[1月24日14:00.イリノイ州シカゴ・市街地内のとある複合ビル レイチェル&コードネーム“ショーン”]
「“監視者”さんに怒られちゃったね……」
ばつの悪そうな顔をするショーン。
既に“監視者”なる黒スーツ、黒サングラスの男はビルから退去している。
「全く。プレミアム・エコノミーぐらいでグダグダ抜かしやがって。細かすぎる男はモテないわよ」
「まあ、『プレミアム・エコノミーはファーストクラス同様、座席数が少ないから目立つ』ってのは分かるけどね」
「だったらビジネスクラスに乗せろっての。座席数で言うなら、そっちの方が多いんだから」
「いや、だから、エコノミーでいいって……。しっかし、あの人も変わった人だよね」
「そりゃそうでしょ。あいつ、人じゃないもの」
「え?」
「オレンジスター・シティでアタシが率いていた人型ロボットの、もっと人間そっくりに造ったヤツよ」
「ええーっ!?」
「言われるまで分かんなかったでしょ?」
「う、うん」
「なーんかね、昔、日本で執事ロボットをやってたみたいなんだけど、用途変更で、今じゃアタシ達の監視者よ。偉くなったものね」
「そ、そうかな……」
その時、2人のいるラウンジ内のテレビが臨時ニュースを伝える。
〔「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお送りします。ブラジルのサンパウロ市で、武装ゲリラの集団がオフィスビルの1つに立て籠もり、中にいた日系企業の社員多数を人質にしています。……」〕
「ええっ?またイスラム過激派かなぁ?」
ショーンが首を傾げていると、
「いやー、違うと思うよ。南米の場合は、むしろ極左ゲリラの方が多いから。昔、ペルーでも日本大使公邸に武装ゲリラが立て籠もった事件があったでしょう?」
「……あったっけ?」
「あったのよ。そいつらはイスラムじゃなくて、極左のゲリラだったから。イスラム過激派は男しかいないでしょう?」
「みたいだね」
「極左ゲリラの構成員には女性もいたりするのよ。ペルーの事件にも女性ゲリラがいたってよ」
「あまり日本じゃ聞いたことないね」
因みに南米でも北部の方は極左の活動が多いが、南部の方はそんなでもないということ。
と、その時だった。
ビルのエントランスの方から、爆発音が聞こえた。
それも、1発や2発ではない。
「な、何だ!?」
「!? こっちよ、ショーン!」
レイチェルは急いでショーンの手を引いた。
[同日15:00.シカゴ市内の複合ビル前 テレビリポーター]
「……はい、こちら現場の前です。先ほど、午後2時くらいのことですが、武装集団によるテロが起き、ビル内にいた多数の人を人質に取るという事件が発生しています。彼らはイスラム過激派組織“イスラム特高警察”と見られ、『邪教を取り締まる』『神は偉大なり!』と、叫びながら手榴弾やマシンガンを発砲して侵入したとのことです。尚、現在、現場の前の通りは警察によって封鎖され、物々しい雰囲気になっています。……以上、現場の前からお伝えしました」
[同日16:00.複合ビル4Fのオフィス レイチェル&“ショーン”]
「完全に誤算だったわ……。まさか、ここで別のテロ組織に襲われるなんて……」
レイチェルは頭を抱えた。
2人は避難して無人となった、とある企業の事務室の中に隠れている。
「レイチェルの組織に救助とか頼めないの?」
「向こうでも対策を練ってるとは思うけど、下は警察が押さえちゃってるからね。一応、組織にはアタシ達がどこに避難しているかは伝えてあるから、後はテロリスト共に見つからないようにして……」
「プレミアム・エコノミー予約しちゃったから、怒って見捨てられたりして……」
