[10月18日19:40.東名高速下り線・足柄サービスエリア 稲生ユウタ、威吹邪甲、イリーナ・レヴィア・ブリジッド、マリアンナ・スカーレット]
ユタ達を乗せた高速バスが東名高速屈指の大規模なサービスエリアに入る。
〔「足柄サービスエリアです。こちらで10分の休憩を取らせて頂きます。発車時刻は19時50分です。お時間までにバスに戻るよう、お願い致します」〕
「降りてみましょうか」
「ええ」
マリアはこくんと頷いた。
「“銀河鉄道999”みたいに、何かあったりしてね」
イリーナはクスッと笑った。
「イリーナさんが言うと、冗談じゃなくなるんで!」
ユタは慌てて抗議した。
「“銀河鉄道999”は10分停車とか、そんなチャチな停車時間じゃないから大丈夫よ」
「まあねぇ……」
この前、威吹と乗った時は雨が降っていたが、今日はそうでもない。
しかし曇っているせいか、月は見えなかった。
「明日はどこに行きましょうか?」
「あー、えーと……」
ユタの質問にイリーナの顔を見るマリア。
「いいよ。マリアの好きな所にしな」
「それじゃあ……」
[同日19:50.JRバス関東“やきそばエクスプレス”18号車内 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]
〔発車致します。バスが動きますので、ご注意ください。再び高速道路を走行致しますので、お座席のシートベルトは必ずお締めください。足柄サービスエリアの次は東名江田、江田です〕
バスが再び走り出す。
「何も無かったわね」
「当たり前だろうが」
微笑を浮かべるイリーナに変な顔をする威吹だった。
「しかしお前の弟子というのは、アレだな。変わった趣味をしているものだな」
「まあ、そこは魔道師やってるくらいだからねぇ……。逆にステレオタイプの一般人では、魔道師になれないのよ」
「普通は買い物……まあ、それも含まれてはいるが、映画観に行ったり、遊興施設に行ったりするものではないか?」
威吹がこっそり後ろで聞き耳立てていたのだが、マリアが希望した行き先とは……。
「イオンモールと日帰り温泉とは……。まるで、いつぞやの奥州行と大して変わらんな」
「そう言いつつ、威吹君も一緒に行くんでしょう?」
「オレはユタの護衛としてだな……。まだ、不届き者の妖(あやかし)もいるみたいだしな」
「魔界から人間界に流入しないよう、色々と防衛策はしているみたいだけど、弱い妖力の妖怪までは防ぎ切れないみたい。威吹君が魔界に行くのだって、裏技使ったくらいだもんね」
「まさか、冥界鉄道公社に乗り入れて来た魔界高速電鉄の電車に乗れとはな……」
「私が頼めば、チャーター便を出してもらえるわよ」
「お前、どんだけ権限があるんだ?」
「そこは元・宮廷魔導師ですから〜、エッヘン」
「あの鉄道会社は、国家権力を諸共とせずが訓示だったと思うが……」
威吹は首を傾げた。
「……本当はあれなんだろ?お前、今後は……」
「マリア、ポッキー食べる?」
イリーナは威吹の言葉を遮るように、前の席に座る弟子にポッキーの箱を出した。
「あっ、師匠、いただきます」
「ユウタ君も」
「ありがとうございます」
マリアの代わりに受け取るミク人形。
マリアが与える魔力に応じて、等身大の人間並みの容姿になったり、デフォルメされたコミカルな人形になったりする。
今は後者。
しかし、どちらの姿になっていようと、いざ戦いの時には高い戦闘力を発揮する。
出掛ける際には、代表でミク人形とクラリスという名のフランス人形がマリアについてくる。
スピアとサーベルを駆使して、敵を追い詰める。
「……まあ、私も今後のなりふりは決めなきゃいけないわけよ。威吹君もそうだということよ」
「オレは……」
[同日22:30.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 上記メンバーにプラス威波莞爾]
