報恩坊の怪しい偽作家!

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“魔女エレーナの日常” 「深夜のワンスターホテル」

2020-07-12 19:56:02 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月4日23:00.東京都江東区森下 ワンスターホテル 視点:エレーナ・M・マーロン]

 オーナー:「はい、お疲れ、エレーナ。交替の時間だよ」
 エレーナ:「はい。特に引き継ぎ事項はありません」
 オーナー:「今日は鈴木さんが泊まってるから、夜食はあれかな?鈴木さんの奢りかな?」
 エレーナ:「いつも御馳走してくれるのは、ありがたいんですけどねぇ……」
 オーナー:「せっかくだし、鈴木さんとお付き合いしてみたら?」
 エレーナ:「いえ、私は……。それに最近あいつ、リリィの方に目を向けているみたいなんで」
 オーナー:「そうかな?私には鈴木さんとリリィの関係は、まるで兄妹のように見えるよ。ゲームで盛り上がる仲の良い兄妹って感じだ」
 エレーナ:「兄貴はもっと選ぶよう、リリィに後で言っておきます」
 オーナー:「はははは!いいじゃないか。楽しそうで」

 そんなことを話していると、エレベーターが客室フロアから降りて来た。
 それが1階に泊まる。

 鈴木:「いいかい?続きはまた明日。どうせ日曜日で、俺も休みだから。明日、エンディングまで行こう」
 リリィ:「ウイ……。おやすみなさい……」

 鈴木は1階で降りて来て、リリィはそのまま地下階へ下りて行った。
 リリィはエレーナの部屋に寝泊まりしている。
 それまでずっと鈴木の部屋でゲームをしていたのだった。

 鈴木:「やあ、エレーナ。おつかれさま。これから休憩時間だろ?夜食でも一緒にどうだい?」
 エレーナ:「リリィを深夜までゲームさせといて、それは無いだろ?」
 鈴木:「いや、俺もそう思ったんだけど、リリィがどうしてもって言うもんだからさ……」
 オーナー:「リリィちゃんには、ゲームの時間制限ルールを設けてあげた方がいいかもしれないねぇ……」
 エレーナ:「鈴木、オマエが何とかしろ」
 鈴木:「可及的速やかに、前向きに善処致します」
 エレーナ:「頼むぜ」
 オーナー:「昔の日本の政治家みたいなこと言って……」
 鈴木:「それより、早く行こう」
 エレーナ:「休憩時間、1時間しか無いから、あまりゆっくりはできねーぜ?」
 鈴木:「それでもいいよ。オレが出すから」

 エレーナは小さく溜め息をついた。

 エレーナ:「それじゃオーナー、行って来ます」
 オーナー:「ああ、行っといで」

 エレーナは鈴木と一緒にホテルを出た。

[同日23:30.同区内 地下鉄森下駅前 松屋 視点:エレーナ・M・マーロン]

 鈴木:「松屋は味がブレないから安心して食べられるな」
 エレーナ:「ま、ありがたく頂いたぜ。御馳走さまだぜ」
 鈴木:「いやいや。今、食後のお茶を持ってくるよ」
 エレーナ:「蒸し暑いから冷たいヤツで頼むぜ」
 鈴木:「了解」

