[8月17日14:00.天候:曇 長野県北部山中 マリアの屋敷]
稲生は屋敷東側2階の自室でレポートを書いていた。
稲生:『魔道師の魔法力については、非常に不安定なものがある。これをケータイのパケット通信に例えると分かりやすい。魔法使いが魔法を使うには、大きく分けて2つある。前者は自らに備わった魔力をそのまま使うもの、後者は悪魔や精霊など、魔力を付与してくれる存在と契約してそれを供給してもらい、それを活用するものである。前者は契約したパケットをそのまま使う為、いずれ枯渇する。しかし後者はWi-Fiを使用するようなものであり、その供給が安定しているうちは魔力の消費を気にせず使用できるというメリットがある。しかし、後者にもデメリットはあって……』
稲生とて魔道師見習なのだが、大学生よろしく、レポートをPCで作成しているという辺りがシュールである。
このレポート作成の仕方も組によって方針の違いがあり、あくまでも手書きに拘る所もあれば(手書きの方がそのレポートそのものに魔力が籠もるという考え方から)、アナスタシア組のように弟子の数が多いと管理が大変な為、逆にPC限定にしている所もある。
イリーナ組は自由。
むしろイリーナ自身が、かつてはタイプライターを使っていたということから、稲生がPCでレポートを作成することには反対しなかった。
もっともマリアに言わせると、「師匠は字が汚くて、それを大師匠様に何度も怒られていたから、タイプライターが発明されると、さっさとそれに切り替えたらしい」とのこと。
孫弟子には優しいダンテも、直弟子には厳しいのだった。
稲生:「ん?」
稲生がキーボードを叩く手を止めて、ふと窓の外を見た。
外はどんよりとした雲が空を覆っていた。
稲生:「台風、こっちに来るんだったな……。まあ、屋敷の中にいれば安全か……」
魔力の塊がこっちに来るような感じがして窓の外を見たのだが、やはり黒い雲の中からホウキに跨ったエレーナがこっちに向かって来ていた。
稲生:「また先生宛ての荷物でも持ってきたのかな?」
稲生はそれまでのレポートの内容を保存すると、エントランスに向かった。
師匠の荷物預かりも弟子の務め。
しかし先輩弟子のマリアにそれをさせるのは良くない。
稲生もまだまだ見習い。
雑用は率先して行わなくてはならない。
大学卒業と同時にダンテ一門に入門し、確かにそれまで凶悪妖怪達との壮絶な戦いなどは経験したものの、人間生活としては何不自由の無いものであったことから、他の魔女達からは『新卒採用』と揶揄されている。
その為、稲生はインテリジェンスならではの優秀さを見せることで、早く門内の戦力になろうと心に決めている。
稲生:「わっ!」
エントランスホールに出ようとすると、雷光が窓から差し込んだ。
稲生:「台風じゃなくてゲリラ豪雨かな?」
エントランスホールに行くと、そこにはエレーナがいた。
稲生:「やあ、エレーナ。また、うちの先生宛ての荷物かい?」
稲生は1階に下りる吹き抜け階段を駆け下りた。
エレーナ:「違う!ちょっと聞きたいことがあるんだ!」
何故かエレーナはキッと稲生を睨みつけた。
稲生:「な、何だい!?」
エレーナ:「私の下着のサイズ、鈴木に教えたりしたか!?」
稲生:「な、何のことだ!?キミのサイズなんて知らないよ!」
エレーナ:「ウソつけぇーっ!」
エレーナは右手を大きく振り上げた。
右手の拳に集まる元気玉魔力の集合体。
稲生:(い、イオナズン!?)
稲生がヒヤッとした時だった。
マリア:「Cool down.(落ち着け)」
マリアが2階西側のドアから出て来ると、壁のレバーをガチャンと下に押し下げた。
直後、天井からポリバケツ一杯分の水がエレーナにザバーッと掛かる。
エレーナ:「きゃっ!……マリアンナ!てめ、何しやが……」
ゴン!(水が入っていたと思われるプラ製のポリバケツも落ちて来た)
エレーナ:「ぶっ……!」
マリア:「人んちに来て、何いきなりイオナズンぶっ放そうとしてんだ、あぁ?」
マリア、階段を歩いて下りて来る。
これがイリーナなら、演出の為に残像を残してテレポートして来そうなものだが、あいにくとマリアはまだ練習中である。
練習中なら良い機会ではないかと思うだろうが、失敗すると大変なことになる。
この前は服だけ残して、全裸の状態で屋敷の西側から東側にテレポートしてしまった。
さすがに稲生がいる前では、失敗を恐れてできないということだ。
エレーナ:「く、くそっ……!」
稲生:「と、とにかく何があったのか、話を聞かせてよ」
エレーナ:「そうさせてもらう。……あー、くそ!サイアク!」
マリア:「どうせ自分で蒔いた種だろうが!」
エレーナ:「何だとコラ!」
マリア:「表へ出ろ!」
エレーナ:「上等だ!」
稲生:「あ、あの2人とも……」
マリア&エレーナ:「ユウタは黙ってて!!」
稲生:「ええ〜!……てか」
稲生は観音開きの玄関のドアを開けた。
すると、外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。
当然、雷付き。
稲生:「今、外に出ない方がいいかと……」
エレーナ:「……一時休戦」
マリア:「了解」
稲生:(この2人、仲いいんだか悪いんだか……)
[同日同時刻 天候:晴 東京都板橋区常盤台 ケンショーレンジャー東京支部女子トイレ]
横田:「ハァハァ(;´д`*)ハァハァ……」
ググッ(パンティを嗅いでる)
横田:「ハァハァ(*´∇`*)ハァハァ……」
ギュッ(パンティを股間に押し付けてる)
横田:「ハァハァ(*T▽T*)アァァァァ……」
ピュッ……!