「ただいまぁ」
「お帰りなさい」
莞爾が出迎える。
「明日まで魔道師が2人滞在だ」
「ははっ」
威吹の言葉に、弟子の莞爾が頷いた。
「どうぞ、寛いでください。いつもの奥の部屋、使ってくださいよ」
「ありがとう」
ユタが案内している間、莞爾は茶の用意をしていたが、
「ここ最近、魔道師の来訪頻度が多くなりましたね」
と、威吹に振った。
「うむ。魔界の情勢があまり良くないみたいだ」
「先生がお留守の間、オレの所にも正規軍入隊の勧誘が来ましたよ」
「なにっ?」
莞爾は封筒を渡した。
「大帝の治世なら、勧誘ではなく、もはや召集令状です」
「オレは事実上の徴兵逃れになるな」
「先生の場合は仕方が無いです」
莞爾はポーカーフェイスを崩さずに言った。
[10月19日09:00.同場所 ユタ、威吹、イリーナ、マリア、カンジ]
「皆、朝早くからマジメだねぇ……」
1番遅く起きてきたイリーナ。
威吹とカンジは庭で剣の稽古をしていたし、ユタは朝の勤行、マリアは持参した魔道書を読みふけっていた。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ。わが師により使役されし、レヴィアサタンよ。……」
魔道師が詠唱する文言も、どこか宗教じみているのは気のせいではないと思う。
で、今は朝食。
「お前が不真面目なだけだろうが」
威吹がそう突っ込んだ。
「宮廷魔導師になったら、もうこんなヒマな時間は無いぞ」
「そうなんだよねぇ……」
「宮廷魔導師?」
ユタはトーストにかぶり付いて首を傾げた。
「ユウタ君もアルカディア王国には行ったことにあるでしょう?要はそこの内閣官房長官とか、宮内庁長官みたいな仕事……って言えばいいのかなぁ……?」
「官房長官と宮内庁長官は、全然業務内容が違うような気がしますが……」
「王様……まあ、アルカディアは女王様だけど、そっちのご機嫌も取らなきゃいけないから大変なのよ」
「そのようで……」
カンジが同調した。
カンジは自前で魔界の機関紙を定期購読しているのだが、その1つの新聞、『アルカディア・タイムス』に、その日1日の王室の様子が掲載されている。
昨日は魔界共和党の横田理事がルーシー女王にセクハラまがいのことをして、投獄されたという。
「『魔王にセクハラすんなって何万回言わせんの!!』と、お怒りの御様子です」
「人間界にも定期的に出入りする珍しい人間の党員ね。確か人間界では、とある宗教団体の幹部をやってるみたいよ」
「そうなんですか。しかし、普通は斬首にされそうなものですが……」
「死刑制度を廃止にしようっていう動きがあるから、そうおいそれと死刑にできないのかもね」
「へえ……。しかし、やっぱり魔界の王様……魔王ってのは、どうしても男っていうイメージがあるんですが、女性の魔王様も珍しいですね」
「期間限定だという話だけどね。数百年」
「人間界では大きな歴史の区切りですよ、それ」
要は、(魔族から見れば)たったの数百年しか任期の無い代行魔王様が、何勝手に王国を作り変えてんだという反発が古参魔族から大きく噴出しているということだ。
[同日11:00.イオンモール与野 上記メンバー]
「いつぞやの事態はカンベンだぞ。ユタに迷惑掛けるなよ」
ユタと2人で行動したがるマリアに、威吹はそう言った。
今年のゴールデンウィークにおける、別のイオンモールでの出来事を言っているのだ。
「分かってる!」
マリアはキッと威吹を見据えた。
「じゃあ、行ってきます」
「お昼ご飯までには、買い物終わらせるんだよ」
「分かってます」
2人は連れ添って行ってしまった。
「さーて、アタシは別行動するかねぇ……」
「お前はお前で何か目的があるのか?」
「魔道師にも色々やることがあってねぇ……」
水晶玉を手に歩くイリーナ。
「じゃ、呼び込みよろしくー」
水晶玉を机の上に置いた。
「商売かよ!」
(この人がやれば100パー当たるな)