 鈴木は冷たい煎茶を持って来た。

 エレーナ:「Thanks.それにしても、日本は稼げるし、飯は美味いし、先生に頼み込んで永住権取ってもらった甲斐があるぜ」
 鈴木:「何かそれ、アジアの途上国の人のセリフみたい」
 エレーナ:「途上国は別にアジアだけじゃないからな?私の所みたいに、ヨーロッパにもあるから」
 鈴木:「いや、これは失礼。だけどエレーナは、どうして日本に?」
 エレーナ:「……さあ、何でかな」
 鈴木:「おい、教えてくれよ~」
 エレーナ:「これだけはカネを積まれても、教えられねーぜ」
 鈴木:「そんなに!?」
 エレーナ:「つーわけで、話題変えようぜ。リリィのことだ」
 鈴木:「リリィちゃんがどうしたの?……あ、悪かったよ。ゲームのことについては、もっと早い時間に切り上げて、夜更かしさせないようにするよ」
 エレーナ:「頼む。リリィはまだ子供だからな、自制が利かない所がある」
 鈴木:「酒は飲むのにねぇ……」
 エレーナ:「魔女だから許されてるんであって、人間だったらアウトだからな?いくらフランスでも、あの歳(14歳)で飲酒OKなワケねーだろ」
 鈴木:「そりゃそうだw」
 エレーナ:「今はリリィのことが好きなのか?私のこと、あんなに『好きだ』って言ってたくせに。目移りの早い野郎だぜ」
 鈴木:「いま俺の中で、『彼女になって欲しい人第一位』はエレーナで間違い無いよ?」
 エレーナ:「あァ?じゃ、リリィは第二位ってところか?」
 鈴木:「いや、あの、リリィちゃんはどう思ってるか知らないけど、俺には妹が出来たみたいな感じなんだけどな。俺、一人っ子だから」
 エレーナ:「オーナーと同じこと言いやがって……」
 鈴木:「俺が花束を持って告白したのは、エレーナだけだよ?リリィちゃんにはしていない」
 エレーナ:「ああ、あれな。……まあ、花はありがたく頂いておいたぜ」
 鈴木:「フロントに飾っててくれたな。ありがとう」
 エレーナ:「まあ、青い花……。青は私のシンボルカラーだからな」
 鈴木:「その服だと、ネクタイと髪のリボンしか分からないな?」
 エレーナ:「あと、帽子のリボンな。悪魔との契約の関係で、そうなってるだけさ。……ああ、あとオマエが送ってくれた下着な」
 鈴木:「結構いい値段したんだよ」
 エレーナ:「分かってる。私もカネにはうるさい方だからな、物の価値は把握してるつもりだ。安物だったらとっとと処分してるところだが、あれはそうするわけにはいかなかった」
 鈴木:「もしかして、今着けて……?」
 エレーナ:「フッ、想像に任せるぜ。おっと!想像な?妄想じゃないぜ?」
 鈴木:「ははっ(笑)、似たようなもんだろ?」
 エレーナ:「……そろそろ出るか。日本は稼げるんだが、慌ただしい国ではあるな」
 鈴木:「それが今日の日本における経済発展の原動なんだよ」
 エレーナ:「うちの国では一生ムリだな」

 店の外に出ると、雨が降っていた。

 エレーナ:「マジか。帽子もローブも着てないなー」
 鈴木:「こんなこともあろうかと……ポチッとな」

 鈴木は折り畳み傘を出した。
 ワンタッチで傘の開くタイプだ。

 鈴木:「一緒に入ろう」
 エレーナ:「……ちっ。しょうがねーなー」

 エレーナ、鈴木と相合傘をする。

 鈴木:「こんな可愛い子と相合傘……功徳~~~~~!!」
 エレーナ:「今すぐキモい笑顔やめないと、カネ取るぜ?」
 鈴木:「いや、これは失礼」

 鈴木、すぐにキリッとした真顔に戻る。

 エレーナ:「はぁ~。先を急ごう」
 鈴木:「俺と相合傘してくれるなんて嬉しいよ」
 エレーナ:「多分、私は他のウクライナ人から見れば、『あの女、ダセェ日本人と付き合ってやがる』と言われるだろうし、鈴木は鈴木で、『あの日本人、ダセェ女と付き合ってる』と思われるぜ?」
 鈴木:「そんなことないよ!もしそう言われても、俺は気にしない!エレーナは気にするの!?」
 エレーナ:「そもそも、日本にはそんなにウクライナ人はいない。で、ロシア人やアメリカ人に言われたくらいじゃ気にしねーよ。あ、某イギリス人に言われたら、ブッ飛ばすけどな」
 鈴木:「マリアさんのことか。ははは……」

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