報恩坊の怪しい偽作家!

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“ユタと愉快な仲間たち” 「ユタの添書登山」 2

2014-10-02 14:58:17 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[9月20日06:26.JR大宮駅・京浜東北線ホーム 稲生ユウタ&威吹邪甲]

〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。今度の1番線の電車は、6時33分発、各駅停車、大船行きです〕

 ユタと威吹は、週末の大宮駅で電車を待っていた。
 カンジは今日も留守番である。

〔まもなく1番線に、当駅止まりの電車が参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください。この電車は折り返し、6時33分発、各駅停車、大船行きとなります。次は、さいたま新都心に止まります〕

 ATOSの放送が鳴り響く京浜東北線ホーム。
 平日ならもうこの時点で乗車口に列ができている時間だが、週末ともなると疎らである。

 パァァァン!と電子警笛を慣らしながら、スカイブルーの帯を巻いた電車が入線してきた。
 他線区はどうだか知らないが、この時点で1両に最低1人はグロ客がいるのが“ベタな京浜東北線の法則”である。
 グロ客とは作者が学生時代、友人達の間に流行った言葉で、『グロッキー状態の客』の略である。
 要は爆睡していて、終点でも降りてこない客のことである。

〔「おはようございます。終点、大宮、終点、大宮です。お忘れ物の無いよう、ご注意願います。……」〕

 これが平日の整列乗車の時間帯や夜間滞泊を行う最終電車であれば、駅員や乗務員がグロ客を引きずり降ろすのだろうが、そうでない場合は大抵ほったからしである。
 いつもの光景と、ユタと威吹は先月の支部登山同様、先頭車に乗り込んだ。

〔おはようございます。1番線に停車中の電車は、6時33分発、各駅停車、大船行きです。発車まで、しばらくお待ち願います〕
〔この電車は京浜東北線、各駅停車、大船行きです〕

 ところで京浜東北線の電車もE233系である以上、乗降ドアの上にモニタが2つある。
 下記は埼京線のものだが、向かって右側の表示が京浜東北線の停車駅案内になっているだけで、左側が色々な広告やニュースを流すのは同じである。

 

 何気なくそれを見ていたユタだった。
 で、その時はニュースを流していた。
『雲羽百三氏、法華講を離脱か?(冨士参詣新聞社)』
『10月1日午後6時頃、埼玉県さいたま市大宮区の宗教法人“顕正会”の本部会館から、作者の雲羽百三氏が中から出て来るのが本紙記者にスクープされた。雲羽氏は普段から、「法華講も功徳は無い」と発言しており、その動向が注目されていた』

 
『映像は記者達の質問に終始無言でタクシーに乗り込み、その場を立ち去る雲羽氏』
『尚、顕正会本部会館は「担当者がいないのでコメントできません」と、本紙の取材を拒否している』
『消息筋によれば、顕正会では17時が夕刻の勤行であり、入信勤行を行っていた可能性があるとのこと』

[同日同時刻 場所不明 イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット、大師匠]

「随分と好調のようだな……お前の愛弟子は」
 黒いローブに黒いフードを深く被った、イリーナとポーリンの師匠がしわがれた声で言った。
 イリーナはにこやかな顔をしていたし、マリアは畏まっていた。
「ええ、おかげさまで。今日は少し強めの杖が新調されるんですよ」
「うむうむ。それはいい」
 大師匠は何度も頷いた。
 老人のように見えるが、イリーナは大師匠の正体を知っている。
 わざと老人の姿をしているだけなのだと。そこはポーリンも同じである。
「更に弟子候補を見つけているようだが……。そちらの方はどうなのかね?」
「マリアを好きになってくれてるので、あと一歩のところなんですけど、先約があるのが痛いですね。何ぶん、ユウタ君も平和主義者なもんで、私達が取り合いをするのを酷く嫌うんですよ」
「なるほど。だが、それには1つ名案がある」
「名案?」
「しばらくは、現状維持になるだろうがな。それより……お前の予知夢、どうやら当たりそうだぞ」
「マリアの屋敷は大丈夫でしょうか?」
「場所的には問題無さそうだが、もし心配なら従来の場所に戻ると良い。そこなら安心だろう」
「はい」
「では、今日も“候補者”と会うのかね?」
「ええ。私達的には予定に入れてなかったんですけど、彼がどうしてもと言うので。ね?マリア」
「あ、はい!」
「必ず、人手不足を解消してみせますよ」
「ん」
 イリーナの言葉に大師匠は大きく頷いた。
「師匠、もしかして、大師匠様の名案っていうのは……」
「シッ。黙ってて」
 マリアの口を塞ぐイリーナだった。

[同日08:06.JR東京駅・東海道新幹線ホーム ユタ&威吹]

〔新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございます。まもなく17番線に8時26分発、“こだま”639号、名古屋行きが入線致します。安全柵の内側まで、お下がりください。この電車は終点まで、各駅に止まります。自由席は1号車から7号車までと、13号車から15号車です。グリーン車は8号車、9号車、10号車です。……〕

 前回は高速バスで行ったが、今日は新幹線である。
 脇坂京子氏による自動放送が流れると、品川方向からN700系が入線してきた。
 既に座席が下り方面に向いており、車内が無人であるところを見ると、大井基地から回送で来た列車らしい。

〔「お待たせ致しました。17番線に到着の電車は8時26分発、“こだま”639号、名古屋行きです。まもなくドアが開きます。乗車口まで、お進みください」〕

 ドアが開くと、2人は自由席で車中の人となった。
 適当な2人席に座ると、買い込んだ駅弁を開ける。
「だからさ、威吹、そのでっかい弁当……」
「ん?ユタもこれくらい食べないとダメだよー」
「いやー……。無理です」
 そういうユタは、カツサンドとコーヒーだけ。
 普通のミックスサンドにするつもりが、威吹に、
「肉を食べなきゃダメ」
 と、ダメ出しされてしまった。
 ユタは苦笑い。

〔ご案内致します。この電車は“こだま”号、名古屋行きです。終点、名古屋までの各駅に止まります。……〕

「魔道師達とは、いつ会うんだ?」
「取りあえず、夕方だって。だからまず、僕は普通に添書登山を受けていいみたい」
「そうか」
 六壺の夕勤行を受け、その足でバスの営業所まで向かう。
 その時点で魔道師側の方は新しい杖を手に入れてるから、その時にお披露目だそうだ。
 そして、最終の東京行きバスで一緒にユタの家へ向かうという計画である。

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1 コメント

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つぶやき (作者)
2014-10-02 19:36:25
 ったく、茶寮に潜入して飯食ってたくらいでグダグダ騒ぎやがって!
 うちの地区は、いつからフェイクみたいになったんだ?

 それより、私が以前お世話になっていたお寺の御住職が交替されたらしい。
 ここが日蓮正宗ならではシステムだ。
 他宗では代々の住職一家が寺を継いで行くのがデフォだが、日蓮正宗では住職が大石寺から派遣されているシステムを採っているので、必ずどこかの末寺で人事異動が行われている。
 それが今回、件のお寺だったというわけだ。

 それは宗門のシステムだからしょうがないとして、それが理由で公式サイト閉鎖って、どんな冗談だ???
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