報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「北海道を過ごす」 2

2016-02-12 14:50:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月26日08:00.天候:晴 札幌市中央区・ウォーターマークホテル札幌1F 稲生勇太&マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]

 稲生とマリアはホテルのレストランで朝食を取っていた。
 バイキング方式なのだが、2人の魔道師男女はそんなに料理を盛らない。
「昨夜はマリアさんの知り合いと会っていたんですか?」
 向かい合って座り、稲生が話し掛けた。
「ああ。たまたま私と同じ、魔界帰りの魔道師がいてね。色々と話してきた」
「そうでしたか」
「ユウタは、昨夜何をしてた?」
「勤行とネットサーフィンです。ろくに魔道書読んでなくて、すいません」
「いや、別に毎日読む必要のあるものじゃないから。日蓮正宗関係の?」
「まあ、そんなところです。藤谷班長がFacebookで、社員旅行のことなんか書いてましたね」
「Facebookなんかやってるのか……」
 マリアは意外そうな顔をした。
「何か、意外だな」
「会社の公式サイトとリンクしているみたいですね」
「ふーん……。ところで、今日はどうする?」
「ええ。前回と同じように、新千歳空港でゆっくりしたいと思います」
「ああ。あの温泉か……」
「ええ……。いや、多分もうケンショーレンジャーは現れないと思いますが」
「分からんよ。2度あることは3度ある、というし……」
「3度目の正直、とも言います」
「とにかく、今度会ったら冥府に送る!」
「い、いいと思います」
 一瞬、マリアが“魔女”の目つきになったので、稲生は慌てて頷いた。
 と、そこへ、
「おーはよー。(´Д`)」
 イリーナが大欠伸をしながらやってきた。
「おはようございます」
「師匠。朝食は食べ放題ですから、あそこでトレーとお皿を取って……」
「あ、そうなの」
(でも、ちゃんと起きてきたなぁ……)
 と、稲生は思った。

 尚、イリーナは皿の上に料理をかなり盛り、弟子達を唖然とさせたものの、ちゃんと平らげたという。
 高身長に巨乳、巨尻の維持にはそれくらいの食欲も必要ということか。
(イザとなったら、イリーナ先生がケンショーレンジャー潰しをしてくれるさ……)
 と、稲生は思った。
 1000年以上も生きているので、多少のセクハラには動じもしないが、さすがに無断のお触りは断っているもよう。

[同日09:30.天候:晴 ホテル前→JR札幌駅 稲生、マリア、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 

 ホテルの前からタクシーに乗る。
 その通りは2車線ながら西方向への一方通行なので、少し回り道をさせられる形になる。
「札幌駅までお願いします」
「はい、ありがとうございます」
 リアシートにイリーナとマリア、助手席に稲生が座った。
 ダンテ一門はフランクなようで、結構師弟の上下関係に厳しい。
 その中でも1番フランクと思われるイリーナ組でさえ、最低限のビジネスマナーみたいなものはあるらしい。
 タクシーの上座と下座。
 上座は運転席の後ろである。
 次いで助手席後ろ、リアシートの中央、最下座が助手席となる。
 この場合、イリーナが運転席の後ろ、マリアが助手席の後ろとなるのだが、稲生はあえて中央ではなく、助手席に乗っていた。
 これは何も後ろが狭いからという理由ではなく、当時はまだマリアが男嫌いで、稲生にも心を開いていなかった為に、稲生がそこに乗れなかった故の名残りである。
 今ではもう稲生だけなら大丈夫なのだが、そのまま慣例が続いているというわけだ。
 但し、助手席の後ろの方が乗り降りしやすいのは事実で、上位者の中にはそこを希望する者もいる。
 その時はその上位者の希望を聞くことである。
 タクシーは電気自動車ならでのキィーンというモーター音を立てて、雪の降り積もった市街地を進んだ。

〔「……次のニュースです。昨夜未明、札幌市◯◯区××の住宅街の一画で、男性の遺体が発見されました」〕

 タクシーのラジオからニュースが流れて来た。

〔「……警察の調べによりますと、男性は市内で発生している連続強制わいせつ事件の容疑者と思われ、遺体を司法解剖して死因を調べると共に、現場付近の捜査に当たっています」〕