「例のブツはアタシが持ってるんだから、最低限それは無いって」
レイチェルは髪留めの中にメモリーを隠している。
「一体、それは何なの?」
「まあ……秘密の大事なモノでね。さすがにそれはショーンにも教えられないの。大丈夫。ショーンには迷惑掛けないって言ったでしょ?……ちょっと今回は約束キビしいけど……」
「ううっ……」
「何とかショーンだけでも、ここから脱出させられないかな……。!」
その時、廊下から足音が聞こえた。
「隠れてるヤツはいないか!?偉大なるアラーの御前では、隠れても無駄だぞ!」
テロリストが銃火器を手に、捜索にやってきた。
「アラー最大の敵、十字軍は皆殺しだ!」
「た、助けてください!」
ショーン達の近くに隠れていたと思われるアジア系の男が出て来た。
「わ、私は仏教徒です!クリスチャンじゃありません!だから助けてください!」
「おう、そうか。お前はクリスチャンじゃなく、仏教徒か。そうかそうか」
「はい!」
だが次の瞬間、そのアジア系の男はマグナムで頭を撃ち抜かれて即死した。
「ムスリム以外は全て邪教徒なり」
その様子を見ていたショーンはガタガタ震えて、
「こ、こりゃダメだ。交渉の余地無しだよォ……」
「シーッ!」
「む?他に誰かいるのか!?」
テロリストはマグナムではなく、今度はマシンガンを構えて近づいて来た。
「あっ、日本人特有の無宗教って言ったら許してくれるかな?」
「『アラーを信じない罪』とか何とかいって、やっぱり撃たれるだけだからやめなさい。世の中には、自分達の神仏を信じないだけで罪と断じる宗教もあるのよ」
尚、日蓮正宗も含む(不信謗法)。
と、そこへ、
「おい、ムスリムが他にもいるみたいだぞ!」
別のテロリストがやってきた。
「マジか?どこに?」
「あっちだ」
その会話に、
(なるほど。普通のイスラム教徒も、このビルにはいたわけか。その人達は無条件で解放されるかな)
と、ショーンは思ったが、
「ただ、シーア派だそうだが?」
「じゃあ殺せ。スンニ派以外は認めない」
「了解」
(はあ!?)
まあ、日蓮正宗と創価学会、顕正会が相容れないのと同じことだ。
死人が出ないだけマシというもの。
テロリスト達が去った後、通信リンクが繋がった。
{「作戦が決まった。UAVを使用する」}
「UAV!?そんなものがこのビルにあるの?!」
{「ああ。そのビルの屋上に、週末のイベント用として置かれていたそうだ。本来UAVは無人飛行機だが、空中散歩用に2人乗れるように改造されている。それを使って脱出しろ」}
「だけど、それだと目立たない?」
{「あとのサポートはこちらで行う。とにかくキミ達は、そのビルから無事に脱出することを優先しろ」}
「了解。じゃ、屋上に行きましょう」
「簡単に行ける状態じゃないよー」
「大丈夫。ショーンは何も心配しないで。あなたは……私が守るもの」
「う、うん」
そっと廊下を伺って、様子を伺う。
廊下には、先ほど頭を撃たれたアジア人の死体しか無かった。
「何か作戦はあるの?」
「ほぼ間違い無く、屋上に行くまでの間、テロリストに遭遇するでしょうね」
「ええっ?」
「だから、武器は入手した方がいいと思う」
「そう簡単に手に入るかな?」
「まあ、作戦はあるけどね。こっちよ」
2人はエレベーターホールへ向かった。
「“監視者”さんに怒られちゃったね……」
ばつの悪そうな顔をするショーン。
既に“監視者”なる黒スーツ、黒サングラスの男はビルから退去している。
「全く。プレミアム・エコノミーぐらいでグダグダ抜かしやがって。細かすぎる男はモテないわよ」
「まあ、『プレミアム・エコノミーはファーストクラス同様、座席数が少ないから目立つ』ってのは分かるけどね」
