報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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“大魔道師の弟子” 「冷たい夕日」

2020-07-12 13:44:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[7月3日19:00.アルカディアシティ・サウスエンド地区(南端村) 視点:稲生勇太]

 アルカディアシティの西部、東京23区で言えば板橋区から渋谷区までの部分に相当する地域が壊滅したこともあり、魔界高速電鉄はまともに運行されていなかった。
 それでも無事だった環状線の一部や路面電車は運転を再開しているようで、これは内外に対し、けして町が滅亡したわけではないことを主張していることになる。
 とはいうものの、1番街から南端村まではイリーナの瞬間移動魔法を使うことにした。
 召喚獣であるドラゴンのリシーツァを呼んで、それで向かうという手もあったが、さすがにドラゴンが飛来したら、余計混乱を招くだろうと判断してのことだった。

 イリーナ:「はい、到着ぅ」

 着いた場所は魔界稲荷神社の前。

 稲生:「ありがとうございます。……南端村には被害は無いみたいですね」
 マリア:「いや、そうでもないみたいだぞ?」

 マリアが指さした所には……そこにあったはずの鳥居が崩れていた。

 稲生:「ありゃ!?」
 イリーナ:「爆風がここまで飛んで来たのかしら?」
 稲生:「上は無事なんでしょうね!?」

 稲生は境内までの石段を駆け上った。

 マリア:「勇太、待って!」

 マリアも後を追う。

 イリーナ:「若いっていいわねぇ……」

 魔法で若作りはしているが、本当は老魔女のイリーナは年の功で得た強い魔法力を駆使し、体を浮遊させて石段を登った。
 エスパーが自分の体をテレキネシスを使って浮遊させる、セルフ・テレキネシスに近い。

 稲生:「威吹!」

 稲生が石段を駆け上ると、境内にも被害が出ていた。
 とはいえ、見た目に建物の被害は無い。
 あるのは石灯籠が倒れていたり、御神木では無いにしろ、木が倒れていたりしていただけだった。

 茶取:「あっ、稲生さん!」

 建物から出て来たのは、威吹の弟子の1人の茶取であった。

 稲生:「茶取君!アルカディアシティが大変なことになったって聞いて、駆け付けたんだ!威吹は無事か!?」
 茶取:「あ、はい。皆、無事です。今、先生を呼んで来ます」

 茶取は再び建物の中に入った。
 よく見ると石畳にもひびが入ったりしている。

 イリーナ:「フム。ベタン爆弾は強い空気圧を上から押し付ける現象を引き起こす兵器だから、高台や高い建物の上の階ほど被害が大きいみたいね」
 マリア:「その割には魔王城には被害は無かったみたいですけど……」
 イリーナ:「爆風の向きにもよるのかもね」

 しばらくして、中から威吹が出て来た。

 威吹:「おーっ、ユタ!来てくれたか!」
 稲生:「威吹!無事で良かったよ!」
 イリーナ:「被害は建物関係だけみたいね?」
 威吹:「ああ。突然、暴風と強い地震が来たって感じだった。それで鳥居やら灯篭は倒れてしまった。瓦も一部が飛ばされたりしたんだが、取りあえずそれだけは直しておいたよ」
 稲生:「中の被害は?」
 威吹:「少しあった。だけど、箪笥が倒れたり、棚の上の物が落ちたりしただけだ。取りあえず、壊れた物は片付けたよ」
 稲生:「そうか」

 威吹の妻のさくらや息子の威織の無事も確認した稲生は、神社をあとにすることにした。
 威吹は夕食でも食べて行けばと誘ってくれたのだが、多少でも被害が発生して、その後片づけに追われている中、のほほんと滞在することは憚れたのである。
 弟子達総出で片付けに当たっているので、特に人手には困っているわけではないとのこと。