ユタ達を乗せた高速バスが東名高速屈指の大規模なサービスエリアに入る。
〔「足柄サービスエリアです。こちらで10分の休憩を取らせて頂きます。発車時刻は19時50分です。お時間までにバスに戻るよう、お願い致します」〕
「降りてみましょうか」
「ええ」
マリアはこくんと頷いた。
「“銀河鉄道999”みたいに、何かあったりしてね」
イリーナはクスッと笑った。
「イリーナさんが言うと、冗談じゃなくなるんで!」
ユタは慌てて抗議した。
「“銀河鉄道999”は10分停車とか、そんなチャチな停車時間じゃないから大丈夫よ」
「まあねぇ……」
この前、威吹と乗った時は雨が降っていたが、今日はそうでもない。
しかし曇っているせいか、月は見えなかった。
「明日はどこに行きましょうか?」
「あー、えーと……」
ユタの質問にイリーナの顔を見るマリア。
「いいよ。マリアの好きな所にしな」
「それじゃあ……」
[同日19:50.JRバス関東“やきそばエクスプレス”18号車内 ユタ、威吹、イリーナ、マリア]
〔発車致します。バスが動きますので、ご注意ください。再び高速道路を走行致しますので、お座席のシートベルトは必ずお締めください。足柄サービスエリアの次は東名江田、江田です〕
バスが再び走り出す。
「何も無かったわね」
「当たり前だろうが」
微笑を浮かべるイリーナに変な顔をする威吹だった。
「しかしお前の弟子というのは、アレだな。変わった趣味をしているものだな」
「まあ、そこは魔道師やってるくらいだからねぇ……。逆にステレオタイプの一般人では、魔道師になれないのよ」
「普通は買い物……まあ、それも含まれてはいるが、映画観に行ったり、遊興施設に行ったりするものではないか?」
威吹がこっそり後ろで聞き耳立てていたのだが、マリアが希望した行き先とは……。
「イオンモールと日帰り温泉とは……。まるで、いつぞやの奥州行と大して変わらんな」
「そう言いつつ、威吹君も一緒に行くんでしょう?」
「オレはユタの護衛としてだな……。まだ、不届き者の妖(あやかし)もいるみたいだしな」
「魔界から人間界に流入しないよう、色々と防衛策はしているみたいだけど、弱い妖力の妖怪までは防ぎ切れないみたい。威吹君が魔界に行くのだって、裏技使ったくらいだもんね」
「まさか、冥界鉄道公社に乗り入れて来た魔界高速電鉄の電車に乗れとはな……」
「私が頼めば、チャーター便を出してもらえるわよ」
「お前、どんだけ権限があるんだ?」
「そこは元・宮廷魔導師ですから〜、エッヘン」
「あの鉄道会社は、国家権力を諸共とせずが訓示だったと思うが……」
威吹は首を傾げた。
「……本当はあれなんだろ?お前、今後は……」
「マリア、ポッキー食べる?」
イリーナは威吹の言葉を遮るように、前の席に座る弟子にポッキーの箱を出した。
「あっ、師匠、いただきます」
「ユウタ君も」
「ありがとうございます」
マリアの代わりに受け取るミク人形。
マリアが与える魔力に応じて、等身大の人間並みの容姿になったり、デフォルメされたコミカルな人形になったりする。
今は後者。
しかし、どちらの姿になっていようと、いざ戦いの時には高い戦闘力を発揮する。
出掛ける際には、代表でミク人形とクラリスという名のフランス人形がマリアについてくる。
スピアとサーベルを駆使して、敵を追い詰める。
「……まあ、私も今後のなりふりは決めなきゃいけないわけよ。威吹君もそうだということよ」
「オレは……」
[同日22:30.埼玉県さいたま市中央区 ユタの家 上記メンバーにプラス威波莞爾]
「ただいまぁ」
「お帰りなさい」
莞爾が出迎える。
「明日まで魔道師が2人滞在だ」
「ははっ」
威吹の言葉に、弟子の莞爾が頷いた。
「どうぞ、寛いでください。いつもの奥の部屋、使ってくださいよ」
「ありがとう」
ユタが案内している間、莞爾は茶の用意をしていたが、
「ここ最近、魔道師の来訪頻度が多くなりましたね」