「だったらビジネスクラスに乗せろっての。座席数で言うなら、そっちの方が多いんだから」
「いや、だから、エコノミーでいいって……。しっかし、あの人も変わった人だよね」
「そりゃそうでしょ。あいつ、人じゃないもの」
「え?」
「オレンジスター・シティでアタシが率いていた人型ロボットの、もっと人間そっくりに造ったヤツよ」
「ええーっ!?」
「言われるまで分かんなかったでしょ?」
「う、うん」
「なーんかね、昔、日本で執事ロボットをやってたみたいなんだけど、用途変更で、今じゃアタシ達の監視者よ。偉くなったものね」
「そ、そうかな……」
その時、2人のいるラウンジ内のテレビが臨時ニュースを伝える。
〔「番組の途中ですが、ここで臨時ニュースをお送りします。ブラジルのサンパウロ市で、武装ゲリラの集団がオフィスビルの1つに立て籠もり、中にいた日系企業の社員多数を人質にしています。……」〕
「ええっ?またイスラム過激派かなぁ?」
ショーンが首を傾げていると、
「いやー、違うと思うよ。南米の場合は、むしろ極左ゲリラの方が多いから。昔、ペルーでも日本大使公邸に武装ゲリラが立て籠もった事件があったでしょう?」
「……あったっけ?」
「あったのよ。そいつらはイスラムじゃなくて、極左のゲリラだったから。イスラム過激派は男しかいないでしょう?」
「みたいだね」
「極左ゲリラの構成員には女性もいたりするのよ。ペルーの事件にも女性ゲリラがいたってよ」
「あまり日本じゃ聞いたことないね」
因みに南米でも北部の方は極左の活動が多いが、南部の方はそんなでもないということ。
と、その時だった。
ビルのエントランスの方から、爆発音が聞こえた。
それも、1発や2発ではない。
「な、何だ!?」
「!? こっちよ、ショーン!」
レイチェルは急いでショーンの手を引いた。
[同日15:00.シカゴ市内の複合ビル前 テレビリポーター]
「……はい、こちら現場の前です。先ほど、午後2時くらいのことですが、武装集団によるテロが起き、ビル内にいた多数の人を人質に取るという事件が発生しています。彼らはイスラム過激派組織“イスラム特高警察”と見られ、『邪教を取り締まる』『神は偉大なり!』と、叫びながら手榴弾やマシンガンを発砲して侵入したとのことです。尚、現在、現場の前の通りは警察によって封鎖され、物々しい雰囲気になっています。……以上、現場の前からお伝えしました」
[同日16:00.複合ビル4Fのオフィス レイチェル&“ショーン”]
「完全に誤算だったわ……。まさか、ここで別のテロ組織に襲われるなんて……」
レイチェルは頭を抱えた。
2人は避難して無人となった、とある企業の事務室の中に隠れている。
「レイチェルの組織に救助とか頼めないの?」
「向こうでも対策を練ってるとは思うけど、下は警察が押さえちゃってるからね。一応、組織にはアタシ達がどこに避難しているかは伝えてあるから、後はテロリスト共に見つからないようにして……」
「プレミアム・エコノミー予約しちゃったから、怒って見捨てられたりして……」
「例のブツはアタシが持ってるんだから、最低限それは無いって」
レイチェルは髪留めの中にメモリーを隠している。
「一体、それは何なの?」
「まあ……秘密の大事なモノでね。さすがにそれはショーンにも教えられないの。大丈夫。ショーンには迷惑掛けないって言ったでしょ?……ちょっと今回は約束キビしいけど……」
「ううっ……」
「何とかショーンだけでも、ここから脱出させられないかな……。!」
その時、廊下から足音が聞こえた。
「隠れてるヤツはいないか!?偉大なるアラーの御前では、隠れても無駄だぞ!」
テロリストが銃火器を手に、捜索にやってきた。
