[5月9日20:30.冥界鉄道公社999D列車1号車内 視点:稲生勇太]
人間界への避難列車に攻め込んで来たミッドガード共和国の兵士達。
列車は今正に制圧されようとしていた。
しかし、兵士達に誤算が発生した。
『自動運転』の冥鉄列車を『手動』に切り替える方法が分からないらしい。
あいにくと兵士達はこの列車を制圧する一環で、車掌達を全員射殺してしまっていた。
そこでイリーナは一計を案じ、鉄ヲタで取りあえずハンドル操作だけなら知っている稲生を運転席に連れて行くよう、兵士達に交渉し……。
兵士A:「どけっ、道を開けろ!」
兵士B:「邪魔だ!退かんか!」
イリーナ達は兵士達に前後を挟まれ、避難民で混雑する普通車内を運転室に向かって移動した。
兵士A:「このバカたれ!車内放送で連絡するアホがどこにいる!?」
兵士C:「す、すいません」
兵士A:「何でこんな新兵にやらせたんだ?」
兵士D:「隊長が、『こういうのは若い兵隊の仕事だ』って言ってて……」
兵士A:「いや、違う。隊長はそういう意味で仰ったんじゃないと思う」
兵士B:「そりより、自称『鉄道に詳しい』ヤツを連れて来たぞ」
兵士E:「これがターゲット?」
兵士A:「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
稲生:「多分……」
兵士B:「できなかったら射殺する」
稲生:「やっぱり……」
運転席に行くと、まるでそこに透明人間の運転士がいるかのように、ハンドルがガチャガチャと動いていた。
スピードメーターを見ると、時速90キロ辺りを指している。
このキハ58系の最高速度は95キロなので、だいたい最高速度で走行していると言える。
稲生:「どれ……」
稲生は運転席に座ってみた。
確か以前乗り込んでしまった埼京線205系を使用した冥鉄電車も、ハンドルだけが自動でガチャガチャ動いていたのだった。
あの時はどうしていたか……。
いや、この列車を停車させるというのなら、後ろにある車掌用の緊急ブレーキを引っ張れば良い。
尚、電車の運転台にはある赤い緊急ブレーキボタンが、このキハ58系には無かった。
稲生:(さて、どうしたものか……)
稲生はあちこち機器を触ってみた。
だが、何がどうなるというわけでもない。
兵士A:「おい、何をしている?早く手動に切り替えろ!」
兵士B:「できなきゃ、まずコイツを殺す」
マリア:「うっ……!」
兵士Bはマリアの頭にショットガンを突き付けた。
稲生:「え、えーと……」
そこで稲生、パッと嘘を思いついた。
稲生:「ま、まず……このままでは自動運転装置を解除することができない」
兵士A:「なにっ!?」
兵士D:「ぬねの」
兵士B:「おい!」
兵士D:「……コホン。スマン」
稲生:「この列車は乗客を人間界に無事に運ぶよう、設定されている。その設定を解除しないとダメだ」
兵士A:「だから、どうしたらいい?」
稲生:「この列車は意識を持っていてね。要は生き物と同じだ。ということは、『勘違い』させればいい」
兵士A:「勘違い?」
稲生:「この列車は『実は回送でした』と誤解させるんだ。そしたら設定変更の動きをするだろうから、その動きを突いて『手動』に切り替えられる」
兵士A:「どうすればいいんだ?」
稲生:「まず、この車両にいる乗客達を全員、後ろの車両に避難させてくれ。なるべく後ろ、後ろに……。この長い編成だから、『運転士』も後ろの車両のことは分からないはずだ。少なくとも、この車両だけでも回送状態にさせるんだ。それで、『誤解』させてみる」
兵士A:「それで『手動』にできるんだな?」
稲生:「やってみなきゃ分からない」
兵士A:「その言葉、忘れるな。よし、乗客を全員後ろの車両に送り込むぞ!CとDはここに残って、こいつらを見張ってろ。妙な動きをしたら、即刻射殺して構わん」
兵士C:「はっ!」
兵士D:「了解」
兵士達は1号車の乗客に銃を突きつけ、2号車から後ろに誘導した。
稲生がイリーナに目配せをする。
稲生:(僕にできるのはここまでだ……)
イリーナは稲生の目配せに目を細めて微笑を浮かべた。
兵士C:「な、なあ?人間界のアキバってどんな所なんだ?」
マリア:「面白い街だよ」
兵士D:「そうか。オレ、この戦争が終わったら、人間界入境資格を取って、アキバに遊びに行くんだ」
稲生:(『この戦争が終わったら、○○したい』というのは、死亡フラグなんだけど……)
兵士CとD以外の兵士や乗客達が1号車から出て行った。
その直後、運転室の後ろにあるデッキの乗降ドアの窓ガラスが破られた。
そこから『人質』にされていた魔法の杖が飛び込んで来る。
兵士C:「な、何だ!?」
魔法の杖達は兵士CとDの頭やをみぞおちを攻撃し、一気にダウンさせた。
兵士A:「な、何だ!?」
兵士B:「何事だ!?」
マリア:「私達の列車からとっとと降りろ、クソ野郎共!」
マリアは兵士CとDが持っていた手榴弾を投げつけた。
どうしてマリアが手榴弾の使い方を知っているのかは、【お察しください】。
兵士A:「ぐわっ!」
兵士B:「ぎゃっ!」
最初に投げたのはCが持っていた手榴弾。
兵士E:「撃てっ!撃てっ!」
今度は兵士Dが持っていた手榴弾を投げた。
稲生:「ちょっと待った、マリア!気動車でそんなもん爆発させたら……!」
だが、遅かった。
兵士E:「!!!」
キハ58系は耐火構造になっているのだろうか?
