報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「魔道師達のクリスマス」 クリスマス当日朝編

2016-12-26 22:12:40 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[12月25日07:00.天候:晴 長野県北部某所 マリアの屋敷]

 稲生:「うーむ……」

 稲生はあの後、まんじりともせず朝を迎えた。
 それでも手元のスマホが起床時刻を伝える。
 アラームがJR大宮駅9番線の発車メロディになっていることを、無意味を承知であえてお伝えしよう。

 稲生:「よく眠れなかった……」

 それでもあの後、また稲生の部屋に忍び込んでくる者はいなかった。
 サンモンドの言う通り、酒癖の悪い魔女が酒を飲むと、人間の酒乱とはまた違ったものを見せてくれるということだろう。
 概してイリーナ組の魔道師達は、酒癖が比較的良い方だったということだ。
 イリーナもマリアも、深酒するとすぐ眠ってしまうタイプだからだ。
 稲生は室内にある洗面所で顔を洗い、朝の身支度を整えて、取りあえずダイニングに向かった。
 形式上は、まだクリスマスパーティは続いていることになっている。
 果たして、こんな朝っぱらから一体全体どういうことになっているのか。
 少なくとも、開会の司会はもうやらなくて良いようだが……。

 稲生:「ん!?」

 東側から西側のダイニングに向かうのに、その間にあるエントランスホールを通ることになる。
 稲生の部屋は2階にあるので、そのエントランス吹き抜けの階段を下りることになるのだが、そこを下り切った所に彼女はいた。

 稲生:「り、リリィ!?」

 昨夜、夜這いとは明らかに言い難い寝込みを襲って来たポーリン組の新弟子、リリアンヌだった。
 だが今は覚醒状態ではなく、普段のコミュ障状態のままでいる。
 但し、野暮ったい黒いローブは羽織っているものの、とんがり帽子は被っていない。
 階段の下でリリィは膝をついて、土下座の体勢を取った。

 リリィ:「フヒッ……!さ、昨夜は……も、申し訳な……申し訳ありませんでした……!何でもしますから許して……お許しください……!」
 稲生:「リリィ!?一体、どうしたんだい!?酔いは醒めたの!?」
 マリア:「土下座の角度が足りない!床に頭つけろ!」
 稲生:「ま、マリアさん……!?」
 リリィ:「何でもしますからぁ……」
 稲生:「な、何でもって……!いきなり困るよ!」
 横田:「横田です。先日のクリスマス・イブの会における大感動は、未だ冷めやらぬものであります」
 稲生:「よ、横田理事!?いつの間に!?」
 横田:「クフフフフフフ……。稲生さん、どうでしょう?ここは1つ、彼女の気持ちを汲んで差し上げようじゃありませんか!」
 稲生:「汲んであげたいのは山々だけど、いきなり何でもするって言われても、逆に何をしてもらったらいいか分からないよ」
 横田:「クフフフフフフ……。いや、実にごもっとも。それでは、こうしてはどうでしょう?リリアンヌを無期限で稲生さん専用の肉便器の刑に処すというのは!?」
 稲生:「に、肉便器ぃっ!?」
 リリィ:「フヒッ!?」
 横田:「嗚呼……合法的にJCを肉便器……クフフフフフフフフ……大功徳ですよ、稲生君!聖ニコラウス(※)に感謝するのです!」

 ※サンタクロースの起源となったとされるキリスト教の聖人。貧しい少女に金銭を恵んでいたという逸話が起源らしい。

 稲生:「あえて日蓮大聖人じゃないの、そこは!?」
 サンモンド:「だって、日蓮さんは貧しい人に施しをしたという逸話が無いからねぇ……」
 リリィ:「に……肉便器って何ですか……?」
 稲生:「あー……えーっとねぇ……」
 横田:「クフフフフフ……。どうやら稲生さんの手にも余る様子。だが、どうかご安心を!ここは不肖、横田がお手伝い致します!さあ、リリアンヌ君!その黒いスカートをまくって、その中身を見せて頂きましょうか!さあ、懺悔の気持ちで見せなさい!」
 リリィ:「フヒッ……!こ、こう……ですか……?」

 リリィ、立ち上がってスカートを捲り上げる。

 横田:「嗚呼!あなたは既に非処女と化しているのですから、そんな純白でなくとも良いのですよ!」
 稲生:「いやいやいや!ちょっと待てい!」
 横田:「では次は、その下着を脱いで私に……はッ!?」

 横田の背後から迫るドヨドヨとした殺気。

 マリア:「また現れたか、このクソ野郎……!」
 アンナ:「こういうゲスがいるから、私は……っ!」
 魔女A:「殺す……!」
 魔女B:「パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!この不浄なる男に血の制裁を!!」

 性犯罪被害の経験のある魔女達に取り囲まれる横田。

 サンモンド:「稲生君、巻き込まれるとあれだ。ダイニングに避難しよう」
 稲生:「は、はい!」

 サンモンドと稲生は魔女達の魔法が炸裂する前に、大食堂に逃げ込んだ。

 横田:「嗚呼!待ってください!置いてかないで……アッー!!」

 大食堂のドアを閉めると同時に、エントランスホールから魔法炸裂の爆発音が響いて来た。

 稲生:「ひいいっ!」
 サンモンド:「ヒュー!こりゃ強烈だねぇ!」
 稲生:「楽しんでる場合ですか、船長!」
 サンモンド:「ま、自業自得ってところだね。バカは放置して、我々は朝食を頂くとしよう。パーティは一旦休止のようだ」
 稲生:「はあ……」

 するとさっき稲生達が入って来たドアが開いて、半泣き状態のリリィが入って来た。

 リリィ:「肉便器にでも何でもなりますからぁ……!」
 稲生:「いや、いいよ!せっかく魔道師としてリスタートすることになったんだから、体と心を大事にしようよ!と、取りあえず……しばらくの間、禁酒しよう!ね!?これなら難しくないだろう!?……いや、スカートはもう、捲らなくていいから!……上も脱がなくていいから!」

 12〜13歳程度の年齢とのことだが、そこはフランス人。
 発育は良く、これなら確かに横田のような変態理事に狙われても不思議ではない。

 サンモンド:「稲生君は禁酒で許してくれると言ってるんだ。それでいいじゃないか。もし何だったら、キミの姉弟子に、稲生君がそう言っていたと伝えてきなさい」
 リリィ:「は、はい……!」

 もう1度、エントランスホールから爆発音が響いてくる。

 サンモンド:「朝から元気な魔女さん達だ。若いっていいねぇ。はっはっはっ!」
 稲生:「そ、そういう問題ですか?」
 サンモンド:「横田理事は強制わいせつ止まりで、強姦罪やその未遂罪は1件も起こしていないのだが、魔女さん達は厳しいねぇ……」
 稲生:「まあ、強制わいせつも立派な性犯罪ですから。あ、あの……クリスマスパーティはまだ続くのでしょうか?」
 サンモンド:「もちろんだとも。ああ、でもこんな明るいうちから訪れる者は殆どいないだろうから、もし寝不足ならまた休んでくるといい。イリーナには、私から言っておくから」
 稲生:「はあ……」

 ダメ押しでもう1回爆発音がしたと思うと、既に横田の声は全く聞こえなくなっていた。
 随分と厳しい対応する魔女達であったが、どうも後で聞いてみると、この魔女達の下着が横田によって盗まれていたらしい。
 それでやっと納得した稲生だった。

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