[5月13日13:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
稲生達を乗せたタクシーがワンスターホテルの前に到着する。
稲生:「すいません、カードで払います」
運転手:「はい、ありがとうございます」
稲生が料金を払っている間、威吹達は先に降りた。
そして、トランクの中に入れていた荷物を取り出した。
運転手:「はい、ありがとうございましたー」
稲生:「どうもー」
荷物と言っても、威吹の土産物くらいしか無いが。
オーナー:「いらっしゃ……あ、これはこれは!」
ホテルの中に入ると、オーナーがフロントにいた。
イリーナ:「こんにちは。ちょっと地下の魔法陣を使わせてもらえる?」
オーナー:「あ、はい。どうぞどうぞ」
オーナーはエレベーターのスイッチ鍵を持って来ると、これで地下階への不停止機能を解除した。
稲生:「エレーナは寝てるんですか?」
オーナー:「いいえ。先ほど鈴木さんが来られて、一緒にホウキで空を飛んでますよ」
稲生:「マジですか!?」
マリア:(ははーん、後でカネ取る気だな……。あの守銭奴め)
イリーナ:「鈴木君の目からアタシ達を逸らす為に、彼を連れ出してくれたのかもしれないわね」
稲生:「あ、なるほど」
稲生はポンと手を叩いた。
だがそれでも、マリアは半信半疑だった。
マリア:「そうですかね……」
威吹:「いいのか?鈴木殿とやらは、普通の人間なのだろう?」
稲生:「エレーナ的にはOKみたい。不思議な魔法を披露することで、鈴木君から見物料というか、体験料をせしめようって魂胆だよ。鈴木君の実家、凄い金持ちだから」
威吹:「ユタの家よりも金持ちなのか?」
稲生:「全然全然!だって鈴木君のお父さん、国会議員だもん」
イリーナ:「ほお。それは知らなかったわねぇ……」
イリーナの目が一瞬光ったような気がした。
マリア:「それより、早く行きましょう。エレーナ達が戻って来る前に」
イリーナ:「それもそうね」
稲生達はエレベーターで地下階に下りた。
表向きは機械室や倉庫のあるフロアということになっていて、実際は確かに大部分がそうなっているのだが、ボイラー技士室があった部屋を改造して、そこをエレーナが自室として住んでいる。
もちろん今では専属のボイラー技士は存在しない為、単なる倉庫の代わりにされていたのだが、そこを改装してエレーナが住むようになった。
その部屋の前を通り過ぎて、1番奥にその魔法陣はあった。
イリーナ:「これだわ。よし、それじゃ威吹君は魔法陣の中に入って」
威吹:「うむ。なるべく時差が無いように頼む」
イリーナ:「分かってるわ」
稲生:「威吹、ありがとうね。助かったよ」
威吹:「いやいや、ユタとは長い付き合いだから。もしこれからも困ったことがあったら、何でも相談するといい。ボクにできることだったら、何でも手伝うよ」
稲生:「ありがとう」
イリーナ:「ハペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。・・・・・・・・・・・・・・・」
イリーナが魔法の詠唱を行い、稲生には判別不能な言葉を喋る。
恐らく、ラテン語なのであろうが。
魔法陣が光り出し、威吹の体が包まれる。
イリーナ:「・・・・・!ルゥ・ラ!」
最後の呪文を唱えると、威吹が完全に白い光に包まれ、そして消えた。
稲生:「先生、これで威吹は魔界に帰ったんですね?」
イリーナ:「ええ、そうよ」
イリーナは大きく頷いた。
イリーナ:「時間の調整が大変だったけどね」
稲生:「えっ、そうなんですか?」
マリア:「あー、あの時計がそうだったんですか」
稲生:「えっ?」
稲生には見えなかったが、マリアには見えていた。
魔法陣の周りを何個か歪んだ形の大きな懐中時計が、グルグルと回っていたのだそうだ。
稲生には魔法陣から浮かび上がった白い光にしか見えなかったが、マリアには光る大きな時計に見えたらしい。
イリーナ:「これがクロックワーカーの力の1つよ」
マリア:「異世界と行き来する際、時間軸をズラさないようにする力ですか……」
マリアは溜め息をついた。
それは『自分には難しくて、とてもマスターできるのかどうか不安でしょうがない』というものであったが、稲生はそんな溜め息すら出ないほどであった。
