報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「秋保温泉での一夜」

2022-05-23 16:33:31 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[5月3日18:00.天候:雨 宮城県仙台市太白区秋保町湯元 ホテル瑞鳳]

 ホテル内のプールで泳いだ勇太とマリアは一旦部屋に戻り、そこで両親と合流した。

 宗一郎:「おっ、戻って来たなー」
 マリア:「ただいま、戻りました」
 勇太:「屋敷以外のプールで泳いだの、久しぶりだよ」
 宗一郎:「それは良かった。夕食は19時からだから、浴衣に着替えて待ってろ」
 勇太:「19時からかぁ……」

 プールで泳いだことにより、だいぶカロリーを消費した為か、空腹を感じている勇太。

 宗一郎:「入れ替え制のビュッフェだからな。我々は二部の方なんだ」
 勇太:「なるほど……」
 佳子:「お茶菓子があるから、これでも食べたら?」
 勇太:「そりゃいい!マリアも一緒に!」
 マリア:「ありがとう」

 マリアは浴衣を持って、次の間に入った。
 座椅子などが置いてある部分は10畳以上の広さがあったが、次の間は6畳くらいある。
 ここにマリアが寝る。
 勇太とマリアが浴衣に着替えている間、佳子がお茶を入れてくれたので、それを飲みながら茶菓子を食べた。

 マリア:「雨、やまないね……」

 雨自体は強くない。
 今は霧雨くらいだ。

 勇太:「『霧雨煙る♪秋保温泉♪』ってか……」
 マリア:「何それ?」
 勇太:「『霧雨煙る♪大石ヶ原♪』の替え歌……」
 マリア:「よく分からん?」

[同日19:00.天候:雨 同ホテル・レストラン]

 夕食の時間になり、勇太達はレストランに移動した。

 スタッフ:「いらっしゃいませ。ご案内致します」

 ビュッフェスタイルが一般的なのも、時代の流れだろう。
 団体旅行が主流だった頃は、大広間で膳に乗った定食形式が通例であった。
 あの、固形燃料に火を点けて煮る一人鍋が付いていたタイプである。
 今でも団体旅行に参加すれば、そういう形式での夕食となるのだろう。
 その一環で家族旅行や少人数のグループ旅行客であっても、大広間での夕食を取らされたものである(さすがにグループ客同士での会場となり、団体客と混在はなかった)。
 バブルの頃は部屋食での旅館もあった。
 しかし、部屋食は食事の用意や後片付けの手間が掛かる。
 また、バブル崩壊後、団体旅行の減少により、大広間での膳形式も効率が悪くなった。
 そこで見出した答えが、ビュッフェスタイルなのだろう。
 これなら個人客から団体客まで、全ての客層に対応できる。
 デメリットとしては、豊富な種類の料理を用意しないと飽きられてしまうので、そうする為のコストが高いのと、団体客も収容できる広い会場と人数も必要になるということくらいか。
 しかし、個人客もグループ客も全部ひっくるめられる所は、ホテル側にとっては大きいのかもしれない。

 スタッフ:「こちらでございます」

 テーブル席に案内される。
 席に着くと、スタッフからレストランについての案内があった。
 ビュッフェにはない追加料理もあるとのこと。
 まあ、あえて追加用とするだけあって、なかなかいい値段する。
 ビュッフェスタイルにすれば、食事を運ぶスタッフも削減できるので、この辺の人件費圧縮という狙いもあるのだろうか。
 せいぜい、こういう案内係のスタッフや食事を下げる係のスタッフだけ置いておけば良い。
 後は客が銘々、好きな料理や飲み物を取りに行けば良い。

 宗一郎:「まずは乾杯だ、乾杯」

 ドリンクコーナーに行って、ビールやワインを持ってくる。
 飲み放題は別料金だが、それは払った。
 昼間飲めなかったので、ここでがぶ飲みする気であろう。
 もっとも、佳子がどこまで許すかにもよるが。
 尚、アルコール度数はウィスキーやワインと同等ながら、日本酒や焼酎はマリアは飲めない。
 飲むと悪酔いする。
 ただ単に酔っ払うだけなら良いのだが、魔力が暴走することが分かって来たので、イリーナからも禁止されている。
 酒を飲むと魔力が暴走するのは、何もマリアだけとは限らず、他の魔女にも見られる傾向である。
 リリアンヌはそれを利用して、あえて悪酔い状態で悪人粛清を行うのだ。
 稲生親子はビール、佳子はカシオレ、マリアはワインだった。
 ドリンクカウンターにはバーテンダーがいて、カクテルを注文すると、その都度作ってくれる。

 宗一郎:「乾杯したら料理だ、料理」
 勇太:「おー!……あっ、やっぱり牛タンある」

 ドリンクコーナーのバーテンダー同様、料理コーナーの方も、調理師が目の前で作ってくれる演出付きだ。

 宗一郎:「昼間食べたろうに……」
 勇太:「せっかくの食べ放題だからね、頂くよ」
 マリア:「天ぷらある!」

 天ぷらも目の前で揚げてくれる。
 ……と。

 宗一郎:「ふーむ……。目の前で調理することで客の目を楽しませる半面、作り置きして発生する売れ残りのフードロスを抑える狙いがある……か。フムフム、何かの参考になるかもしれん」
 勇太:「父さん、一瞬仕事モードに入った」

 宗一郎がどうやってこのホテルの宿泊券を手に入れたのかは不明だが、もしかすると、仕事の一環として入手したのではないかと疑う勇太だった。

[同日21:00.天候:曇 同ホテル客室(勇太達の部屋)]

 勇太:「も、もう入らない~……」
 マリア:「ついつい食べてしまいますね」
 宗一郎:「食べ過ぎだよ……ヒック」
 佳子:「そういうあなたも飲み過ぎよ!」
 宗一郎:「ご、ゴメン……」

 部屋に戻ると、既に布団が敷かれていた。
 次の間の所にだけ、マリアの布団が敷かれている。
 さすがに、まだ正式な家族になっていないマリアが、同室で寝ることは躊躇われたということだ。

 宗一郎:「うー……飲み過ぎた……」
 勇太:「うー、食べ過ぎた……」

 それぞれ同じタイミングで布団に入る親子。
 
 宗一郎:「……」
 勇太:「……って、胃もたれして寝れん!」

 宗一郎はすぐにイビキをかき始めたが、勇太はそういうわけにはいかなかった。

 佳子:「しょうがない。売店に行ってきなさい。多分、食べ過ぎとか飲み過ぎの薬くらい売ってるはずよ」
 勇太:「そ、そうだね」

 勇太とマリアは、再び部屋を出た。
 薬といっても、医薬品はホテルの売店では売れないので、医薬部外品を購入することになる。

 勇太:「父さんの分も買ってきたよ」
 佳子:「ありがとう。あの飲みっぷりでは、明日のお酒が残りそうだからね。こういうのを飲ませておくといいのよ」
 勇太:「なるほど」
 佳子:「というわけで、寝る前にお風呂に入ってきなさい」
 勇太:「えっ?」
 佳子:「まだ、プールにしか入ってないでしょ?」
 勇太:「そうでした。マリア、行こう」
 マリア:「分かった」

 勇太とマリアは、大浴場に向かった。
 

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