報恩坊の怪しい偽作家!

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“大魔道師の弟子” 「飴玉婆さんを追え」 2

2019-04-01 10:20:03 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月14日15:15.天候:曇 東京都台東区上野 JR上野駅→東京中央学園上野高校]

〔まもなく終点、上野、上野。お出口は、左側です。新幹線、山手線、京浜東北線、常磐線、上野東京ライン、地下鉄銀座線、地下鉄日比谷線と京成線はお乗り換えです。電車とホームの間が広く空いている所がありますので、足元にご注意ください。今日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました〕

 稲生とマリアを乗せた高崎線電車が上野駅の低いホームに止まるべく、高度と速度を落として走行している。
 高いホームに向かう上野東京ラインと比べ、渡り線の通過が殆ど無いのは、偏に低いホームに向かう方が本線であることを暗示している。
 但し、王子駅付近では本線である京浜東北線でさえ、ここでは支線の一部(本線ホームが低いホームで、それ以外の高いホームは全て副線ホーム)である。

〔うえの〜、上野〜。本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございました。お忘れ物の無いよう、ご注意ください〕

 低いホーム14番線に到着した電車から乗客が一斉に吐き出される。
 その中に稲生とマリアもいた。
 まだ少し寒い時期、他の乗客達がコートやダウンジャケットを羽織る中、魔道師2人はローブである。
 防寒の役割もあるのだが、魔道師としての活動を行うことも暗に示している。

〔「……14番線に到着の電車は、折り返し車内整備を行いますので、整備が終わるまでご乗車頂けません。……」〕

 中央改札口に向かう。

 稲生:「この時間なら、もう下校する生徒達がいるはずです。もしも2代目『飴玉婆さん』が『無断活動』しているのなら、そこで押さえられるはずです」
 マリア:「分かった」

 2人は駅の外に出ると、稲生の母校へと向かった。
 そこに向かうまでの間、見覚えのある制服といくつもすれ違う。
 コートまでは学校は指定していないから、銘々に好きなデザインのものを着ている。
 しかし中にはコートを着ていない生徒もいて、その生徒が着ている制服が緑色のダブルのブレザー、男子ならグレーのスラックス、女子なら同じ色柄のスカート、そして男子なら臙脂色のネクタイに女子なら同じ色柄のリボンである。
 歴史ある学校、当然ながら昔は学ランにセーラー服であっただろう。
 いつ、何をきっかけに制服のデザインが一新されたか、稲生は新聞部の取材で知っている。
 だが、それは『飴玉婆さん』とは関係無い。
 因みにマリアの服装も、ここの制服をモチーフにしたデザインの為、やや似通っている。
 稲生がAVではJKモノが好きだということを知った為、ちょうど18歳で肉体の成長がほぼ停滞していることもあり、稲生の高校の卒業アルバムを見て、この服を作った次第。

 稲生:「あそこが正門ですが……いませんね」

 時間帯が15時台ということもあってか、生徒がぞろぞろと出て来ている。

 マリア:「『飴玉婆さん』は寂しそうな生徒を見つけて、飴玉を渡しに行くんだろう?こういう賑わっている状態では現れないんじゃないかな?」
 稲生:「ですよねぇ……」

 中には1人で下校する生徒もいるが、もしも稲生が『飴玉婆さん』だとしたら、渡しに行くのは憚れる状況だ。
 こう賑わっているようではな……。

 稲生:「もしかしたら、下校のチャイムが鳴る前後かもしれませんね。僕が取材した時、2008年の事件の時もそのタイミングでしたから」
 マリア:「下校のチャイムはいつ鳴る?」
 稲生:「この学校は季節によって変動するんですけど、確か春の場合は……17時くらいだったかと。いや、春休み前は16時半だったかなぁ……」

 要は日没の時間に合わせた下校のチャイムであるらしい。

 男子生徒A:「おい、向こうに『飴玉婆さん』がいるらしいぞ!?」
 男子生徒B:「マジで!?」
 稲生:「えっ!?」
 マリア:「!」

 男子生徒達が走って行ったのは、裏門の方だった。
 もちろん稲生達も後を追った。

 マリア:「1度事件を起こしたら、2度と現れないんじゃなかったのか!?」
 稲生:「キャサリン先生はそうだったんですけどね!」

 裏通りに面した裏門に行くと、人だかりが出来ていた。

 男子生徒C:「飴玉婆さん!俺に飴玉くれ!」
 女子生徒A:「私にもちょうだい!」
 男子生徒D:「順番守れ、コラァ!!」

 その人だかりの中央にいたのは……。

 エレーナ:「はーい!『人生をバラ色に変える魔法の飴玉』、1個500円だぜ!?今なら消費税はサービスしてやるキャンペーン中だ!はい、並んだ並んだ!」

 ズコーッ!(ズッコケる稲生とマリア)

 稲生&マリア:「何やってんだ、エレーナぁっ!?」
 エレーナ:「おおっと!?やっと来たかお2人さん」
 稲生:「何やってるんだよ!?」
 エレーナ:「あぁ?どうせ『飴玉婆さん』はお前達のシマを荒らしたんだぜ?だったら私も『飴玉婆さん』のシマ荒らしてやる作戦だ」
 マリア:「オマエが金儲けしたいだけだろうが!」
 エレーナ:「材料は違うけど、合法的なモノで似た効果が得られる飴玉の作り方をキャシー先輩は編み出したんだ。モノホンの人間の目玉を使うよりかはずっと平和的だぜ」
 稲生:「じゃあ何で2代目『飴玉婆さん』は、今さら人間の目玉を繰り抜いたりしたんだ?」
 エレーナ:「キャシー先輩のレシピを知らないか、或いは単なる復讐の為かもな」
 稲生:「復讐だって?」
 エレーナ:「女の復讐は怖いぜ、稲生氏?ましてやそれが魔女ともなったら……相当エグい方法で復讐するぜ?」
 稲生:「それは知ってるけど……。新聞部の特集でもやったし……」

 稲生とマリアはその場をあとにした。
 エレーナからはこれ以上、有益な情報を得られそうになかったし、今この場に犯人が現れるとも思えなかったからだ。

 稲生:「取りあえず下校のチャイムが鳴るタイミングで、もう一回行ってみましょう」
 マリア:「そうしよう。エレーナのアホめ。後で師匠に言い付けてやる」

 だがそんなエレーナはほくそ笑んでいた。

 エレーナ:(こうやって堂々とシマ荒らししてんのに、やってきたのは稲生氏とマリアンナだけ。こりゃひょっとすると、ヤツは本当にシマ替えしたかな?それとも……)

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