1階に戻ろうとエレベーターのボタンを押すと、エレベーターが5階から下りて来る所だった。
それが1階で止まり、しばらくしてから地下階に下りて来た。
そのエレベーターには誰も乗っていない。
つまり、誰かが5階から乗って1階で降りたのだ。
それが誰なのかというと……。
(BGM:https://www.youtube.com/watch?v=ad9vpaf2bVk「恋色マスタースパーク」→https://www.youtube.com/watch?v=tljasHkSDUc「メイガスナイト」)
稲生:「ああ、やっぱりエレーナと鈴木君だったか」
1階に戻って来た稲生達。
エレベーターを降りた先にある小さなロビー。
そこにエレーナと鈴木がいた。
鈴木:「稲生先輩達!?どうしてここに?」
イリーナ:「エレーナに会いに来たんだよ。エレーナ、このホテルに住み込みで働いてるでしょ?直接部屋に行ってみたんだけど、いなかったからね、戻って来た」
鈴木:「エレーナの部屋に行って来たんですか!?俺も行きたい!」
エレーナ:「ダメ!」
鈴木:「どんな部屋でしたか!?」
イリーナ:「いや、部屋の中までは見てないよ。マリアなら入ったことあるでしょ?」
マリア:「ええ」
鈴木:「どんな部屋!?」
マリア:「あー……」
マリアはチラッとエレーナを見た。
エレーナはギロッとマリアを睨みつけている。
エレーナ:(言ったらコロス!)
マリア:「……本人から直接聞いたら?」
鈴木:「そんなぁ!」
稲生:「大丈夫。鈴木君なら、きっとエレーナを堕とすことができるから、その時に部屋に入れてもらいなよ」
マリア:「良かったな、エレーナ?やっと処女を捨てることができるぞ?」
マリア、嗜虐的な笑みを浮かべてポンとエレーナの肩を叩いた。
エレーナ:「オマエらなぁ…!!」
オーナー:「あの、お迎えのタクシーが到着してるんですけど……?」
稲生達を乗せたタクシーがワンスターホテルの前に到着する。
稲生:「すいません、カードで払います」
運転手:「はい、ありがとうございます」
稲生が料金を払っている間、威吹達は先に降りた。
そして、トランクの中に入れていた荷物を取り出した。
運転手:「はい、ありがとうございましたー」
稲生:「どうもー」
荷物と言っても、威吹の土産物くらいしか無いが。
オーナー:「いらっしゃ……あ、これはこれは!」
ホテルの中に入ると、オーナーがフロントにいた。
イリーナ:「こんにちは。ちょっと地下の魔法陣を使わせてもらえる?」
オーナー:「あ、はい。どうぞどうぞ」
オーナーはエレベーターのスイッチ鍵を持って来ると、これで地下階への不停止機能を解除した。
稲生:「エレーナは寝てるんですか?」
オーナー:「いいえ。先ほど鈴木さんが来られて、一緒にホウキで空を飛んでますよ」
稲生:「マジですか!?」
マリア:(ははーん、後でカネ取る気だな……。あの守銭奴め)
イリーナ:「鈴木君の目からアタシ達を逸らす為に、彼を連れ出してくれたのかもしれないわね」
稲生:「あ、なるほど」
稲生はポンと手を叩いた。
だがそれでも、マリアは半信半疑だった。
マリア:「そうですかね……」
威吹:「いいのか?鈴木殿とやらは、普通の人間なのだろう?」
稲生:「エレーナ的にはOKみたい。不思議な魔法を披露することで、鈴木君から見物料というか、体験料をせしめようって魂胆だよ。鈴木君の実家、凄い金持ちだから」
威吹:「ユタの家よりも金持ちなのか?」
稲生:「全然全然!だって鈴木君のお父さん、国会議員だもん」
イリーナ:「ほお。それは知らなかったわねぇ……」
イリーナの目が一瞬光ったような気がした。
マリア:「それより、早く行きましょう。エレーナ達が戻って来る前に」
イリーナ:「それもそうね」
稲生達はエレベーターで地下階に下りた。
表向きは機械室や倉庫のあるフロアということになっていて、実際は確かに大部分がそうなっているのだが、ボイラー技士室があった部屋を改造して、そこをエレーナが自室として住んでいる。
もちろん今では専属のボイラー技士は存在しない為、単なる倉庫の代わりにされていたのだが、そこを改装してエレーナが住むようになった。
その部屋の前を通り過ぎて、1番奥にその魔法陣はあった。
イリーナ:「これだわ。よし、それじゃ威吹君は魔法陣の中に入って」
