報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「秋保温泉」

2022-05-23 11:04:36 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月3日14:45.天候:雨 宮城県仙台市太白区秋保町湯元 ホテル瑞鳳]

 バスは秋保温泉街を通る県道を走行した。

 勇太:「見えて来た」

 霧雨煙る温泉街を進むと、宿泊先のホテルが現れる。
 バスは駐車場に入ると、ホテル正面入口前で停車した。

 運転手:「はい、お疲れさまでしたー!ホテルに到着でーす!お忘れ物にご注意ください!」
 マリア:「アメリカではシャトルバスのドライバーにチップを払う習慣があるが、日本では?」
 勇太:「無いですよ」

 ていうか、イギリスにも無いはずだが。
 バスが到着すると、従業員一同が正面玄関に出て出迎えてくれる。
 ホテルの送迎バスなら到着時間が決まっているので、そういうことがしやすいのだろう。
 尚、団体バスの場合も到着時間をホテル側に伝えていればそうすることが殆どだ。

 佳子:「あなた、荷物!」
 宗一郎:「おっと!」

 荷物室に預けた荷物を忘れて、ホテルに入ろうとする宗一郎。

 勇太:「やれやれ……」

 代わりに勇太が受け取った。

 マリア:「凄いホテルだ。明らかに師匠がいることを想定して計画された旅行じゃないの?」
 勇太:「そんな気がするね……。当の先生は、モスクワ市内ではどんなホテルに泊まってるんだろう?」
 マリア:「師匠の話では、ホテルではないらしい」
 勇太:「ん?」
 マリア:「モスクワ市内にも師匠の協力者がいて、そこの家に泊まってるらしいな」
 勇太:「そうなんだ」
 マリア:「何しろ向こうじゃ、アナスタシア先生達が違う意味で活躍しているので、ホテルも危なくて泊まれないらしい」
 勇太:「アナスタシア組が何を?ウクライナ側のスパイの取り締まりか何か?」
 マリア:「いや……。勇太も聞いたことない?ロシアでは財閥関係者が不可解な死を遂げているって」
 勇太:「あっ、何とかって富豪の……」
 マリア:「一家心中とか、不慮の事故とか……。日本のマスコミでは、プーチン大統領による粛清だとされている」
 勇太:「違うの?」
 マリア:「国外逃亡を図ろうとした富豪の中には、ロシアン・マフィアの手を借りようとして失敗し……結果……というものもそこそこあるそうだよ」
 勇太:「! そのロシアン・マフィアって……」
 マリア:「アナスタシア組だよ」
 勇太:「うあー……」
 マリア:「そのアナスタシア先生とうちの師匠は仲がいいから、敵対マフィアに目を付けられると困るんで、却ってホテルには泊まれないらしい」
 勇太:「結局、イリーナ先生は何がしたいんだろう?」
 マリア:「恐らく、クレムリンに侵入した“魔の者”の調査。それだろうね」
 勇太:「ロシアとウクライナとの戦争も、“魔の者”が?」
 マリア:「“魔の者”は、『魔女の卵』を食べるのが大好き。私が卵だった頃、狙われたわけだよ」
 勇太:「戦争を起こしてまで?」
 マリア:「魔女の卵は、ロシア政府関係者の中にいる。だから、“魔の者”は狙ったし、師匠もそれを疑って調査しているんじゃないかな?」
 勇太:「そんな時期に、温泉旅行に来ちゃって申し訳無いなぁ……」
 マリア:「師匠がいいって言ってるんだからいいんだよ」

 ロビーでそんなことを話していると、宗一郎がフロントからやってきた。

 宗一郎:「よし。じゃあ、行こうか」
 仲居:「ご案内させて頂きます」

 勇太達はエレベーターで客室フロアに上がった。
 そこで通された部屋は、二間続きの部屋だった。

 勇太:「すっごい眺めだ!」
 マリア:「うちの屋敷の眺めより開けてていいね」
 勇太:「そりゃ、普通の人は入って来れないほどの山深さだからね」
 マリア:「うん、それは確かに……」

[同日16:00.天候:雨 同ホテル4F 温水プール]

 勇太の両親が温泉に入っている間、魔道士2人はホテル内のプール。
 温水プールなので、まだ5月でも入ることができる。

 マリア:「プールに入るから水着持って行こうなんて勇太が言ってたけど、まさか本当にあったとは……」

 マリアは緑色のホルタービキニを着ていた。

 マリア:「さすがにスク水は着ないよ?」
 勇太:「はい。もう、これで十分です……!」

 プールにはウォータースライダーもあるのだが、それは子供用。
 ゴールデンウィークだからか、子供達の姿も多い。

 アスモデウス:「泳がないの?」
 ベルフェゴール:「悪魔がプールではしゃぐのも、どうかと思うよ?」

 プールサイドで寛ぐ悪魔二柱。
 ベルフェゴールは、筋肉ムキムキノの裸体を曝け出し、下は緑色のブーメランパンツである。
 因みに髪形は黒のオールバック。
 それでサングラスを掛けているものだから、どこかのマフィア幹部のバカンスである。
 アスモデウスは紫色のタイサイドビキニを着ていた。

 アスモデウス:「まーた、カッコつけちゃって。あたしは行ってくるねー」
 ベルフェゴール:「ついでに獲物探しかい?もう契約者も決まってるんだから、余計なことはするんじゃないよ」

 尚、先述した通り、悪魔の姿は普通の人間には見えない。
 なので、見えない人間からしてみれば、誰もいない所で何故か波打っているように見えるのである。

 ベルフェゴール:「怪奇現象ものだな、あれは……」

 もっとも、トロピカルドリンクを飲むベルフェゴールだって、見えない人間からして見れば……【お察しください】。

 多摩準急(名誉監督):「はい、カット!OKだよ!」
 AD:「お疲れさまでーす!……カントクは?」
 多摩:「あそこで泣いてやがる」
 雲羽百三:「しくしくしく……。俺にもビキニの似合う人が結婚相手にいればなぁ……」
 多摩:「次のシーンは、レストランだな?」
 AD:「そうです」
 多摩:「オメーもいつまでも泣いてんじゃねぇ!撮影がおしてんだぞ!」
 雲羽:「婚活ぅ……」
 AD:「まあ、ビキニの似合う娘さんを生んでくれる人と結婚するか、既にそういった娘さんがいるシンママと結婚するかのどちらかしかないですねぇ……」
 雲羽:「……それな!」
 多摩:「おい、変なこと考えてるんじゃないだろうな!?」
 アスモデウス:「あっ、獲物はっけーん!」
 ベルフェゴール:「まさか、作者兼監督が悪魔に魅入られようとはねぇ……」
 多摩:「いいから!次の撮影の準備して!」

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