報恩坊の怪しい偽作家!

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“アンドロイドマスター” 「子午東北」 

2014-08-18 12:46:03 | アンドロイドマスターシリーズ
[8月18日15:00. 東京都内某所のスタジオ 敷島孝夫、MEIKO、KAITO、巡音ルカ]

「はい、OKでーす!お疲れさまでしたー!」
 3人が出演するホラーアクションのドラマの撮影が終わった。

「3人とも、お疲れさま」
「お疲れさまです!」
 3人は火照った体を冷やす為に、氷嚢を体に当てていた。
 精密機械の塊である彼女らにとって、熱は大敵だ。
 ドラマの中にも、それがキーとなる描写もあったのを敷島は思い出す。
「今度はこのドラマの視聴率が良くなるように、情報番組のミニコーナーに出たりするからな。そこでも頼むよ?」
「はい」
「特にルカ・クリーチャーの壮絶な最期は見ものでもあるから、そういう所も……」
 倒しては何度も変形し、主人公たるMEIKO達の前に現るクリーチャー化したルカ。
 結局は倒しきれていないまま、舞台となった豪華客船が沈没。
 MEIKO達は迎えのヘリに間一髪救助されたが、ルカは沈没船と共に海の藻屑と化した(であろうという)ものだ。
「このドラマの視聴率が良ければ再度、今度は続編の映画としての話もある。正念場だぞ」
 と、そこへ、電話が掛かって来た。
「アリスか。……はい、もしもし?さっき、ドラマの撮影が終わったところだ。……いや、まだ仕事はこれからだよ。……は?」
{「だから、先遣隊と連絡が取れなくなったんだってば!」}
「そうなのか。じゃあ、警察か消防に捜索願を……」
{「いや、今度はアタシ達で行くから。エミリーを連れていく。アンタは本部にいるキールを連れてきて」}
「おい、ちょっと待てよ。連絡が取れなくなったって、そもそもどういうことなんだ?」
{「大東技研のガイノイド、ナンシーがメーデーを発信して、それからよ」}
「ああ。あの、マルチタイプをモチーフにしたヤツか。キールと同じタイプだな」
{「そう。技研のエージェントも行方不明だから、早いとこアタシ達も……」}
「いや、だから、警察に……。って、切りやがった、あの女」
「しかし、プロデューサー。キールみたいなタイプが救難信号を発したというのは、本当に異常が発生したということですよ?」
 KAITOが言った。
「うーむ……。まあ、あとはアリスに任せて、俺達は俺達の仕事をしよう。こんなの、事務職の出る幕じゃないよ」
「事務職というより営業職ね。プロデューサーなんだから」
 MEIKOがその点を突っ込んだ。
「研究職に任せて、営業職は営業職の仕事をしよう」
 敷島はあえて言い直した。
 それほどまでに行きたくないらしい。
「エミリーが行けば無敵だよ。ウィリーの秘密アジトだか研究所だか知らんが、ハコごとぶっ壊せば済む話だ。エミリーならそれができる」
「そうね」
 と、MEIKO。しかしKAITOは、
「そ、そうかなぁ……」
 その時、敷島のタブレットでアラームが鳴った。
「ん、注意報?……ルカか。おい、ルカ、どうした?」
「い、いえ……。何でもありません」
「冷却システムに異常とあるぞ?」
「冷却が追い付いていないだけです」
「ちょっと、無理しないでよ?まだ仕事があるんだから」
 MEIKOは後輩ボカロに言った。
「え、ええ……」
「とにかく、今日はもう仕事終わりだから本部へ戻ろう。整備はルカを先にしてもらうようにするよ」
「そうしてください」

[同日17:00.日本アンドロイド研究開発財団本部 敷島孝夫、平賀奈津子]

「……というわけで、プロデュース業務は私が引き継ぎますので、敷島さんは明日、1番の列車に乗って向かってください。総務で新幹線のキップは用意しているので」
 奈津子は敷島に言った。
「もう本部命令のレベルなんですか!ついアリスの独断専行かと思いきや……」
「何か、ちょっとおかしいんです。確かにウィリーの隠し施設ですから、色々と罠なども仕掛けているということは想定していましたが、まさか完全に消息を絶つということまでは想定外でしたから」
「ナンシーとやらがメーデーを発信したそうで?」
「そうなんです。ナンシーが送信した映像があるので、見てみますか?」
「是非!」
 敷島は研究室のパソコンで、ナンシーがメーデーと一緒に送信してきた映像を見た。
 ガイノイドであるナンシーにも、自分の目で撮影した動画を記録し、送信することができる。
「何だこれ!?」
 敷島はそこで衝撃映像……というか、グロ画像と言った方が良いものを見ることになる。
「これがロボット!?何かの生物クリーチャーじゃ?」
「ええ。私もそう思うんですけどねぇ……」
「これ、警察というか……自衛隊に出動してもらった方がいいレベルじゃ?」
「なので、防衛省からも注目されているエミリーの出番なんですよ」
「……まあ、私はプロデューサー業務の仕事が忙しいから……」
「ですから、それを私が引き継ぐと言ってるんです」
「何で私が行かなきゃならないんです?奈津子先生にプロデュース業務を引き継いでもらうなんてことは……」
「いえ、それは敷島さんがプロデューサーだからですよ」
「どういう意味ですか?」
「残念ですか、ルカはウィルスに感染してしまいました。新種のウィルスです。このままですと、先日のメイドロボット達みたいに暴走する恐れがあります」
「ええーっ!?」
「彼女達も暴走する直前、急激な発熱があったようです。“自我”が無くなる予兆がそれなんでしょうね」
「何てこった!」
「プロデューサーとして、ワクチンを現場から取ってきてください。ワクチンがあるはずです。何故なら、ウィルスだけでは商品になりませんから」
「その、ルカは?」
「電源を落としてます。ですが、油断はできません。勝手に電源が入る恐れがあります。メイドロボット達の中には、稼働していない者まで勝手に起動したそうですから。しかしボーカロイドの場合、電池パックまで外すとメモリーのバックアップが出来なくなるので、それも不可能な状態です」
「マジですか……」
 敷島は肩を落とした。
「キールが到着次第、モード変更などを行いますので」
「はあ……」
 

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