[5月5日10:05.天候:晴 宮城県仙台市青葉区中央 仙台駅西口バスプール→宮城交通バス車内]
勇太の両親は先に新幹線で帰宅した。
残された勇太とマリアは、別の場所に向かう。
それは仙台駅西口バスプールから出発する路線バスで行ける場所だった。
勇太:「片道30分以上掛かるけど、乗り換え無しで行けるからいいよね?」
マリア:「うん。勇太がそれでいいなら、私もいいよ」
勇太:「景色を見ながら行くのがいいよね」
ワンステップバスの2人席に腰かける。
因みに土産物などの大きな荷物は、ホテルから宅配便で送っている。
〔「お待たせ致しました。10時5分発、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行き、発車致します」〕
バスは定刻通りに発車した。
車内は休日のせいか、学生の姿は見られない。
その為か、あまり乗客は乗っていなかった。
〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。このバスは錦町一丁目、双葉ヶ丘入口、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行きです。次は本町二丁目、本町二丁目でございます〕
合成音声による、イントネーションのややおかしい自動放送が耳につく。
これは仙台市営バスも同じだ。
声優を起用した地下鉄の車内放送と比べると【お察しください】。
勇太:「ここで間違い無いんだね?」
勇太は自分のスマホの画面をマリアに見せた。
そこには宮城県立図書館の公式サイトが出ている。
マリア:「そう。そこ」
勇太:「それなら大丈夫だよ」
ただ、路線バスの哀しさで、多少遠回りしていくようである。
集客性を確保する為に、仕方のないことではあるが。
勇太:「本、読みたいの?」
マリア:「屋敷にあるのはラテン語やロシア語の魔導書ばかりだからね。たまには、普通の本も読みたい。日本語の勉強にもなるし」
勇太:「なるほどね」
マリア:「久しぶりに、この眼鏡も使いたい」
マリアはローブの中から、赤縁の眼鏡を取り出して掛けた。
これで文字を読むと、自分の母国語に自動で翻訳してくれる便利な魔法具だ。
勇太:「似合うよ」
マリア:「Thanks.」
[同日10:40.天候:晴 仙台市泉区紫山 宮城県図書館]
〔「ご乗車ありがとうございました。宮城県図書館前です」〕
バスは無事に図書館前のバス停に到着した。
バスを降りると、柔らかな春の風が2人の魔道士を出迎える。
勇太:「ここが図書館?随分、近代的ぃ~」
マリア:「面白そう!早く入ろう!」
勇太:「う、うん」
何故か心躍らせるマリア。
中に入ると、吹き抜けのホールが現れる。
勇太:「うーん……」
マリア:「どうしたの?」
勇太:「いや、何か初めて来る場所のはずなんだけど、どこかで見たことのある構造だなぁと思って……」
マリア:「そう?私も普通に初めてだけど」
勇太:「まあ、そうだろうね。えーと……本が沢山あるのは、3階みたい」
勇太はホール内の案内を見て言った。
勇太:「そこのエスカレーターで上がって行けるみたい」
マリア:「よし、行こう」
土地がいっぱいあったのか、図書館は横に広い構造となっている。
横長の円筒形の形をしていた。
エスカレーターで2階に上がると、また目の前にエスカレーターがある。
それで3階に上がる。
マリア:「ありがとう。私は適当に本を読むから、勇太も読みたい本を探したら?」
勇太:「分かった。じゃあ、12時に、ここのエスカレーター前で待ち合わせようか」
マリア:「了解。それじゃ……」
マリアは外国図書のコーナーへと向かった。
恐らく、英語で書かれている本でも探しに行ったのだろう。
日本語の勉強云々はいいのだろうか?
