報恩坊の怪しい偽作家!

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“私立探偵 愛原学” 「賑やかな夜」

2023-06-13 20:20:47 | 私立探偵 愛原学シリーズ
[12月27日18時30分 天候:晴 東京都墨田区菊川 愛原のマンション]

 私は事務所を閉めて、徒歩圏内の同じ地区内にあるマンションに帰宅した。
 来年はこのような煩わしさも無くなる。

 愛原「ただいまァ」

 尚、高橋は夕食の支度の為に先に帰宅していた。

 高橋「お帰りなさいっス!」

 帰宅すると、夕食の良い匂いがしていた。
 キッチンには高橋と、メイド服姿のパールがいた。

 リサ「お帰りなさい!」
 絵恋「お、お帰りなさい……」
 愛原「あ、ああ。ただいま」

 出迎えた2人の少女は、体操服にブルマ姿だった。
 リサは『東京魔王軍』に買ってもらったエンジ色のブルマを穿いており、絵恋は青いブルマを穿いていた。
 高橋以外、コスプレ会場だな。
 青いブルマとは、沖縄中央学園でかつて着用されていたものである。
 どうやら絵恋は、そちらと東京中央の緑の2色を持っているらしい。

 愛原「大丈夫?寒くない?」
 リサ「うん!」
 絵恋「へ、平気です!」
 愛原「リサはともかく、絵恋さんは普通の人間なんだから、無理しなくていいんだよ?寒かったら、もっと温かい恰好をしても……」
 絵恋「大丈夫です。暖房が効いてますので」

 確かに室内は暖房が効いて暖かい。
 しかし、私にとっては普通の長袖長ズボンでちょうど良い室温だと思う。
 それより露出の高い半袖の体操服にブルマでは、どうなのだろうと思った。
 それとも、私よりずっと若いからそうでもないのだろうか?

 愛原「そうかい?」

 私はそれならまあいいかとばかりに自分の部屋に行き、そこでスーツから私服に着替えた。
 夕食は予告通り、すき焼き。
 リサが待ち切れないでいる。

 リサ「先生!早く早く!」
 愛原「あー、ハイハイ」

 私が自分の席に座ると、すぐに高橋が私のグラスにビールを注いでくれた。

 愛原「じゃあ、食べるとしよう。いただきまーす」
 リサ「いただきまーす!」

 リサは早速、すき焼き鍋の中に入っている生煮えの肉を取り出した。

 愛原「まだ、煮え切ってねーだろ」
 リサ「このくらいがちょうどいいんだよ~」
 絵恋「ワイルドなリサさん、素敵
 高橋「へっくし!」
 パール「お肉はだいぶ購入致しましたので、どんどん召し上がってください」
 高橋「あとで食費はもらうからなぁ!」
 愛原「お前が言うなよ……」

 私は呆れながら、菜箸でパールに具を取ってもらった。

 愛原「パールは食わんのか?」
 パール「メイドは最後に頂きます。マサもね」
 高橋「俺は使用人じゃねぇ!」
 リサ「不肖の弟子が、師匠と一緒に食べていいの?」
 絵恋「そうそう。相撲部屋でも、弟子は親方の後に食べるよね?」