と、威吹に振った。
「うむ。魔界の情勢があまり良くないみたいだ」
「先生がお留守の間、オレの所にも正規軍入隊の勧誘が来ましたよ」
「なにっ?」
莞爾は封筒を渡した。
「大帝の治世なら、勧誘ではなく、もはや召集令状です」
「オレは事実上の徴兵逃れになるな」
「先生の場合は仕方が無いです」
莞爾はポーカーフェイスを崩さずに言った。
[10月19日09:00.同場所 ユタ、威吹、イリーナ、マリア、カンジ]
「皆、朝早くからマジメだねぇ……」
1番遅く起きてきたイリーナ。
威吹とカンジは庭で剣の稽古をしていたし、ユタは朝の勤行、マリアは持参した魔道書を読みふけっていた。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ。我が門に入らんとする汝、一切の望みを捨てよ。わが師により使役されし、レヴィアサタンよ。……」
魔道師が詠唱する文言も、どこか宗教じみているのは気のせいではないと思う。
で、今は朝食。
「お前が不真面目なだけだろうが」
威吹がそう突っ込んだ。
「宮廷魔導師になったら、もうこんなヒマな時間は無いぞ」
「そうなんだよねぇ……」
「宮廷魔導師?」
ユタはトーストにかぶり付いて首を傾げた。
「ユウタ君もアルカディア王国には行ったことにあるでしょう?要はそこの内閣官房長官とか、宮内庁長官みたいな仕事……って言えばいいのかなぁ……?」
「官房長官と宮内庁長官は、全然業務内容が違うような気がしますが……」
「王様……まあ、アルカディアは女王様だけど、そっちのご機嫌も取らなきゃいけないから大変なのよ」
「そのようで……」
カンジが同調した。
カンジは自前で魔界の機関紙を定期購読しているのだが、その1つの新聞、『アルカディア・タイムス』に、その日1日の王室の様子が掲載されている。
昨日は魔界共和党の横田理事がルーシー女王にセクハラまがいのことをして、投獄されたという。
「『魔王にセクハラすんなって何万回言わせんの!!』と、お怒りの御様子です」
「人間界にも定期的に出入りする珍しい人間の党員ね。確か人間界では、とある宗教団体の幹部をやってるみたいよ」
「そうなんですか。しかし、普通は斬首にされそうなものですが……」
「死刑制度を廃止にしようっていう動きがあるから、そうおいそれと死刑にできないのかもね」
「へえ……。しかし、やっぱり魔界の王様……魔王ってのは、どうしても男っていうイメージがあるんですが、女性の魔王様も珍しいですね」
「期間限定だという話だけどね。数百年」
「人間界では大きな歴史の区切りですよ、それ」
要は、(魔族から見れば)たったの数百年しか任期の無い代行魔王様が、何勝手に王国を作り変えてんだという反発が古参魔族から大きく噴出しているということだ。
[同日11:00.イオンモール与野 上記メンバー]
「いつぞやの事態はカンベンだぞ。ユタに迷惑掛けるなよ」
ユタと2人で行動したがるマリアに、威吹はそう言った。
今年のゴールデンウィークにおける、別のイオンモールでの出来事を言っているのだ。
「分かってる!」
マリアはキッと威吹を見据えた。
「じゃあ、行ってきます」
「お昼ご飯までには、買い物終わらせるんだよ」
「分かってます」
2人は連れ添って行ってしまった。
「さーて、アタシは別行動するかねぇ……」
「お前はお前で何か目的があるのか?」
「魔道師にも色々やることがあってねぇ……」
水晶玉を手に歩くイリーナ。
「じゃ、呼び込みよろしくー」
水晶玉を机の上に置いた。
「商売かよ!」
(この人がやれば100パー当たるな)
こういう日こそ、引きこもって小説作り&アニメ観賞に限る。
こういう時でも折伏に走り回る顕正会員、法華講員がいて、後者には頭が下がる思いである。
まあ、私は引きこもらせてもらうよ。
それはそれで唱題でもやってればいいのだろうが、そこは不良信徒ですから……。