報恩坊の怪しい偽作家!

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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「東京到着」

2019-06-07 19:03:13 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月15日07:20.天候:晴 東京都千代田区丸の内 JR東京駅]

〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく終点、東京です。東海道線、東北線、中央線、山手線、京浜東北線、東北・上越・北陸新幹線、横須賀線、総武線、京葉線、地下鉄線はお乗り換えです。お降りの時は、足元にご注意ください。今日も新幹線をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 朝日を浴びて上りの始発列車が東京駅に近づいた。
 この時点で列車は満席状態になっており、降りる仕度をする乗客達で車内がざわついていた。

 稲生:「マリアさん、そろそろ降りますよ」

 稲生は隣に座るマリアの肩を揺さぶった。

 マリア:「ん……」

 マリアは大きな欠伸をして目を開けた。

 稲生:「少しはMPが戻りましたか?」
 マリア:「少しだけ……ね」

 車窓が駅のホームに変わる。

 鈴木:「三島から本当に1時間足らずでしたね。これならエレーナのホウキより速いですよ」
 稲生:「よく分かるね」
 鈴木:「今、エレーナが最高速度で飛ぼうとすると時速130キロなんで」
 稲生:「JR在来線の最高速度……ってか何でキミはエレーナのホウキの最高速度を知ってるんだ?」

〔「ご乗車ありがとうございました。終点、東京、終点、東京です。お忘れ物の無いよう、お降りください」〕

 列車の外から“乙女の祈り”のメロディが聞こえて来る。
 ホームドアが開いているのだ。
 それから車両のドアが開く。

〔とうきょう、東京です。ご乗車、ありがとうございました。東北、上越、北陸新幹線、東海道線、東北線、中央線、山手線、京浜東北線、横須賀線、総武線、京葉線はお乗り換えです。……〕

 前の乗客に続いてぞろぞろと降りる稲生達。
 下りエスカレーターに乗って、ホーム階から1階コンコースへと降りる。
 改札内のコンコースのことを『ラチ内』という。
 鉄道会社によって『ラチ』と呼んだり『ラッチ』と呼んだりしているみたいだが、JR東海では一貫して『ラチ』と呼んでいる。
 八重洲南口改札でキップが全て回収されると、鈴木とマリアは稲生に付いて行くことになる。
 東京駅のラチ外の通路などは、既に朝の通勤客でごった返している。
 八重洲南口から八重洲地下街へ下りるエスカレーターも、下り運転にされているほどだ。
 そこへは行かず、都営バスの発車する島へ向かう。

 稲生:「このバスですよ」
 鈴木:「東42甲、南千住駅西口行き……」

 同じ島から出ている深川車庫行きや東京ビッグサイト行きは長蛇の列ができていたが、南千住駅西口の方はガラガラだった。

 稲生:「大人3人お願いします」
 運転手:「はい、ありがとうございます」
 鈴木:「先輩、いいんですか?」
 稲生:「いいよ。タクシー代出してくれたし……」
 鈴木:「ありがとうございます」

 稲生とマリアは2人席へ、鈴木はその前の1人席へ。

 マリア:「このバスでルーシーの病院まで行けるのか?」
 稲生:「正確には病院の近くですね。ま、バス停から歩いて行ける距離なんで」
 マリア:「そうか……」

[同日07:29.天候:晴 東京都千代田区 都営バス東42甲車内]

 発車時間になり、バスのエンジンが掛かる。

〔「お待たせしました。東武浅草駅前経由、南千住駅西口行き発車致します」〕
〔発車致します。お掴まりください〕

 ドアが閉まって、バスが走り出した。
 長蛇の列のバス停や満員状態の深川方面行きのバスを横目に、こちらは席がちょうど埋まったくらいである。

〔ピンポーン♪ 毎度、都営バスをご利用頂きまして、ありがとうございます。この都営バスは日本橋三越、浅草橋駅前、蔵前駅前、東武浅草駅前経由、南千住駅西口行きでございます。次は日本橋、日本橋でございます。……〕

 稲生:「こんな朝っぱらからですけど、先生からは連絡無いですね」
 マリア:「師匠のことだから多分大丈夫だと思うけど、何だか心配だな」
 稲生:「寝てる時、何か予知夢とかは?」
 マリア:「いや、無い。だから多分大丈夫だと思うけど……」
 稲生:「そうですか」
 マリア:「一応、聞いてみよう」
 稲生:「ケータイじゃないですけど、通話はダメですよ」
 マリア:「誰が通話すると言った?」

 マリアは水晶玉に手を翳すと、そこから念を送った。
 水晶球に英文が流れ込む。
 なるほど、これがスマホで言う『メッセージを送った』ことになるわけだ。
 しばらくして、イリーナから返信が来たはいいのだが……。

 鈴木:「先輩。何かさっきから、あのモニタにロシア語っぽいのが表示されっぱなんですが?」

 車内の運転席後ろの上部にあるモニタ。
 次のバス停の表示とか広告を表示するモニタなのだが、いち早く気づいた鈴木の言葉で見てみたら、確かにキリル文字が浮かんでいた。

 マリア:「……うん。あれ、師匠の返信っぽい」
 稲生:「ロシア語分かんないんですけど。鈴木君」
 鈴木:「いや、俺も分かんないですよ!」
 マリア:「私も外国語はフランス語と日本語がせいぜいだしな……」

 日本人が学校で英語を習うのと同様、イギリス人も学校でフランス語を習う。
 とは言ってもマリアのフランス語力は日本人の英語力並みである為、例えばフランス人のリリアンヌと会話する時は自動通訳魔法具で横着している。
 で、ロシア語力はてんでダメ。

 マリア:「多分、大丈夫なんだろう。あれは大方、寝ぼけて返信したと見た」
 稲生:「なるほど」
 鈴木:「どういう先生なんですか、先輩方の先生は……」
 稲生:「ある時は世界的に有名な占い師、またある時はイルミナティをも配下に置く世界の黒幕、はたまたある時は魔界の権力者」
 マリア:「しかしてその正体は……いつも寝てばかりの齢1000年強の婆さん」
 鈴木:「本物のイルミナティカードを発行する立場の人……なのに何故?」
 稲生:「僕はまだ見習だから知らない」
 マリア:「私は一端だけど知らない」

 1番最後の『魔界の権力者』という表現、正しくは『元・権力者』と言った方が良い。
 一時期、宮廷魔導師という、日本で言う所の内閣官房長官とか宮内庁長官的な立場を務めたことがあるからだ。

 稲生:「僕は1度も先生に怒られたことが無いなぁ……」
 マリア:「『見習にいくら怒ったってしょうがない』という考え方だから。私はビンタ食らったことがある」
 鈴木:「怒らせると怖い人だということは分かりました」

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