報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「さよなら、羽田空港」

2018-02-01 23:44:11 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[1月4日10:00.天候:曇のち雪 東京都大田区 羽田空港第2ターミナル]

 ホテルをチェックアウトしたダンテ一門の魔道師達。

 稲生:「国際線ターミナルでしたら、ターミナル間無料循環バスが頻繁に走っていますので、それで行けます」

 稲生は先導するように歩きながら言った。
 実際、手にはダンテが持っていたキャリーバッグを代わりに引いている。

 ダンテ:「ふむふむ、そうかね」
 マリア:「ユウタ。またバスだと、師匠が怒るぞ?」
 ダンテ:「まあまあ。空港内の移動だけにハイヤーを使うわけにもいかんだろう。ここは1つ、稲生君にお任せしようじゃないか」
 イリーナ:「先生が仰るのでしたら……」

 羽田京急バスが運行するターミナル間無料連絡バスがある。
 但し、全てのバスが国際線ターミナルに行くわけではない。
 中には国内線ターミナルだけを回るバス(小循環)もあるので、国際線ターミナルに行きたい乗客は注意である。
 具体的には白いバスが国内線ターミナル専用、薄緑色のバスが国際線ターミナル行き(大循環)である。

 
(ターミナル間無料連絡バス。国際線ターミナルにも向かう「大循環」である。ウィキペディアより転載)

 写真で見ると分かるように、何も特別なバスで来るわけではない。
 車内は車椅子スペース確保用の跳ね上げシートが既に跳ね上げられている状態になっていて、そこは立席や荷物スペースになっているだけである。

 運転手:「お待たせ致しました。第1ターミナル経由、国際線ターミナル行きです」

 写真では男性ドライバーであるが、今現在はシフト上の例外を除いて、全て女性運転手とのこと。
 前扉、中扉共に『出入口』の表示があるが、基本的に前扉から乗って中扉から降りた方が無難である。
 空いている後ろの席に座る。

 稲生:「大師匠様が御一緒だと安心です」
 ダンテ:「ハハハハ、急にどうしたんだい?」
 稲生:「横からトラックが突っ込んでくることは無さそうですし」
 ダンテ:「そりゃそうだろう。日本の道路は平和だと信じているよ」

 座席がほぼ埋まった状態で、バスは発車した。

〔お待たせ致しました。このバスは国内線第2ターミナル、国内線第1ターミナル、国際線ターミナル間無料連絡バスでございます。次は国内線第1ターミナルに停車致します。日本航空、日本トランスオーシャン航空、スカイマーク、スターフライヤー、北九州空港行きANA共同運行便ご利用のお客様は、こちらでお降りください〕

 車内に自動放送が流れる。
 日本語放送の後で英語放送が流れるが、中国語や朝鮮語が流れることはなかった。
 この英語放送、日本人の耳には早口に聞こえるのだが、どうだろうと……。

 稲生:「マリアさん、今の英語分かりました?」
 マリア:「一応。ネイティブの発音か?」

 と、マリアも首を傾げていた。

 マリア:「アメリカ人が喋っているのかしれない」

 イギリス人にはアメリカ人の英語は早口だったり、地域によっては訛りが強かったりして聞き取りにくいことがあるという。

 稲生:「僕には聞き取れませんでした」
 マリア:「まあ、いいんじゃない。エレーナの英語に比べたらマシだから」
 稲生:「エレーナの英語、早口なんですか?」
 マリア:「ロシア訛りで何言ってるか分からない」
 イリーナ:「まあまあ、許してあげなさい。あれでもホテルでは上手く喋れてるのよ」
 ダンテ:「僕の英語よりは上手いと思うがね」

 弟子達の間で、ダンテの母国語は何だろうと話題になったことがある。
 明らかに日本語や中国語などではないことは確かだが。

[同日10:20.天候:雪 羽田空港国際線ターミナル]

 バスが長いトンネルを抜けると、小雪が纏わりついて来た。

 ダンテ:「まもなく大雪が降る」
 稲生:「ええっ?」
 ダンテ:「もちろん僕は余裕で飛行機に乗れるし、それもほぼ予定通りに離陸できるだろう。キミ達は、必ず予定のバスに乗りなさい。それが無事に帰れる保障だ。もしも乗り遅れることがあったら、キミ達は大雪に巻き込まれ、更なる滞在を余儀無くされるだろう」
 稲生:「予知ですね」
 イリーナ:「でも、さほど気にするほどのものでもなさそうですわね」
 ダンテ:「何を言ってる。キミのようなルーズな者がいるから、そこの勤勉な日本人弟子を呆れさせるのだ。今日の帰りの旅だけは、そこの弟子の言う事を聞いておいた方がいいと思うがな」

 ダンテの釘指しに、イリーナは小さくロシア語で何か返しただけだった。

〔国際線ターミナルでございます〕

 尚、国際線ターミナル発着に関しては、中国語や朝鮮語も混じる。
 因みに中国語よりも朝鮮語の方が、少し日本語に近いように聞こえる。

 稲生:「今日の天気は雪でしたか」
 ダンテ:「寒波が近づいてるよ。この辺は雪に弱いのだろう?キミ達も私を見送ったら、間違い無く予定のバスに乗るんだ。大事なことだから、2度言ったよ」
 イリーナ:「分かりましたわ」

 ダンテの乗るイギリスはロンドン行きの飛行機が出るゲートの近く。
 保安検査場の所で別れることになる。

 ダンテ:「見送りありがとう。あとはお互い、無事に帰ることを願おう」

 そしてダンテは稲生とマリアの顔を見比べる。

 ダンテ:「今年訪れる試練は大きくて辛い。今からそれを乗り越えられるよう、尚一層の精進をしなさい。いいかい?何が起きても、うろたえてはダメだよ?」
 マリア:「は、はい」
 稲生:「わ、分かりました」
 ダンテ:「それでは……」

 ダンテはそう言って、保安検査場からセキュリティエリアに入って言った。

 稲生:「先生、僕達に訪れる試練とは一体何ですか?」
 イリーナ:「さあねぇ……。私も寝耳に水だわ。よし、帰ったら占ってあげよう」
 稲生:「まだ買い物する時間はあります。お昼用に、空弁でも買って行きましょう。空弁をバスの中で食べるという不思議な話ですが」
 イリーナ:「面白い話じゃない。行こう行こう」

[同日同時刻 長野県北部山中 マリアの屋敷]

 玄関前で待ち惚けさせられる魔道師が1人。
 エレーナだった。
 大きな荷物を持ち、玄関前に座り込んで途方に暮れている。

 エレーナ:「あの忘れんぼ!東京で買った紅茶サーバー、『午前中指定』にしやがって!ちゃんと今日中に帰ってくるんだろうねぇ!」

 メイド人形達が留守を預かっていて、代わりに受け取ってくれると思うのだが、マリアが年始に思いっ切り酔っ払った為に、人形達への魔力が供給寸断されてしまっていたのだった。
 尚、羽田空港から白馬への直通バス。
 白馬八方バスターミナルの到着予定時刻は【お察しください】。

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