「アラー最大の敵、十字軍は皆殺しだ!」
「た、助けてください!」
ショーン達の近くに隠れていたと思われるアジア系の男が出て来た。
「わ、私は仏教徒です!クリスチャンじゃありません!だから助けてください!」
「おう、そうか。お前はクリスチャンじゃなく、仏教徒か。そうかそうか」
「はい!」
だが次の瞬間、そのアジア系の男はマグナムで頭を撃ち抜かれて即死した。
「ムスリム以外は全て邪教徒なり」
その様子を見ていたショーンはガタガタ震えて、
「こ、こりゃダメだ。交渉の余地無しだよォ……」
「シーッ!」
「む?他に誰かいるのか!?」
テロリストはマグナムではなく、今度はマシンガンを構えて近づいて来た。
「あっ、日本人特有の無宗教って言ったら許してくれるかな?」
「『アラーを信じない罪』とか何とかいって、やっぱり撃たれるだけだからやめなさい。世の中には、自分達の神仏を信じないだけで罪と断じる宗教もあるのよ」
尚、日蓮正宗も含む(不信謗法)。
と、そこへ、
「おい、ムスリムが他にもいるみたいだぞ!」
別のテロリストがやってきた。
「マジか?どこに?」
「あっちだ」
その会話に、
(なるほど。普通のイスラム教徒も、このビルにはいたわけか。その人達は無条件で解放されるかな)
と、ショーンは思ったが、
「ただ、シーア派だそうだが?」
「じゃあ殺せ。スンニ派以外は認めない」
「了解」
(はあ!?)
まあ、日蓮正宗と創価学会、顕正会が相容れないのと同じことだ。
死人が出ないだけマシというもの。
テロリスト達が去った後、通信リンクが繋がった。
{「作戦が決まった。UAVを使用する」}
「UAV!?そんなものがこのビルにあるの?!」
{「ああ。そのビルの屋上に、週末のイベント用として置かれていたそうだ。本来UAVは無人飛行機だが、空中散歩用に2人乗れるように改造されている。それを使って脱出しろ」}
「だけど、それだと目立たない?」
{「あとのサポートはこちらで行う。とにかくキミ達は、そのビルから無事に脱出することを優先しろ」}
「了解。じゃ、屋上に行きましょう」
「簡単に行ける状態じゃないよー」
「大丈夫。ショーンは何も心配しないで。あなたは……私が守るもの」
「う、うん」
そっと廊下を伺って、様子を伺う。
廊下には、先ほど頭を撃たれたアジア人の死体しか無かった。
「何か作戦はあるの?」
「ほぼ間違い無く、屋上に行くまでの間、テロリストに遭遇するでしょうね」
「ええっ?」
「だから、武器は入手した方がいいと思う」
「そう簡単に手に入るかな?」
「まあ、作戦はあるけどね。こっちよ」
2人はエレベーターホールへ向かった。
「うちは平和な宗教です!」
と言ったところで、説得力は無いよー。
言い争ってるこちら側でさえ、さすがに死人は出てないからなぁ……。
ただ、前者2つの創始者が“聖☆おにいさん”で主人公を張る中、何故アラーだけ出てこないのかを考えてみるといい。
たかだか風刺画程度でキレる連中だ。
日本の漫画でイエス・キリストやブッダとギャグを繰り広げただけで、爆弾抱え込んだテロリストが原作者の家に突撃することは目に見えている。
その宗教のどこが平和なのか!
……尚、私の小説でも大幅に黒歴史化した部分も存在する。
某武闘派法華講支部が解散したら発表することにしよう。
ちなみにキリスト教はかつて大虐殺をあちこちで繰り広げてました。
仏教だけですね。まともなのは。(まあ中国のとある皇帝は仏教で死ぬはめになりましたが。)
イエスやブッダがそのまま開祖(教祖)兼崇拝対象者なのに対し、ムハンマドはあくまで預言者という扱いで崇拝の対象ではないというのがまた面倒臭いというのもあったのかもしれません。