少なくとも、燃料に軽油が使われていることは否めない。
稲生:「うわっ、引火した!」
イリーナ:「ちょっとマリア、何やってんのよ!?」
マリア:「S-Sorry!ディーゼルエンジン搭載だってこと、忘れてました!」
車内の構造的には、165系や455系などの急行形電車と似ているからか。
しかし……。
稲生:「ああっ!消火器が無い!」
イリーナ:「こうなったら、イチかバチかで吹き飛ばすわよ!」
イリーナは魔法を唱えた。
が、その前に、後ろの車両で爆発音がした。
稲生:「うわっ!」
爆発の衝撃で車両が大きく揺れる。
それだけではない!床下から大きな揺れがした!
稲生:「だ、脱線した!」
マリア:「ええっ!?師匠、早く緊急離脱を!」
イリーナ:「無理よ!亜空間トンネルの中じゃ!」
稲生:「と、取りあえず、体を低くしてどこかに掴まって!」
稲生は運転台のハンドルにしがみ付くような体勢になった。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経!早くトンネルを抜けてくれーっ!」
稲生の祈りが通じたか次の瞬間、トンネルの中ならではの響く走行音が無くなり、開けた感じがした。
が、また次の瞬間、大きな衝撃が3人を襲った。
稲生:「ぶ、ブレーキ!」
稲生は右手にあるブレーキハンドルを思いっ切り右に回した。
どうやら本当に『手動』に切り替わったのか、列車が思いっ切り減速していく。
だが、途中で何かにぶつかったりしながらの減速、そして急停車であった。
人間界への避難列車に攻め込んで来たミッドガード共和国の兵士達。
列車は今正に制圧されようとしていた。
しかし、兵士達に誤算が発生した。
『自動運転』の冥鉄列車を『手動』に切り替える方法が分からないらしい。
あいにくと兵士達はこの列車を制圧する一環で、車掌達を全員射殺してしまっていた。
そこでイリーナは一計を案じ、鉄ヲタで取りあえずハンドル操作だけなら知っている稲生を運転席に連れて行くよう、兵士達に交渉し……。
兵士A:「どけっ、道を開けろ!」
兵士B:「邪魔だ!退かんか!」
イリーナ達は兵士達に前後を挟まれ、避難民で混雑する普通車内を運転室に向かって移動した。
兵士A:「このバカたれ!車内放送で連絡するアホがどこにいる!?」
兵士C:「す、すいません」
兵士A:「何でこんな新兵にやらせたんだ?」
兵士D:「隊長が、『こういうのは若い兵隊の仕事だ』って言ってて……」
兵士A:「いや、違う。隊長はそういう意味で仰ったんじゃないと思う」
兵士B:「そりより、自称『鉄道に詳しい』ヤツを連れて来たぞ」
兵士E:「これがターゲット?」
兵士A:「おい、本当に大丈夫なんだろうな?」
稲生:「多分……」
兵士B:「できなかったら射殺する」
稲生:「やっぱり……」
運転席に行くと、まるでそこに透明人間の運転士がいるかのように、ハンドルがガチャガチャと動いていた。
スピードメーターを見ると、時速90キロ辺りを指している。
このキハ58系の最高速度は95キロなので、だいたい最高速度で走行していると言える。
稲生:「どれ……」
稲生は運転席に座ってみた。
確か以前乗り込んでしまった埼京線205系を使用した冥鉄電車も、ハンドルだけが自動でガチャガチャ動いていたのだった。
あの時はどうしていたか……。
いや、この列車を停車させるというのなら、後ろにある車掌用の緊急ブレーキを引っ張れば良い。
尚、電車の運転台にはある赤い緊急ブレーキボタンが、このキハ58系には無かった。
稲生:(さて、どうしたものか……)
稲生はあちこち機器を触ってみた。
だが、何がどうなるというわけでもない。
兵士A:「おい、何をしている?早く手動に切り替えろ!」
兵士B:「できなきゃ、まずコイツを殺す」
マリア:「うっ……!」
兵士Bはマリアの頭にショットガンを突き付けた。
稲生:「え、えーと……」
そこで稲生、パッと嘘を思いついた。
稲生:「ま、まず……このままでは自動運転装置を解除することができない」
兵士A:「なにっ!?」
兵士D:「ぬねの」
兵士B:「おい!」
兵士D:「……コホン。スマン」
稲生:「この列車は乗客を人間界に無事に運ぶよう、設定されている。その設定を解除しないとダメだ」
