報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔道士2人旅」

2022-05-28 20:30:19 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月5日10:05.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅西口バスプール→宮城交通バス車内]

 勇太の両親は先に新幹線で帰宅した。
 残された勇太とマリアは、別の場所に向かう。
 それは仙台駅西口バスプールから出発する路線バスで行ける場所だった。

 勇太:「片道30分以上掛かるけど、乗り換え無しで行けるからいいよね?」
 マリア:「うん。勇太がそれでいいなら、私もいいよ」
 勇太:「景色を見ながら行くのがいいよね」

 ワンステップバスの2人席に腰かける。
 因みに土産物などの大きな荷物は、ホテルから宅配便で送っている。

〔「お待たせ致しました。10時5分発、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行き、発車致します」〕

 バスは定刻通りに発車した。
 車内は休日のせいか、学生の姿は見られない。
 その為か、あまり乗客は乗っていなかった。

〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。このバスは錦町一丁目、双葉ヶ丘入口、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行きです。次は本町二丁目、本町二丁目でございます〕

 合成音声による、イントネーションのややおかしい自動放送が耳につく。
 これは仙台市営バスも同じだ。
 声優を起用した地下鉄の車内放送と比べると【お察しください】。

 勇太:「ここで間違い無いんだね?」

 勇太は自分のスマホの画面をマリアに見せた。
 そこには宮城県立図書館の公式サイトが出ている。

 マリア:「そう。そこ」
 勇太:「それなら大丈夫だよ」

 ただ、路線バスの哀しさで、多少遠回りしていくようである。
 集客性を確保する為に、仕方のないことではあるが。

 勇太:「本、読みたいの?」
 マリア:「屋敷にあるのはラテン語やロシア語の魔導書ばかりだからね。たまには、普通の本も読みたい。日本語の勉強にもなるし」
 勇太:「なるほどね」
 マリア:「久しぶりに、この眼鏡も使いたい」

 マリアはローブの中から、赤縁の眼鏡を取り出して掛けた。
 これで文字を読むと、自分の母国語に自動で翻訳してくれる便利な魔法具だ。

 勇太:「似合うよ」
 マリア:「Thanks.」

[同日10:40.天候:晴 仙台市泉区紫山 宮城県図書館]

〔「ご乗車ありがとうございました。宮城県図書館前です」〕

 バスは無事に図書館前のバス停に到着した。
 バスを降りると、柔らかな春の風が2人の魔道士を出迎える。

 勇太:「ここが図書館?随分、近代的ぃ~」
 マリア:「面白そう!早く入ろう!」
 勇太:「う、うん」

 何故か心躍らせるマリア。
 中に入ると、吹き抜けのホールが現れる。

 勇太:「うーん……」
 マリア:「どうしたの?」
 勇太:「いや、何か初めて来る場所のはずなんだけど、どこかで見たことのある構造だなぁと思って……」
 マリア:「そう?私も普通に初めてだけど」
 勇太:「まあ、そうだろうね。えーと……本が沢山あるのは、3階みたい」

 勇太はホール内の案内を見て言った。

 勇太:「そこのエスカレーターで上がって行けるみたい」
 マリア:「よし、行こう」

 土地がいっぱいあったのか、図書館は横に広い構造となっている。
 横長の円筒形の形をしていた。
 エスカレーターで2階に上がると、また目の前にエスカレーターがある。
 それで3階に上がる。

 マリア:「ありがとう。私は適当に本を読むから、勇太も読みたい本を探したら?」
 勇太:「分かった。じゃあ、12時に、ここのエスカレーター前で待ち合わせようか」
 マリア:「了解。それじゃ……」

 マリアは外国図書のコーナーへと向かった。
 恐らく、英語で書かれている本でも探しに行ったのだろう。
 日本語の勉強云々はいいのだろうか?

 勇太:(僕も鉄道関係の本でも探してみるか)

 勇太は勇太で、別のコーナーに向かった。

[同日12:30.天候:晴 同地区内 宮城県図書館内“パノラ”]

 お昼時になり、2人は館内のカフェで昼食を取ることにした。
 館内というよりは、別館といった感じの建物にある。

 マリア:「あっと言う間だった。ミカエラが教えてくれなかったら、私は待ち合わせに遅刻してたよ」
 勇太:「そういえばプロフィールに『趣味:人形作り・読書』とあったね?」
 マリア:「人形作りが好きなのはもちろんだけど、こういう出先では当然作れないからね。そういう時は本を読むんだ」
 勇太:「移動中に魔導書を読んだりとかね」
 マリア:「あれも修行の一環だから。でも、今日は違う。読みたい本を読ませてもらうよ」
 勇太:「いいことだよ」
 マリア:「この図書館、何時まで開いてるの?」
 勇太:「休日は17時までらしいね」

 平日なら19時までである。

 マリア:「バスの本数って、どのくらいあるの?」
 勇太:「ちょっと待って。今、調べるから」

 勇太は自分のスマホで検索した。

 勇太:「……えーと、仙台駅前行きは1時間に1本だね」
 マリア:「ここの閉館時間に合わせて行こうとすると?」
 勇太:「あっ、ちょうど17時発がある。閉館前にここを出て、バス停に行けば間に合うね」
 マリア:「なるほど。それでいい?」
 勇太:「いいよ。よっぽど気に入った本があったの?」
 マリア:「まだ全部探してない。でも、見つかりそうなんだ」

 マリアは笑みを浮かべた。

 勇太:(かわいい……)

 魔女としての嗜虐的な笑みを『美しい』と思い、今は本が大好きな少女としての笑みを『可愛い』と思った勇太だった。

 マリア:「そういう勇太は?面白い本見つかった?」
 勇太:「いくつかね。何しろあれだけ本が多いから、次々目移りしちゃって。午後はむしろ、震災関係の本を見ようと思うんだ」

 この図書館も東日本大震災では、建物にも被害があった。
 高台の内陸部にあることで、津波の被害は全く無かったのだが……。

 マリア:「分かった。帰り際、どこで待ち合わせる?」
 勇太:「僕が呼びに行くよ。もし入れ違いになるようだったら、1階のホールで待ち合わせってことで」
 マリア:「分かった。そうしよう」
 勇太:(そうか。何も、遊びに行くだけが目的じゃないんだ)

 どちらかというと、静かに本を読んだり、人形を作るのが好きな女性であったことを勇太は改めて知った。

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1 コメント

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あとがき (雲羽百三)
2022-05-28 22:06:08
 宮城県図書館のある紫山地区は、“泉パークタウン”の一地区である。
 この地区には、「宗さん」こと、さとう宗幸氏の大豪邸があるらしい(地元のタクシー運転手談)。
 尚、作者自身は未確認である。
 
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