[8月16日13:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
ガーッとエントランスの自動ドアが開く。
エレーナ:「いらっしゃいま……って」
鈴木:「やあ、こんにちは」
エレーナ:「なに?今日はもう満室だよ?」
鈴木:「違う違う。その……この前は報酬の支払いが遅れて申し訳無かった」
エレーナ:「それはもういいよ。ちゃんと払ってくれたんだし。但し、今度またこんなことがあると……」
鈴木:「分かってる。気をつけるよ。それより今日はキミに、お詫びの品を持って来たんだ」
エレーナ:「えっ?」
鈴木はエレーナに、プレゼント用の包装にリボンまで付いた箱を渡した。
鈴木:「もし良かったら、これを受け取ってくれないかなぁ……と」
エレーナ:「マジで!?タダでくれんの!?」
鈴木:「もちろん」
エレーナ:「やったっ!今回の件は全部許す!」
鈴木:「何か、またキミの後輩さんの生霊が俺の夢枕に未だに立ってくるんだけど……」
エレーナ:「リリィには私から言って、すぐにやめさせるから!」
鈴木:「それじゃ、また後で来るから」
エレーナ:「ありがとう!」
鈴木はホテルの外に出て行った。
オーナー:「エレーナ、プレゼントかい?」
エレーナ:「そうなんです!」
オーナー:「ちょって開けて見てみたら?その間は私がここにいるから」
エレーナ:「あ、すいません!」
エレーナはすぐに自分の部屋に戻った。
そして、早速包み紙を開けてみる。
すると、中に入っていたのは……。
稲生は屋敷東側2階の自室でレポートを書いていた。
稲生:『魔道師の魔法力については、非常に不安定なものがある。これをケータイのパケット通信に例えると分かりやすい。魔法使いが魔法を使うには、大きく分けて2つある。前者は自らに備わった魔力をそのまま使うもの、後者は悪魔や精霊など、魔力を付与してくれる存在と契約してそれを供給してもらい、それを活用するものである。前者は契約したパケットをそのまま使う為、いずれ枯渇する。しかし後者はWi-Fiを使用するようなものであり、その供給が安定しているうちは魔力の消費を気にせず使用できるというメリットがある。しかし、後者にもデメリットはあって……』
稲生とて魔道師見習なのだが、大学生よろしく、レポートをPCで作成しているという辺りがシュールである。
このレポート作成の仕方も組によって方針の違いがあり、あくまでも手書きに拘る所もあれば(手書きの方がそのレポートそのものに魔力が籠もるという考え方から)、アナスタシア組のように弟子の数が多いと管理が大変な為、逆にPC限定にしている所もある。
イリーナ組は自由。
むしろイリーナ自身が、かつてはタイプライターを使っていたということから、稲生がPCでレポートを作成することには反対しなかった。
もっともマリアに言わせると、「師匠は字が汚くて、それを大師匠様に何度も怒られていたから、タイプライターが発明されると、さっさとそれに切り替えたらしい」とのこと。
孫弟子には優しいダンテも、直弟子には厳しいのだった。
稲生:「ん?」
稲生がキーボードを叩く手を止めて、ふと窓の外を見た。
外はどんよりとした雲が空を覆っていた。
稲生:「台風、こっちに来るんだったな……。まあ、屋敷の中にいれば安全か……」
魔力の塊がこっちに来るような感じがして窓の外を見たのだが、やはり黒い雲の中からホウキに跨ったエレーナがこっちに向かって来ていた。
稲生:「また先生宛ての荷物でも持ってきたのかな?」
稲生はそれまでのレポートの内容を保存すると、エントランスに向かった。
師匠の荷物預かりも弟子の務め。
しかし先輩弟子のマリアにそれをさせるのは良くない。
稲生もまだまだ見習い。
雑用は率先して行わなくてはならない。
大学卒業と同時にダンテ一門に入門し、確かにそれまで凶悪妖怪達との壮絶な戦いなどは経験したものの、人間生活としては何不自由の無いものであったことから、他の魔女達からは『新卒採用』と揶揄されている。
その為、稲生はインテリジェンスならではの優秀さを見せることで、早く門内の戦力になろうと心に決めている。
稲生:「わっ!」
エントランスホールに出ようとすると、雷光が窓から差し込んだ。
稲生:「台風じゃなくてゲリラ豪雨かな?」
エントランスホールに行くと、そこにはエレーナがいた。
稲生:「やあ、エレーナ。また、うちの先生宛ての荷物かい?」
稲生は1階に下りる吹き抜け階段を駆け下りた。
エレーナ:「違う!ちょっと聞きたいことがあるんだ!」
何故かエレーナはキッと稲生を睨みつけた。
稲生:「な、何だい!?」
エレーナ:「私の下着のサイズ、鈴木に教えたりしたか!?」
稲生:「な、何のことだ!?キミのサイズなんて知らないよ!」
エレーナ:「ウソつけぇーっ!」
エレーナは右手を大きく振り上げた。
右手の拳に集まる
稲生:(い、イオナズン!?)