 イリーナ:「じゃあ、威吹君の無事も確認したところで帰ろうか」
 マリア:「やっと家に帰れる……」
 イリーナ:「まだよ」
 マリア:「Huh?どういうことですか?」
 イリーナ:「エレーナが渡したいものがあるということで、ワンスターホテルに行くから」
 マリア:「ロクでもないものだったりしたら、ぶっ飛ばしますよ?」
 イリーナ:「アタシを?」

 イリーナは細くしていた目を少し開いて、マリアを見据えた。
 マリアはその目を反らしながら言った。

 マリア:「……エレーナに決まってるじゃないですか」
 イリーナ:「そう。でも、『仲良き事は美しき哉』という綱領を忘れてはダメよ?」
 マリア:「分かってますよ」

 イリーナは石段の下まで下りると、再び魔法陣を描いた。

 マリア:「魔界で悪魔を呼び出すなら、魔法陣なんか使わなくても、電話一本で呼び出せるんですけどね」
 イリーナ:「逆に魔界から人間界に行くには、私達の方が魔法陣を使わなくちゃね。……さあ、入って。パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。……」

[7月4日18:00.東京都江東区森下 ワンスターホテル 視点:マリアンナ・ベルフェゴール・スカーレット]

 ワンスターホテル地下の常設魔法陣に到着する。
 そこからエレベーターで1階に上がると……。

 エレーナ:「いらっしゃいませー」

 先に帰っていたエレーナが店番していた。

 イリーナ:「ツイン1つとシングル1つ空いてる?」
 エレーナ:「はい!こんなこともあろうかと、お取りしておきました。デラックスツインとデラックスシングルですね!」
 マリア:「え、泊まるんですか?」
 イリーナ:「だって、今日はもう列車やバスで帰れないでしょう?」
 稲生:「新幹線や中央本線自体はあるんですが、要は白馬まで帰るには遅いということですね」
 マリア:「いや、そうじゃなく、更にここから師匠の魔法で屋敷に帰れば……」
 イリーナ:「それを早く自分でできるようになってね」
 エレーナ:「いつまでも先生にぶら下がってるんじゃねーぜ」
 マリア:「くっ……!」

 マリアは悔しそうに稲生を見た。

 稲生:「まあまあ、マリア。ここは1つ先生の指示に従おう」
 マリア:「そうじゃないのよ……!」
 イリーナ:「私が宿泊者カードに書けばいい?宿泊代、私が出すから」
 エレーナ:「はい、お願いします」
 イリーナ:「私に渡したい物ってのは?」
 エレーナ:「うちの先生から預かってた魔導書と、頼まれていた薬です。料金なんですけど、うちの先生は魔界のゴッズで払って欲しいみたいなんで、後で私が集金に行きますから」
 イリーナ:「さすが、姉さん。何でもお見通しね。あ、でも、ここの宿泊代はカードでいいかしら?」
 エレーナ:「あ、はい。それはもちろん」

 イリーナとエレーナがそんな会話をしている頃、マリアはむず痒そうにスカートの上から股間を触ったりしていた。

 イリーナ:「今日はレストラン、やってるかしら?」
 エレーナ:「あ、はい。鋭意営業中です。先に予約を取って来ては如何です?」
 イリーナ:「そうね。勇太君、お願い」
 稲生:「分かりました。ちょっと行って来ます」

 稲生がレストランの方に向かう。

 エレーナ:「マリアンナ、ちょっといいか?」
 マリア:「なに?」
 エレーナ:「あれだろ?稲生氏としばらくヤッてないから、ムラムラしてしょうがないんだろ?」
 マリア:「なっ……!?」
 エレーナ:「レイプのトラウマから解放されたはいいが、今度はその反動でムラムラしやすくなるんだよな。いいからオマエ、上手く稲生氏の部屋に潜り込め。うちのデラックスシングルはセミダブルだから、2人でも泊まれるようになってるんだ」
 マリア:「そ、そんなことは……」
 エレーナ:「大丈夫だって。覗いたりはしないからよ。その代わり、私も一緒に混ぜt……」
 マリア:「アホか!!」
 イリーナ:「若いっていいわねぇ……」

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