報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「北海道を過ごす」

2016-02-12 10:28:01 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月25日22:00.天候:雪 札幌市中央区・某ファーストフード店 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット&クリスティーナ・サブナ・アダムス]

 閑静な住宅街から市街地に移動した2人の魔女。
 そこで2人はホットコーヒーを飲みながら、デーブル席に向かい合って座った。
 クリスティーナは同じダンテ一門の魔道師であるが、アナスタシア組ではない。
 免許皆伝を受けているので、師事している師匠は今はいない。
 元は“魔の者”に殺されたクレア師に師事していた。
 なので、同じ殺されたジェシカは同じ弟子仲間であった。
 フードを取ると、茶系のロングを2つ結びにしている。
 結んでいるアクセサリーは、魔法具の1つ。
 マリアにはそれが何なのかすぐに分かった。
 マリアもカチューシャに仕込んでいるところがあるが、魔道師は身に着けているアクセサリーに色々と何か仕込んでいることがある。
「……なるほど。マリアンナは魔界からの帰りか」
「“魔の者”はしつこい。まだ私らを狙ってるみたい」
「ポーリン先生みたいに、ド派手にやらないとダメなのかもね」
「あんなハリウッド映画みたいなやり方、うちの師匠には合わんよ」
 マリアは辟易した。
 “魔の者”は時に闇の権力者に憑依することがある。
 アメリカでも名うてのマフィアのボスに憑依して、魔道師を追い詰めようと企てたようだが、それを察知したポーリンとエレーナによって組織ごと潰された。
 40階建ての本部ビルが根元から崩れ落ちるほどで、ボスは最上階から地上に転落死。
 残った幹部達も崩壊中のビル内に取り残されて【お察しください】。
 ただ、その代償としてマシンガンの雨を食らったエレーナは上半身に傷痕を残すことになったし、ポーリンはマフィア残党からしばらく身を隠さなければならなかった。
「だいいち、日本でそれをやったらもうここにいられなくなる」
「まあね。今、“魔の者”はどこに?」
「分からない。もしかしたら、日本にはいないかも……」
「日本にいなかったらいないで、今度は誰をターゲットにしたか心配だねぇ……」
「まだ力の無い新弟子が多くいるから、そこを叩かれたら痛い」
「アナスタシア組が自分とこの組織固めを進めているのはその為?」
「多分」
 マリアは頷いた。
「クリスはどうしてここに?」
「あなた達と同じ理由、かな」
「魔界からの帰り?」
「あなた達はまだアルカディア王国くらいしか出入りしていないだろうけど、魔界には他にもいくつか国があるのは知ってるよね?」
「もちろん」
「そこにはゴエティア系の悪魔がいたりするから、ウチらそっち系の悪魔と契約しているもんで、たまに行くんだ」
「なるほど……。私も師匠も“七つの大罪”系で、それは全てアルカディア国内で完結している(揃っている)から、わざわざ他国に行く必要も無いしな」
「そういうこと」

 店を出ようとした時、
「ああ、そうそう。もう1つ聞いていい?」
 と、クリス。
「なに?」
「ウチら……人間時代、“狼”に食われた女の集まりで、マリアンナが1番ヒドい目に遭ったのに、弟弟子を入れることに賛成したのはどうして?」
「ユウタのこと?別に、最初は賛成だったわけじゃないよ。ただ、師匠の決めたことには逆らえないからね」
「今では好きなんでしょう?マリアンナの人間時代は、似た目に遭った私から見ても目を背けるものだった。普通は好きになれないはずなのに何故だ?」
「よくは分からないけど、ユウタは人間時代に私が1度も会えなかったタイプだ。だから逆に新鮮味があって、私のトラウマに100パー引っ掛からなかったのかもしれない。あと、逆に皆の中で私が1番ヒドい目に遭ったからかな……」
「?」
「あそこまでこっ酷くヤられれば、逆に回復も早いのかもしれない」
 マリアが答えると、クリティーナは変な顔をした。
 その顔には、『何言ってんだコイツ?』と書いてあるように見えた。
「信じなくていいよ。私もよくは分からないから」
「イリーナ先生がオリジナルの魔法を編み出しただとか、あなたはエレーナとも仲がいいから、そっちから何かトラウマを一気に回復させる薬をもらっただとか……」
「いや、無い無い。だから私も不思議なんだ。不思議なことを涼しい顔をして行う魔道師が、逆に自分に不思議がるって変な話だけどな」
 マリアは笑みを浮かべて席を立った。

[同日22:30.天候:雪 同区・ウォーターマークホテル札幌 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]

