報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「台風一過」

2014-10-22 14:32:15 | アンドロイドマスターシリーズ
[10月14日08:00.東京都文京区本郷 ホテル・ドーミーイン水道橋 敷島孝夫&アリス・シキシマ]

「台風、無事に通過したみたいだな」
 敷島はホテルの朝食会場で、つぶやくように言った。
 まだ少し風は強いものの、あれだけ懸念されていた交通機関への影響というのも、思ったほどではなかったようだ。
「どうした、アリス?いつものように、こういったバイキングでは飯を山盛りにするくせに」
 テーブルを挟んで向かい側に座るアリスは、いつものテンションではなかった。
「温泉行きたい……」
「お前、このホテルがどういうホテルが知ってて言ってんだよな?」
 詳細はホテル公式サイトをチェックのこと。
 敷島は変な顔してアメリカ人妻を見た。
「昨夜も今朝も、大浴場行ってたじゃないか」
「だーかーらっ、尚さら本物の温泉に行きたくなったってことよ」
「そういうセリフは、仕事が一段落してから言えよ。時間もカネも余裕無いんだから」
「ボーカロイド達が稼いでるじゃない?」
「ボカロ達の維持費とお前の研究費用で、プラマイ・ゼロだっつの!」
 いかにボカロなどのアンドロイド達の維持費が抑えられるのかも、研究対象なのである。
 七海は軽量化並びに維持費の抑制に今のところ成功しているということで、少なくともメイドロボットが真っ先に実用化されるのではないかと目されている。
「ぶーっ……」
 頬を膨らませるアリスだった。
「交通費だってお前とマルチタイプの分は財団から出たようなものの、俺やボカロ達はライブの売り上げの中から出さないと行けないんだからな」
「ライブは大成功だったんでしょう?」
「おかげで帰りは新幹線に乗れそうだが、そうでなかったら車道をひたすら行くことになる」
「財団からも助成されてるはずだけど?」
「お前がそれを上回る研究費用をバカスカ使ってるからだろうが!」
「イザとなったら、じー様の遺産使うわよ」
「売れるわけねーだろ!全部テロ用だし!テロ組織に売る気か!

[同日08:50.JR水道橋駅 敷島、アリス、鋼鉄姉妹、ボカロ・オールスターズ]

〔まもなく2番線に、各駅停車、津田沼行きが参ります。危ないですから、黄色い線までお下がりください〕

 平日の朝ラッシュで賑わう水道橋駅。
「次の御茶ノ水で乗り換えるからな」
「タクシーに分乗して東京駅に迎えなかったの?」
 と、MEIKO。
「すまん。予算が……」
「しょうがないわね」
 黄色い帯を巻いた電車が入線してくる。

〔すいどうばし〜、水道橋〜。ご乗車、ありがとうございます〕

「どーれ、乗るか」
 敷島達はメチャ混みの電車に乗り込んだ。

 ♪♪(発車メロディ)♪♪

「闘魂込ぉめて〜♪」
「リン、発メロ歌うな。ジャスラックがうるさい」
「そっちかよ」
 ミクに突っ込む敷島に突っ込むアリス。
 因みに作者の友人はアンチ巨人であり、
『商魂込めて♪強行開幕♪電気飛ぶ飛ぶ♪4万キロワット♪』
 と、水道橋駅2番線の発車メロディを歌っていた。
 まだ、東日本大震災による電力不足が取り沙汰されていた頃である。

〔2番線、ドアが閉まります。ご注意ください。次の電車をご利用ください〕

 電車は台風通過中とは打って変わって、雲間から朝日が時折差す中、水道橋駅を発車した。

〔次は御茶ノ水、御茶ノ水。お出口は、右側です〕

 どういうわけだか朝ラッシュ時は乗り換え案内をしないので、初心者は要注意。

[同日09:00.JR東京駅中央線ホーム→東北新幹線ホーム 上記メンバー]

「ふう……。凄い混み具合だった」
「タカオ、あんたあれで毎日通勤してたんでしょ?」
「まあ、そうなんだけど、俺は大宮から毎日ケト線で座って通勤してたからさぁ……。まあ、今回はたったの10分くらいだ。中電で1時間以上もあの状態のまま通勤させられる人達のことを思えば、文句は言えんさ」
 敷島は肩を竦めた。
 コンコースに下りてから、発車票を眺める。
「うーん……。ちょこちょこ遅れてる路線はあるみたいだな……。特に、風の強い地域を走る路線はダメージを受けるようだ。まだ俺達が乗って来た中央線は内陸を走るから助かった」
「で、東北新幹線は?」
 シンディが聞く。
「だいたい時刻表通り。予想通りの展開だ」
「車中でテロリストが暴れたりしてね」
「その時はお前達の出番だ。鎮圧してもらうぞ。もちろん、乗員・乗客の安全最優先でな」
「OK.テロリストのことはテロリストに任せておけってね」
(血で血を洗う自体と紙一重かもな……)
 敷島は今そう思った。