勇太:(僕も鉄道関係の本でも探してみるか)
勇太は勇太で、別のコーナーに向かった。
[同日12:30.天候:晴 同地区内 宮城県図書館内“パノラ”]
お昼時になり、2人は館内のカフェで昼食を取ることにした。
館内というよりは、別館といった感じの建物にある。
マリア:「あっと言う間だった。ミカエラが教えてくれなかったら、私は待ち合わせに遅刻してたよ」
勇太:「そういえばプロフィールに『趣味:人形作り・読書』とあったね?」
マリア:「人形作りが好きなのはもちろんだけど、こういう出先では当然作れないからね。そういう時は本を読むんだ」
勇太:「移動中に魔導書を読んだりとかね」
マリア:「あれも修行の一環だから。でも、今日は違う。読みたい本を読ませてもらうよ」
勇太:「いいことだよ」
マリア:「この図書館、何時まで開いてるの?」
勇太:「休日は17時までらしいね」
平日なら19時までである。
マリア:「バスの本数って、どのくらいあるの?」
勇太:「ちょっと待って。今、調べるから」
勇太は自分のスマホで検索した。
勇太:「……えーと、仙台駅前行きは1時間に1本だね」
マリア:「ここの閉館時間に合わせて行こうとすると?」
勇太:「あっ、ちょうど17時発がある。閉館前にここを出て、バス停に行けば間に合うね」
マリア:「なるほど。それでいい?」
勇太:「いいよ。よっぽど気に入った本があったの?」
マリア:「まだ全部探してない。でも、見つかりそうなんだ」
マリアは笑みを浮かべた。
勇太:(かわいい……)
魔女としての嗜虐的な笑みを『美しい』と思い、今は本が大好きな少女としての笑みを『可愛い』と思った勇太だった。
マリア:「そういう勇太は?面白い本見つかった?」
勇太:「いくつかね。何しろあれだけ本が多いから、次々目移りしちゃって。午後はむしろ、震災関係の本を見ようと思うんだ」
この図書館も東日本大震災では、建物にも被害があった。
高台の内陸部にあることで、津波の被害は全く無かったのだが……。
マリア:「分かった。帰り際、どこで待ち合わせる?」
勇太:「僕が呼びに行くよ。もし入れ違いになるようだったら、1階のホールで待ち合わせってことで」
マリア:「分かった。そうしよう」
勇太:(そうか。何も、遊びに行くだけが目的じゃないんだ)
どちらかというと、静かに本を読んだり、人形を作るのが好きな女性であったことを勇太は改めて知った。
勇太の両親は先に新幹線で帰宅した。
残された勇太とマリアは、別の場所に向かう。
それは仙台駅西口バスプールから出発する路線バスで行ける場所だった。
勇太:「片道30分以上掛かるけど、乗り換え無しで行けるからいいよね?」
マリア:「うん。勇太がそれでいいなら、私もいいよ」
勇太:「景色を見ながら行くのがいいよね」
ワンステップバスの2人席に腰かける。
因みに土産物などの大きな荷物は、ホテルから宅配便で送っている。
〔「お待たせ致しました。10時5分発、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行き、発車致します」〕
バスは定刻通りに発車した。
車内は休日のせいか、学生の姿は見られない。
その為か、あまり乗客は乗っていなかった。
〔ピンポーン♪ お待たせ致しました。このバスは錦町一丁目、双葉ヶ丘入口、宮城学院前経由、宮城大学・仙台保健福祉専門学校前行きです。次は本町二丁目、本町二丁目でございます〕
合成音声による、イントネーションのややおかしい自動放送が耳につく。
これは仙台市営バスも同じだ。
声優を起用した地下鉄の車内放送と比べると【お察しください】。
勇太:「ここで間違い無いんだね?」
勇太は自分のスマホの画面をマリアに見せた。
そこには宮城県立図書館の公式サイトが出ている。
マリア:「そう。そこ」
勇太:「それなら大丈夫だよ」
ただ、路線バスの哀しさで、多少遠回りしていくようである。
集客性を確保する為に、仕方のないことではあるが。
勇太:「本、読みたいの?」
マリア:「屋敷にあるのはラテン語やロシア語の魔導書ばかりだからね。たまには、普通の本も読みたい。日本語の勉強にもなるし」
勇太:「なるほどね」
マリア:「久しぶりに、この眼鏡も使いたい」