 マリアは俯いていたが、口元は歪ませ、目つきも“魔女”のものになっていた。
(やはり死んだか……。クククク……!)
 とはいうものの、さすがにそこは稲生。
(何か、マリアさんとかが関わってそうな事件だなぁ……)
 と、鋭く気づいたのである。
 だが、
(強制わいせつとレイプってどう違うんだろう?)
 と、トンチカンな疑問を持ったりもした。
 それは、【webで確認!】

[同日09:45.天候:晴 JR札幌駅ホーム 稲生、マリア、イリーナ]

 ターミナル駅に到着した稲生達。
 北海道一賑わう駅で、いずれはここにも新幹線がやってくると思われる駅だ。
 改札口はとっくに自動化されており、稲生達は昨日購入したキップを通してコンコースに入った。
 尚、乗車券と指定席券の区間が一緒なので、1枚にまとめられている。
 ホームに上がってみて、首都圏のターミナル駅よりやかましいのは、ディーゼルカーも多く発着しているからだろう。
 首都圏だと、せいぜい駅構内放送だとか、引っ切り無しに発着する電車の音が賑やかなのだが、それ以上にたまに発着するディーゼル特急が停車していると、物凄くやかましい。
 札幌駅のホームには防雪の為の屋根が掛かっているため、尚更音が籠もりやすいのだ(想像できない人は、東北新幹線のホームを思い浮かべてもらえれば、そんな感じだと分かる。大宮駅でさえ、ホーム全体に屋根が掛かっていることが分かる)。

〔お待たせ致しました。まもなく5番ホームに、9時55分発、新千歳空港行き、快速“エアポート”96号が入線致します。黄色い線の内側まで下がって、お待ちください〕

 3打点チャイムの後、ホームに中年女性の自動放送が流れる。
「今度の電車は札幌始発なので、すぐに乗れると思います」
 と、稲生は言った。
 つまり、折り返し電車で、一旦ドア閉めが無いという意味である。

 

 しばらくして、桑園駅方面から721系6両編成の電車がゆっくり入って来た。

 
(指定席“uシート”車。帯の色が他の自由席車と変えられている)

 ホームに到着すると、女性車掌が指定席車に設けられた車掌室に乗り込んだ。
 JR北海道ではこのように中間に車掌室のある列車では、車掌はそこに乗務し、最後尾の乗務員室は不在になる。
 東北新幹線でも東京駅発車の際は最後尾の乗務員室に車掌がいるが、その後はグリーン車の車掌室でホーム監視をするのと同じだ。
 ドアが開くと、3人は車中の人となった。

 
(指定席“uシート”車内。写真は後期モデル。座席はリクライニングシートが並び、初期モデルの場合は座席の色が違うがスペックは同じ。尚、いずれも頭部のカバーは省略され、レザー生地になっている)

「えー、ここですね」
 真ん中のドアにもデッキがあって、そこから入ってすぐの所に指定された席があった。
 ここでも上座と下座があって、上位者は下位者の前の席に座るのが通例。
 というわけでイリーナも、稲生達の前の席に座った。
「じゃ、着いたら起こしてねー」
「やっぱり」
 イリーナはフードを深く被り、リクライニングシートを倒して仮眠体制に入った。
「あ、先生」
「なぁに?」
「キップはここに……」
 もっとも、キップは稲生が預かっていたが、この車両にはチケットホルダーがある。
 収納したテーブルの上にあって、そこにキップを挟めておけば、あとは車掌が勝手に検札してくれるというもの。
「あー、なるほど」
「そういうことです」
 稲生は大きく頷いて、すぐ後ろの座席に座った。

 自由席は白い蛍光灯の明かりが煌々と輝いているが、指定席は電球色の明かりが照らされている。
 JR北海道でも屈指のドル箱線、ドル箱列車なだけに本数も多く、列車は10分ほど停車して札幌駅を発車した。
 モーターの無いサハ車の為か、車内にはモーター音が聞こえてこなかった。

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1 コメント

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つぶやき (作者)
2016-02-12 19:22:32
 長野の国道18号線で転落事故を起こしたイーエスピーのバスは、転落直前の速度が96キロだったらしい。
 イニシャルDのハチロクならまだしも、三菱ふそう・エアロ旧型ではムリだろう。

 来月の帰省は往復新幹線を利用することにした。
 前回の帰省は昨年、あの鬼怒川が決壊した日で、JRバスを利用したが、今回は新幹線にする。
 E2系とも、そろそろお別れが近づいているような気がしてならないのだ。
 今のうち乗り納めをしておこうと思う。
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