 高橋は席を立った。

 高橋「せ、先生。ビールのお代わり、お持ちしましょうか?」
 愛原「まだいいよ」

 ここだと、高橋が1番、立場が中途半端なんだな……。
 100パーセント来客の絵恋、その従者であろうとするパール。
 家族のリサと、弟子の高橋と……。

 愛原「あー、皆。食べながらでいいので聞いてくれ」
 高橋「はい!」
 愛原「明日、仕事が入ったので、高橋とリサには一緒に来てもらう」
 高橋「ああ、あれっスね」
 リサ「なに?なに?」
 愛原「栗原蓮華さんからの仕事の依頼さ」
 リサ「え?あの、鬼斬りセンパイから?」
 愛原「そう。埼玉に『鬼の棲む家』があるらしい。しかし、蓮華さん達がいくら捜索しても、『鬼』は見つからない。そうこうしているうちに、その家は売りに出された上に、その住人達も消息不明とのことだ。結局その家に鬼は住んでいたのか、それを調査して欲しいという依頼だ」
 リサ「鬼って、わたしと同じBOW?」
 愛原「それが分からないんだ。もしもそうなら、とっくにBSAAが出動しそうなものだがね」
 絵恋「場所はどこですか?」
 愛原「おー、もしかしたら、絵恋さんの前の家の近所かもしれないんだ。住所が『埼玉県さいたま市中央区上落合……』なんだけど、知ってる?」
 絵恋「思いっきり近所な住所っぽいわね!」
 パール「……というか、もしかしたら、それこそ近隣レベルかもしれません。地図ではお調べになりましたか?」
 愛原「あ、いや、まだだな……」
 パール「お調べしましょうか?」
 愛原「そうだな……」
 高橋「お、俺がやりますよ!俺は先生の弟子ですから!」

 高橋は席を立った。
 そして、自分の部屋へと向かって行った。

 愛原「忙しない奴だ。……とにかく、今は売りに出されている。仲介している不動産屋が、正に絵恋さんの実家がやっている不動産仲介会社だから、鍵も借りて来た。幸い、もう年末ということもあって、明日は内見の予約は入っていないらしい」
 絵恋「前に住んでいた方ってのは、何てお名前だったんですか?」
 愛原「あ……名前までは聞いてない。俺が聞いている限りでは、3人家族が住んでいたというんだな」
 絵恋「3人家族……」
 愛原「夫婦に子供が1人って感じ」
 リサ「その子供が鬼だったのかな?」
 愛原「分からん。ただ、蓮華さんの情報によれば、そこで人食い……あ、夕食時に言う話じゃないな。とにかく、リサの欲望丸出しの展開が起きていた可能性があるという。そこで、蓮華さんを含む鬼狩り隊が訪ねてみたのだが、現場を押さえることはできなかったそうだ」
 絵恋「ということは、栗原先輩は1度中に入ってるわけですね?」
 愛原「そうだな」
 絵恋「中はどんな感じだったのでしょう?」
 愛原「ごくごく普通の一軒家だったそうだ。2階建てで車庫付き、狭いながらも庭付きの」
 絵恋「さいたま市内では、本当にごくありふれた家って感じですね」
 愛原「そうみたいだね。玄関があって、入るとリビングとダイニングがあったそうだ」
 リサ「うん。フツー過ぎ」

 そんなことを話していると、高橋が戻って来た。
 どうやら自分の部屋のノートパソコンから、プリンターに地図を印刷したらしい。

 高橋「お待たせしました!先生、凄いっスよ!」
 愛原「何が!?」
 高橋「こいつンちの裏手です!」
 愛原「なにいっ!?」

 地図によると、件の物件は斉藤家の北隣にあった。
 日本の家は、あまり日の当たらない北側には窓を設けない。
 それは斉藤家もそうであった。
 だから、気づかなかったのだ。
 斉藤家には屋上があったが、その屋上の塔屋自体が北側にある為、その更に北側にある例の家の存在には気づかなかった。
 尚、4階建ての斉藤家に対して、2階建ての家は採光の問題は大丈夫なのかと思ったが、一応、斉藤家は1車線分の道を挟んだ向かいにあるので、その分、遮蔽が避けられているようである。

 絵恋「これは気づかなかったわねぇ……」
 パール「確か、数年前まではコインパーキングだった場所です。それが無くなって、工事が始まったのですよ。新しい家でも建つのかと思っていたのですが、どうやら正解でしたね」
 愛原「なるほど。コインパーキングは、遊休地の有効活用法としてはベタな法則だからな。……数年前ということは、かなり築浅の家なんだな」
 パール「そういうことになります」

 借家だったのだろうか?
 分譲住宅なら、買ってたったの数年で引っ越すなんて勿体ないと思うが……。
 とにかく、明日行ってみることにしよう。

 愛原「高橋、車を頼む」
 高橋「了解っス!」

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