 とにかく、JR東日本新幹線ホームに上がる。

〔23番線に到着の電車は、9時24分発、“やまびこ”131号、仙台行きと“つばさ”131号、山形・新庄行きです。……〕

 エスカレーターで上がっていると、ちょうど上り列車が到着する頃だった。

〔「……23番線の電車は折り返し車内清掃のため、一旦ドアが閉まります。車内清掃、整備が終わるまで、しばらくお待ちください」〕

「兄ちゃん、次のみくみくが速いよ?」
 リンは敷島達の乗る列車の一本後に発車する“はつね”“はやぶさ”号のことを言った。
 カラーリングが初音ミクの髪の色(というかシンボルカラー)にそっくりなので、他のボカロ達からもネタにされている。
「予算が……。すまん」
 “はやぶさ”の特急料金は、それ以外の列車の特急料金より数百円高い。
 これはかつて、東海道・山陽新幹線の“のぞみ”の特急料金が“こだま”“ひかり”より高かったのと同じことだ。
「その割には指定席なのね」
 MEIKOは10号車に並ぶ敷島達を見て言った。
「自由席だと、こいつらが遠慮して立つからな」
 敷島がエミリーやシンディを指さした。
「だって私達は別に、立っても座っても電力消費量が変わらないから」
 と、シンディが答えた。
 彼女らが座るのは着席義務がある航空機、高速バス、それと構造上立ち席のできない乗用車内のみである。

[同日09:24.JR東北新幹線“やまびこ”131号10号車内 上記メンバー]

 ホームに発車ベルが鳴り響く。
 東海道新幹線ホームと違い、発車メロディではない。

〔23番線から、“やまびこ”131号、仙台行きと“つばさ”131号、山形・新庄行きが発車致します。次は、大宮に止まります。黄色い線まで、お下がりください〕

 台風一過でまだ若干強い風が吹く中、列車は東京駅を発車した。
 神田まで先ほど敷島達が通って来たルートを辿ることになる。
 幸いなのは運用に当たっているこの車両が後期タイプのため、窓側に充電コンセントが付いていることだ。
「充電は仲良く回せよ」
「はーい」
 アリスは座席の網ポケットに入っている冊子“トランベール”を開いていた。
「湯守のいる宿……草津温泉か……」
 10月号では、草津温泉の特集でもやってるようだ。
「お前なぁ……」
 敷島は呆れた。
「タカオ、どこか温泉街から仕事取ってこれない?」
「アホか!」
「MEIKO辺り、旅番組に出せない?」
「MEIKOが旅してどうするんだよ?お前が行きたいんだろ?」
「うん。プロダクションの人間として一緒に」
「俺の仕事取る気か!」

 取り急ぎ、まずは研究所に帰る必要があった。
 台風19号は東北地方も通過したはずなので、被害が出ていないかどうかだ。
 新幹線がほぼ定時に動いており、留守番のマリアやルイージからも何の報告も無いので、楽観的ではあったが……。

「プロデューサー、意外と秋の温泉は料金安いようですよ。前に、旅番組に出た時に入った情報ですが……」
 KAITOがそっと敷島に耳打ちした。
「いくら料金が安いったって、アリスのことだから結局予算オーバーになるんだって。結婚相手は、ちゃんと金遣いが堅実なのを選べよ、作者ぁ?」

 は、はい。分かりました。
 えー、列車は台風一過の東京都内を駆け抜け、まずは埼玉に向かって行った。

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1 コメント

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Unknown (ANP)
2014-10-23 22:29:33
いいですかー。今でものぞみとひかり・こだまでは指定席料金は違いがあるんですねー。

まぁちょっとだけ高いだけですけど。

それにしてものぞみも停車駅が増えましたねー。

姫路(まぁわかる)新山口(山口の県庁所在地ではないけどわかる)福山(うーん・・・)姫路(まぁわかる)西明石(始発のみ(は?))徳山(は?)

で、静岡には止まらせないという・・・・・静岡県民が怒って名古屋ツインタワーを焼き討ちするかもしれんぞ!いいのか!
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