威吹:「うむ。なるべく時差が無いように頼む」
イリーナ:「分かってるわ」
稲生:「威吹、ありがとうね。助かったよ」
威吹:「いやいや、ユタとは長い付き合いだから。もしこれからも困ったことがあったら、何でも相談するといい。ボクにできることだったら、何でも手伝うよ」
稲生:「ありがとう」
イリーナ:「ハペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。・・・・・・・・・・・・・・・」
イリーナが魔法の詠唱を行い、稲生には判別不能な言葉を喋る。
恐らく、ラテン語なのであろうが。
魔法陣が光り出し、威吹の体が包まれる。
イリーナ:「・・・・・!ルゥ・ラ!」
最後の呪文を唱えると、威吹が完全に白い光に包まれ、そして消えた。
稲生:「先生、これで威吹は魔界に帰ったんですね?」
イリーナ:「ええ、そうよ」
イリーナは大きく頷いた。
イリーナ:「時間の調整が大変だったけどね」
稲生:「えっ、そうなんですか?」
マリア:「あー、あの時計がそうだったんですか」
稲生:「えっ?」
稲生には見えなかったが、マリアには見えていた。
魔法陣の周りを何個か歪んだ形の大きな懐中時計が、グルグルと回っていたのだそうだ。
稲生には魔法陣から浮かび上がった白い光にしか見えなかったが、マリアには光る大きな時計に見えたらしい。
イリーナ:「これがクロックワーカーの力の1つよ」
マリア:「異世界と行き来する際、時間軸をズラさないようにする力ですか……」
マリアは溜め息をついた。
それは『自分には難しくて、とてもマスターできるのかどうか不安でしょうがない』というものであったが、稲生はそんな溜め息すら出ないほどであった。
1階に戻ろうとエレベーターのボタンを押すと、エレベーターが5階から下りて来る所だった。
それが1階で止まり、しばらくしてから地下階に下りて来た。
そのエレベーターには誰も乗っていない。
つまり、誰かが5階から乗って1階で降りたのだ。
それが誰なのかというと……。
(BGM:https://www.youtube.com/watch?v=ad9vpaf2bVk「恋色マスタースパーク」→https://www.youtube.com/watch?v=tljasHkSDUc「メイガスナイト」)
稲生:「ああ、やっぱりエレーナと鈴木君だったか」
1階に戻って来た稲生達。
エレベーターを降りた先にある小さなロビー。
そこにエレーナと鈴木がいた。
鈴木:「稲生先輩達!?どうしてここに?」
イリーナ:「エレーナに会いに来たんだよ。エレーナ、このホテルに住み込みで働いてるでしょ?直接部屋に行ってみたんだけど、いなかったからね、戻って来た」
鈴木:「エレーナの部屋に行って来たんですか!?俺も行きたい!」
エレーナ:「ダメ!」
鈴木:「どんな部屋でしたか!?」
イリーナ:「いや、部屋の中までは見てないよ。マリアなら入ったことあるでしょ?」
マリア:「ええ」
鈴木:「どんな部屋!?」
マリア:「あー……」
マリアはチラッとエレーナを見た。
エレーナはギロッとマリアを睨みつけている。
エレーナ:(言ったらコロス!)
マリア:「……本人から直接聞いたら?」
鈴木:「そんなぁ!」
稲生:「大丈夫。鈴木君なら、きっとエレーナを堕とすことができるから、その時に部屋に入れてもらいなよ」
マリア:「良かったな、エレーナ?やっと処女を捨てることができるぞ?」
マリア、嗜虐的な笑みを浮かべてポンとエレーナの肩を叩いた。
エレーナ:「オマエらなぁ…!!」
オーナー:「あの、お迎えのタクシーが到着してるんですけど……?」
その為、テーマ曲が作中紹介のものになる。
マリアのモデルは同じく“東方Project”のアリス・マーガトロイド。
従って、テーマ曲は『人形裁判 〜人の形弄びし少女』(https://www.youtube.com/watch?v=Ma-FY6tGR0s)ということになる。
イリーナにはモデルは無いが、髪が赤いという共通点から、“東方Project”のヘカーティア・ラピスラズリのテーマである『パンデモニックプラネット』(https://www.youtube.com/watch?v=jdBQsePL484)がイメージ曲であろうと思う。