稲生がヒヤッとした時だった。
マリア:「Cool down.(落ち着け)」
マリアが2階西側のドアから出て来ると、壁のレバーをガチャンと下に押し下げた。
直後、天井からポリバケツ一杯分の水がエレーナにザバーッと掛かる。
エレーナ:「きゃっ!……マリアンナ!てめ、何しやが……」
ゴン!(水が入っていたと思われるプラ製のポリバケツも落ちて来た)
エレーナ:「ぶっ……!」
マリア:「人んちに来て、何いきなりイオナズンぶっ放そうとしてんだ、あぁ?」
マリア、階段を歩いて下りて来る。
これがイリーナなら、
練習中なら良い機会ではないかと思うだろうが、失敗すると大変なことになる。
この前は服だけ残して、全裸の状態で屋敷の西側から東側にテレポートしてしまった。
さすがに稲生がいる前では、失敗を恐れてできないということだ。
エレーナ:「く、くそっ……!」
稲生:「と、とにかく何があったのか、話を聞かせてよ」
エレーナ:「そうさせてもらう。……あー、くそ!サイアク!」
マリア:「どうせ自分で蒔いた種だろうが!」
エレーナ:「何だとコラ!」
マリア:「表へ出ろ!」
エレーナ:「上等だ!」
稲生:「あ、あの2人とも……」
マリア&エレーナ:「ユウタは黙ってて!!」
稲生:「ええ〜!……てか」
稲生は観音開きの玄関のドアを開けた。
すると、外はバケツをひっくり返したような雨が降っていた。
当然、雷付き。
稲生:「今、外に出ない方がいいかと……」
エレーナ:「……一時休戦」
マリア:「了解」
稲生:(この2人、仲いいんだか悪いんだか……)
[同日同時刻 天候:晴 東京都板橋区常盤台 ケンショーレンジャー東京支部女子トイレ]
横田:「ハァハァ(;´д`*)ハァハァ……」
ググッ(パンティを嗅いでる)
横田:「ハァハァ(*´∇`*)ハァハァ……」
ギュッ(パンティを股間に押し付けてる)
横田:「ハァハァ(*T▽T*)アァァァァ……」
ピュッ……!
[8月16日13:00.天候:晴 東京都江東区森下 ワンスターホテル]
ガーッとエントランスの自動ドアが開く。
エレーナ:「いらっしゃいま……って」
鈴木:「やあ、こんにちは」
エレーナ:「なに?今日はもう満室だよ?」
鈴木:「違う違う。その……この前は報酬の支払いが遅れて申し訳無かった」
エレーナ:「それはもういいよ。ちゃんと払ってくれたんだし。但し、今度またこんなことがあると……」
鈴木:「分かってる。気をつけるよ。それより今日はキミに、お詫びの品を持って来たんだ」
エレーナ:「えっ?」
鈴木はエレーナに、プレゼント用の包装にリボンまで付いた箱を渡した。
鈴木:「もし良かったら、これを受け取ってくれないかなぁ……と」
エレーナ:「マジで!?タダでくれんの!?」
鈴木:「もちろん」
エレーナ:「やったっ!今回の件は全部許す!」
鈴木:「何か、またキミの後輩さんの生霊が俺の夢枕に未だに立ってくるんだけど……」
エレーナ:「リリィには私から言って、すぐにやめさせるから!」
鈴木:「それじゃ、また後で来るから」
エレーナ:「ありがとう!」
鈴木はホテルの外に出て行った。
オーナー:「エレーナ、プレゼントかい?」
エレーナ:「そうなんです!」
オーナー:「ちょって開けて見てみたら?その間は私がここにいるから」
エレーナ:「あ、すいません!」
エレーナはすぐに自分の部屋に戻った。
そして、早速包み紙を開けてみる。
すると、中に入っていたのは……。
それにしても、鈴木の企みとは一体何なのでしょうか?
エレーナに渡したものとは?
そして横田に渡した報酬は、どのようにして手に入れたか?
その伏線が回収できるかは【お察しください】。