 ホテルに戻って自分の客室があるフロアでエレベーターを降りた。
 稲生が泊まっているシングルの部屋の前で立ち止まったが、中から何か物音が聞こえてくることは無かった。
(多分うちの師匠とかそういうことじゃなくて、ユウタ自身に何か特別な力があるんだろうなぁ……)
 と、マリアは思った。
 随分と曖昧だが、多分これを面と向かって言ってもクリスティーナは余計不審がるだろうし、イリーナは目を細めて頷くだけだろうし、稲生は困惑するだけだろう。
 危うく開錠の魔法でドアを開けようとしたが、すぐに気づいて、手持ちのカードキーで部屋のドアを開けた。
「!?」
 ベッドにはイリーナはいなかった。
 その代わり、バスルームからはシャワーの音が聞こえたので、どうやら目を覚ましてシャワーでも浴びているらしい。
 自分のベッドに腰掛けると、イリーナがバスルームから出て来た。
「おー、マリア。戻ってきたかー」
「ええ。クリスティーナがこの町にいたので」
 マリアがしれっと答えたのは、イリーナが全裸にバスタオルを羽織った姿のままだったからだ。
「あー、クレアの弟子のクリスかぁ……」
 夜着は浴衣ではなく、白いタオル素材でできたワンピース型のもの。
 バスタオルを取ってそれに着替えるイリーナ。
「あのコも大変だったね。先生と仲間を一気に2人も亡くしたのに、私達の前では涙1つ流さなかったもんね」
「もちろん後で大泣きしていたと、エレーナが言ってました」
「うんうん。そうだよね。あのコも人間時代、ヒドい目に遭っていたから、尚更クレアやジェシカと気が合っていたのにね」
「睡眠薬を飲まされて、集団レイプですか。さっきもこの町の外れの方で、“仕事”していましたよ」
「あなたも“お手伝い”してきたの?」
「いえ。私は見ていただけです。クリスは勝手に手を出すと怒るので。私が挨拶に来ただけで、睨まれましたから。あいつ、すぐ顔に出るんで、その時顔に『余計な手出しはするな』って書いてましたよ」
「なるほどねぇ……。バスルーム空けたから、あなたも入って寝なさい。ここのホテル、バスルームと洗面台とトイレが別になってるからね。私は先に寝てるから」
「はい。あ、それと師匠」
「なぁに?」
「クリスから、私らの中では私が1番“狼”達に食い尽されたのに、どうしてユウタには心を開くのかと聞かれました。私は分からないながらも、曖昧に答えましたが」
「何か、特別な魔法でも使ったと思われたか。まあ、ユウタ君自身が不思議なコだからねぇ……。マリア自身も、そのタイプに出会うのは初めてでしょう?」
「はい。やはりそこですか」
「まずは興味を持たないと、心って開かないものだから。ユウタ君自身に何か不思議な力を秘めているのは間違いないと思うけど、マリアの場合はそういう難しいものではなく、ただ単に『変わった男だなぁ……』から始まっただけだと思うよ」
「そうですかね」
「ま、別に今すぐ答えを出す必要は無いさ。これから、もっともっと沢山の時を過ごすことになるんだからね」
「はい」

 尚、その「不思議な男」とされた稲生は、部屋でホテルから借りたパソコンに向かい、ネットで法論していたという。
『三大秘法ガー』『大御本尊ガー』『お前はバカだのー』とか、色々……。
 終いには、『あなたのその発言、流血の惨を見ること必至であります!』と、そろそろ稲生も魔道師の資質が出てきた……かどうかは【お察しください】。

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2 コメント

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つぶやき (作者)
2016-02-12 13:03:03
大宮駅構内のコーヒーショップでネタ出し中。
今日は久しぶりに西武バスに乗った。
都営バスに乗り慣れてしまうと、色々と違和感を感じ取ってしまう。
大宮駅で、来月帰省の為の新幹線のキップを買っただけである。
座席表を見ただけで何系で運転されるかが分かるところが、既に鉄ヲタか……。

コーヒーショップにいるのはネタ出しもそうだが、単に帰りのバスの時間調整をしているだけだったりする。
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つぶやき 2 (作者)
2016-02-12 13:49:23
http://news.goo.ne.jp/topstories/nation/342/7111a0eb386d7eb196ce5257e49da578.html

 大宮駅東口に突如として現れたドーベルマン。
 次々に通行人を襲うその狂犬ぶり。
 私は手持ちのハンドガン(ベレッタ辺り?)を手に犬に発砲。
 3発のうち1発が犬に被弾。
 犬は出血しながらもまだ立ち上がろうとしたので、私は犬を工事中の仮囲いに犬の頭を叩きつけて殺害した。

 という夢を見たのだが、何だろう?
 そろそろ修羅界の相が出てきて、今後、畜生界の者を地獄界に送り込んでやるという予知夢か。

 まあ、実際は警察官であってもハンドガンで犬を数発で射殺させることは難しい。
 ショットガンくらい持ち込んでやらないと、すぐの射殺は難しいだろう。

 猛獣は取りあえず射殺の動物愛護精神などほとんど無い作者でした。

 いや、たまに猟友会が猪とか熊を射殺したとかいうニュースを聞くと、鍋にして食ってみたいという発想をするのが私なもんで。

 でも、さすがに犬は食えねーなー……。
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