兵士A:「だから、どうしたらいい?」
稲生:「この列車は意識を持っていてね。要は生き物と同じだ。ということは、『勘違い』させればいい」
兵士A:「勘違い?」
稲生:「この列車は『実は回送でした』と誤解させるんだ。そしたら設定変更の動きをするだろうから、その動きを突いて『手動』に切り替えられる」
兵士A:「どうすればいいんだ?」
稲生:「まず、この車両にいる乗客達を全員、後ろの車両に避難させてくれ。なるべく後ろ、後ろに……。この長い編成だから、『運転士』も後ろの車両のことは分からないはずだ。少なくとも、この車両だけでも回送状態にさせるんだ。それで、『誤解』させてみる」
兵士A:「それで『手動』にできるんだな?」
稲生:「やってみなきゃ分からない」
兵士A:「その言葉、忘れるな。よし、乗客を全員後ろの車両に送り込むぞ!CとDはここに残って、こいつらを見張ってろ。妙な動きをしたら、即刻射殺して構わん」
兵士C:「はっ!」
兵士D:「了解」
兵士達は1号車の乗客に銃を突きつけ、2号車から後ろに誘導した。
稲生がイリーナに目配せをする。
稲生:(僕にできるのはここまでだ……)
イリーナは稲生の目配せに目を細めて微笑を浮かべた。
兵士C:「な、なあ?人間界のアキバってどんな所なんだ?」
マリア:「面白い街だよ」
兵士D:「そうか。オレ、この戦争が終わったら、人間界入境資格を取って、アキバに遊びに行くんだ」
稲生:(『この戦争が終わったら、○○したい』というのは、死亡フラグなんだけど……)
兵士CとD以外の兵士や乗客達が1号車から出て行った。
その直後、運転室の後ろにあるデッキの乗降ドアの窓ガラスが破られた。
そこから『人質』にされていた魔法の杖が飛び込んで来る。
兵士C:「な、何だ!?」
魔法の杖達は兵士CとDの頭やをみぞおちを攻撃し、一気にダウンさせた。
兵士A:「な、何だ!?」
兵士B:「何事だ!?」
マリア:「私達の列車からとっとと降りろ、クソ野郎共!」
マリアは兵士CとDが持っていた手榴弾を投げつけた。
どうしてマリアが手榴弾の使い方を知っているのかは、【お察しください】。
兵士A:「ぐわっ!」
兵士B:「ぎゃっ!」
最初に投げたのはCが持っていた手榴弾。
兵士E:「撃てっ!撃てっ!」
今度は兵士Dが持っていた手榴弾を投げた。
稲生:「ちょっと待った、マリア!気動車でそんなもん爆発させたら……!」
だが、遅かった。
兵士E:「!!!」
キハ58系は耐火構造になっているのだろうか?
少なくとも、燃料に軽油が使われていることは否めない。
稲生:「うわっ、引火した!」
イリーナ:「ちょっとマリア、何やってんのよ!?」
マリア:「S-Sorry!ディーゼルエンジン搭載だってこと、忘れてました!」
車内の構造的には、165系や455系などの急行形電車と似ているからか。
しかし……。
稲生:「ああっ!消火器が無い!」
イリーナ:「こうなったら、イチかバチかで吹き飛ばすわよ!」
イリーナは魔法を唱えた。
が、その前に、後ろの車両で爆発音がした。
稲生:「うわっ!」
爆発の衝撃で車両が大きく揺れる。
それだけではない!床下から大きな揺れがした!
稲生:「だ、脱線した!」
マリア:「ええっ!?師匠、早く緊急離脱を!」
イリーナ:「無理よ!亜空間トンネルの中じゃ!」
稲生:「と、取りあえず、体を低くしてどこかに掴まって!」
稲生は運転台のハンドルにしがみ付くような体勢になった。
稲生:「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経!早くトンネルを抜けてくれーっ!」
稲生の祈りが通じたか次の瞬間、トンネルの中ならではの響く走行音が無くなり、開けた感じがした。
が、また次の瞬間、大きな衝撃が3人を襲った。
稲生:「ぶ、ブレーキ!」
稲生は右手にあるブレーキハンドルを思いっ切り右に回した。
どうやら本当に『手動』に切り替わったのか、列車が思いっ切り減速していく。
だが、途中で何かにぶつかったりしながらの減速、そして急停車であった。
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