、チョット居住区デ雨漏リガ発生シマシタノデ、修理ヲ行イマス」
「またかよ?改築したばっかなのに……」
敷島は席を立った。
「この前なんか、シャワーが水漏れしたんだって?」
と、MEIKO。
「ソレはルイージが直シマシタ」
「今度はどこが雨漏りしたんだ?案内してくれ」
「ハイ。コチラデス」
「ったく、どうなってんだよ、藤谷組ィ!ちゃんと施工しろよ、藤谷組ィ!頼むぞ、藤谷組ィ!」
敷島が事務室から出ると、外線電話が鳴った。
MEIKOが電話を取る。
「はい、アリス研究所でございます。……あ、はい。いつもお世話に……え?……プロデューサーからお電話を差し上げると言ってまだ来ない!?申し訳ありません!大至急すぐに……はい!……申し訳ありません!失礼します!」
電話を切るMEIKO。
そして、
「ちょっとプロデューサー!アンタこそ番組制作会社の担当さんに電話忘れてんじゃんよ!?どうなってんだよ、プロデューサー!ちゃんと仕事しろよ、プロデューサー!頼むぞ、プロデューサー!」
[6月28日18:00.アリスの研究所 敷島孝夫]
「え?まだ終わらないの?そんなに事情聴取掛かるかねぇ……」
敷島は事務室で、アリスからの電話を受けていた。
「ミクはうちのトップアイドルなんだから、早いとこ解放してもらわないと困るよ。来月は都内で収録やミニライブが目白押しなんだから」
{「ちったぁ、アタシの心配もしろ!」}
「いや、俺はプロデューサーだから……。で、役人さん達、何だって?」
{「遺産全部回収しないことには、財団法人の資格を取り消してやるって」}
「そりゃ横暴だな。いくら天下の文部科学省でも力の強い中央科学技術局だからって……。別名、“科学技術省”だから、あれ」
※もちろん、架空の局です。
{「何それ?」}
「いや、中央省庁の一部局のくせに、力がそれこそ1つの省庁並にあるもんだから、俺達、財団の事務方は“科学技術省”って呼んでるんだよ」
{「そんなのどうだっていいわ。それよりこの分だと、もう一回潜るハメになるわね」}
「潜って何か見つかるものでもないだろう。爆発したんだから……」
{「アタシ的には爆発した原因が、本当に初音ミクの歌のせいなのかってことよ」}
「あー、そうそう。俺も気になってた。ミクが仙台市内のテレビ局で歌ってたわけだ。その時、俺達は宮城県沖、太平洋フェリーの航路の近くにいたわけだろ?いくらボカロの歌が何か作用があるったって、そんだけ離れてりゃピンポイントで宝箱を爆発させるわけないだろ」
{「アタシもそう思うのよ」}
「まあ、肝心の宝箱が爆発しちゃあ、世話無いけどさ……」
{「エミリーが土壇場で回収した破片を調べるしか無いね」}
「そもそも、あれは中身があったのか?」
{「……What?」}
「いや、だってエミリーが土壇場で回収したのは宝箱の破片だけだろ?中身の破片くらい回収できても良かっただろうに……」
{「そうか……。そうだよね」}
「何気にダミーだったりしてな。まあ、あそこまでやってダミーでしたってのもヒドいオチだけどな。じゃ、まあとにかく、科学的な論戦についてはお前に任すよ。一応こっちはネットで対策しておくから」
敷島がネットでどんな対策をしようというのかは【お察しください】。
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