マリアはローブの中から、赤縁の眼鏡を取り出して掛けた。
これで文字を読むと、自分の母国語に自動で翻訳してくれる便利な魔法具だ。
勇太:「似合うよ」
マリア:「Thanks.」
[同日10:40.天候:晴 仙台市泉区紫山 宮城県図書館]
〔「ご乗車ありがとうございました。宮城県図書館前です」〕
バスは無事に図書館前のバス停に到着した。
バスを降りると、柔らかな春の風が2人の魔道士を出迎える。
勇太:「ここが図書館?随分、近代的ぃ~」
マリア:「面白そう!早く入ろう!」
勇太:「う、うん」
何故か心躍らせるマリア。
中に入ると、吹き抜けのホールが現れる。
勇太:「うーん……」
マリア:「どうしたの?」
勇太:「いや、何か初めて来る場所のはずなんだけど、どこかで見たことのある構造だなぁと思って……」
マリア:「そう?私も普通に初めてだけど」
勇太:「まあ、そうだろうね。えーと……本が沢山あるのは、3階みたい」
勇太はホール内の案内を見て言った。
勇太:「そこのエスカレーターで上がって行けるみたい」
マリア:「よし、行こう」
土地がいっぱいあったのか、図書館は横に広い構造となっている。
横長の円筒形の形をしていた。
エスカレーターで2階に上がると、また目の前にエスカレーターがある。
それで3階に上がる。
マリア:「ありがとう。私は適当に本を読むから、勇太も読みたい本を探したら?」
勇太:「分かった。じゃあ、12時に、ここのエスカレーター前で待ち合わせようか」
マリア:「了解。それじゃ……」
マリアは外国図書のコーナーへと向かった。
恐らく、英語で書かれている本でも探しに行ったのだろう。
日本語の勉強云々はいいのだろうか?
勇太:(僕も鉄道関係の本でも探してみるか)
勇太は勇太で、別のコーナーに向かった。
[同日12:30.天候:晴 同地区内 宮城県図書館内“パノラ”]
お昼時になり、2人は館内のカフェで昼食を取ることにした。
館内というよりは、別館といった感じの建物にある。
マリア:「あっと言う間だった。ミカエラが教えてくれなかったら、私は待ち合わせに遅刻してたよ」
勇太:「そういえばプロフィールに『趣味:人形作り・読書』とあったね?」
マリア:「人形作りが好きなのはもちろんだけど、こういう出先では当然作れないからね。そういう時は本を読むんだ」
勇太:「移動中に魔導書を読んだりとかね」
マリア:「あれも修行の一環だから。でも、今日は違う。読みたい本を読ませてもらうよ」
勇太:「いいことだよ」
マリア:「この図書館、何時まで開いてるの?」
勇太:「休日は17時までらしいね」
平日なら19時までである。
マリア:「バスの本数って、どのくらいあるの?」
勇太:「ちょっと待って。今、調べるから」
勇太は自分のスマホで検索した。
勇太:「……えーと、仙台駅前行きは1時間に1本だね」
マリア:「ここの閉館時間に合わせて行こうとすると?」
勇太:「あっ、ちょうど17時発がある。閉館前にここを出て、バス停に行けば間に合うね」
マリア:「なるほど。それでいい?」
勇太:「いいよ。よっぽど気に入った本があったの?」
マリア:「まだ全部探してない。でも、見つかりそうなんだ」
マリアは笑みを浮かべた。
勇太:(かわいい……)
魔女としての嗜虐的な笑みを『美しい』と思い、今は本が大好きな少女としての笑みを『可愛い』と思った勇太だった。
マリア:「そういう勇太は?面白い本見つかった?」
勇太:「いくつかね。何しろあれだけ本が多いから、次々目移りしちゃって。午後はむしろ、震災関係の本を見ようと思うんだ」
この図書館も東日本大震災では、建物にも被害があった。
高台の内陸部にあることで、津波の被害は全く無かったのだが……。
マリア:「分かった。帰り際、どこで待ち合わせる?」
勇太:「僕が呼びに行くよ。もし入れ違いになるようだったら、1階のホールで待ち合わせってことで」
マリア:「分かった。そうしよう」
勇太:(そうか。何も、遊びに行くだけが目的じゃないんだ)
どちらかというと、静かに本を読んだり、人形を作るのが好きな女性であったことを勇太は改めて知った。
この地区には、「宗さん」こと、さとう宗幸氏の大豪邸があるらしい(地元のタクシー運転手談)。
尚、作者自身は未確認である。